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イタリア ラティナ原子力発電所廃炉現場視察

イタリアの原子力背景

昨年、原発の再導入に関する法律の廃止に関わる国民投票が行われ、圧倒的な94%の賛成という結果が出たイタリア(投票率54.79%)。チェルノブイリの事故後、1987年に国民投票によってそれまで稼働していた5拠点の原発の閉鎖を決定して以来、稼働中の原発はありません。一方、一次エネルギー輸入依存は87%(2008年)と高く(日本は83%)、電力そのものも13%をフランスやスイス等からの輸入に頼っています。そうした状況を変えようと、当時のベルルスコーニ首相が様々画策をしてきましたが、福島第一原発のインパクトもあり、原発とは無縁の国づくりを進めることになります。そのイタリアですが、1980年代に廃炉を決めた炉の措置はまだまだ続いているとのことで、ローマに出向いた機会に視察へ向かいました。

ラティナ原子力発電所

1964年に営業運転を開始した、イタリア最初の原子力発電所がラティナ原発です。形式はマグノックス型ガス炉でイギリスの技術で作られたもので、日本の東海原子力発電所(廃炉作業中)と同型です。運転は当時の国営電力会社によって行われましたが、現在は政府が100%株式を所有するSOGIN社(原子力施設管理会社)によって廃炉措置が行われています。1987年から始まる廃炉措置ですが、マグノックス型ガス炉の炉心部分を構成する炭素部分の廃炉技術が確立しておらず、今の計画では2050年には更地に戻す計画となっています。実に、完全な廃炉まで60年以上!、それもまだ技術が確立していないわけで、相当な難事業です。そもそも、軽水炉以前に世界で導入されたマグノックス型ガス炉は、廃炉をすることをどうやら全く考えていなかった設計で、結果として50年以上も廃炉に要する事態に陥ってしまっているのです。今後、廃炉の費用は今のイタリア国民の電気代から払い続けられることになります。2050年まで、約7億ユーロの予算が積算されているとのことですが、場合によっては、もっと膨れ上がるかもしれません。廃炉は、それだけオオゴトだと、改めて実感しました。

使用済み核燃料と最終処分場はどうする?

私が一番関心を持っていたひとつが、使用済み核燃料の対処と、最終処分場についてです。まず、使用済み核燃料は、もし原発を今後使わないなら、再処理をしてプルトニウムや使えるウランを取り出しても、無用の長物です。この発電所の場合は、イギリスの技術で作られたガス炉と言うこともあり、使用済み核燃料はすべてイギリスのセラフィールドに運ばれたそうです。そして再処理されているとのことですが、ここからが驚きでしたが、ごみの部分(ガラス固化された部分)はいつか返送される契約ですが、取り出したプルトニウムやウランなどの使える部分は、イギリスに渡す契約になっているそうです。つまり、日本が仮に原発を今すぐ止めた場合、ガラス固化廃棄物の受け入れと共に課題となるのが、取り出したプルトニウムやウランの取扱いですが、イタリアの場合は、金銭のやり取り内容は詳細にわかりませんが、とにかくイギリスがこの部分は使うという選択をしているということです。私が主張するように、イギリスはプルトニウムを有価物として受け入れる余地がある、という証左です。
もうひとつの課題は最終処分場です。これは、ガラス固化体だけでなく、廃炉プロセスで出てくる様々な放射性廃棄物の処分場も含めて課題となっていますが、いくつかの土地が取り上げられはしたものの、イタリア国内では目処が立っていないのが正直なところのようです。後述するフェッランテ上院議員は、「イタリアの問題だけでなく、EU全体で考えるべき課題だ」と言っていましたが、果たしてそのようにうまくいくか、難しい問題です。

難題こそ協力すべき

視察の過程で、何度も出てきた名前が我が国の東海原子力発電所です。上述の通り、世界でそう多くない同型のガス炉で、廃炉作業もそれぞれ同様の悩みを共有し、意見交換を進めているようです。ただ、除染後のクリアランスレベルやそのプロセスの違いが、廃炉作業もそれぞれの国で独自に進めている面があるようにも感じられました。一方で、効率的な除染作業や廃炉作業は、多少のクリアランスレベルの違いがあっても、共有できる考え方はあると思います。事業者単位でなく、国レベルでの協力を、もっと進めるべきと認識を強めました。

フェッランテ上院議員(民主党)との会談

今回のローマ訪問時に、イタリア民主党のエネルギー政策に詳しい、フェッランテ上院議員との懇談の機会を得ました。同議員は、イタリアでは左派に属すこともあり原子力に対しては「過去のエネルギー」と位置付け、自然エネルギーの重要性を訴えています。私からは、脱原発を進めるために、多少のCO2削減目標が後退することは理解してほしい、ただ、CO2削減に後ろ向きになるわけではないことを説明し、理解を得ました。フェッランテ議員からも、日本のスマートグリッド等節電技術への期待は高く、「CO2削減と脱原発とを実現する新たなテクノロジーに大いに挑戦してほしい。我々も日本の路線を支持したい。」と言ってもらえました。政治的スタンスもあるでしょうが、なるほど、日本のエネルギー政策に米仏英が懸念、という記事が大きく踊りますが、イタリアも、ドイツも、前向きに捉えている国があることも忘れてはいけません。
イタリアのように、世界的には原子力から卒業した、と思われている国も、今なお、大きな荷物を背負っています。そして、この荷物は、各国ごとの違いはあるものの、本質的には全く同じ性質の、極めて厄介なものです。原子力のバックエンド部門に関し、政治がもっと率先し、国際協力体制を築く重要性を、改めて認識させられた一連の視察となりました。

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