記事

毎年1000人ペースで増える「医療的ケア児」、保育園入園のハードルに苦悩する親たち

1/2

 息を吸ったり、ごはんを食べたりするときに助けが必要な子どもたちがいる。人工呼吸器や胃ろうを使って暮らす「医療的ケア児」だ。全国に約2万人いて、その数は毎年1000人ペースで増え続けている。しかし、保育園に入るのは簡単なことではない。

 今春から滋賀県内の保育園に通うため準備を進めてきた親子や、医療的ケア児を受け入れる保育園を通じて、「共生社会」を考える。(朝日放送テレビ制作 テレメンタリー『保育園に行きたいな-医療的ケア児と共に生きる-』より)

■「新生児医療が進歩し、助けられなかったお子さんが助かるようになってきた」


 きょうだいと元気に遊ぶ東明衣夏(ひがし・めいか)ちゃん(3)。一見、普通に過ごしているようだが、睡眠時や何かに集中したり、逆にボーッとしていたりすると呼吸を忘れてしまう先天性の難病「中枢性低換気症候群」を抱えている。

「明らかに動かなくなったなっていうときや、自分で揺れているときは危険やなって。ボーッとしてたら、“めいちゃん、息して!”みたいな。目が離せなくて怖いです」(母・佳織さん)。

 気管を切開し、人工呼吸器を使って暮らす明衣夏ちゃん。痰が詰まると生命に関わるため、1日に何度も痰の吸引をしなければならない。主治医の熊田知浩さんによる月に2度の往診では、空気を通す管「カニューレ」の交換などを行っている。


 明衣夏ちゃんのような医療的ケア児が増えている理由について、熊田医師はこう説明する。「新生児医療が進歩した結果、それまでは助けられなかったお子さんたちも助かるようになってきた。そうした中で、気管切開し、呼吸器をつけないといけないとか、ごはんが食べられず注入栄養でないといけないというお子さんが増えてきたんだと思います」。

 明衣夏ちゃんの状態が安定してきたのを機に、母・佳織さんは仕事に復帰したいと思うようになった。ただ、明衣夏ちゃんが保育園に入るのは簡単なことではない。医療的ケア児のが就園するには、園に看護師がいることなどの条件をクリアしなければならないからだ。

 申請の結果が届くはずの12月を過ぎ、佳織さんの不安は募る。

■新型コロナウイルス感染症の不安も


 年が明けた2月、佳織さんの元に「契約決定通知書」が届いた。受け入れてくれたのは、一家が暮らす近江八幡市で唯一、医療的ケア児が通える公立保育園だった。

 少しずつ、登園に向けた準備も始まった。2月上旬、熊田医師立ち会いのもと、気管に入れたカニューレを何分くらいなら外していられるのかを確認した。「抜けてままほったらかしにしていると、気管切開の穴がどんどん縮んでいくんです。園で抜けてしまい、すぐに入らないというときのために、何分くらいなら大丈夫なのかを確認しておけば。いざ救急車呼ばなきゃいけないというときにも落ち着いて対応ができる」(熊田医師)。

 20分後、無事にカニューレを入れ直すことができ、慌てずに対応する時間がありそうだとわかった。佳織さんも「大丈夫」と安心した様子を見せた。


 足が外股になり、長く歩くと疲れやすい明衣夏ちゃんのために、足の変形を防ぐ靴の中敷きも作ることにした。県立小児保健医療センターの二見徹病院長の診断を受けて、足形を取った。完成した中敷きを足に当て、歩く様子を見た技師は「まっすぐになってますね。お母さん良いやん」と声をかけていた。

 3月上旬には、明衣夏ちゃんを担当してきた訪問看護師たちが、保育園にケアのポイントなどを説明する場が設けられていた。

 見た目では息苦しさがわからないため、「集中して動きが止まる」「ゆらゆら体を揺らす」などの“危険サイン”の見極め方や、「酸素のモニターをつけて数値を確認する」「呼吸を促す」といった対処法が伝えられた。佳織さんは「一緒に生活してもらったら、そんなに大変じゃないんやということがわかってもらえると思うんですけど…」と説明した。


 入園直前のこの時期になって、新たな不安も生まれつつあった。新型コロナウイルス感染症だ。「園で流行りだしたらどうしようって。子どもの情報が一切ないので、そこがすごく怖くて」(佳織さん)。

 しかしほどなくして、佳織さんから写真が届いた。そこには、無事に入園式に参加した明衣夏ちゃんの様子が収められていた。緊急事態宣言が出るまで、元気に通ったという。

■「あなた一人のために看護師は使えない」


 「障害者手帳を持っている人は申し込めないんです、って言われて、泣いて帰ったの覚えてます」(宮本さやかさん)。

 滋賀県守山市に住む双子のきょうだい、宮本花凛(かりん)ちゃんと統凛(とうり)くん(4)。出産予定日より3カ月早く生まれた2人。統凛くんに大きな障害は残らなかったが、花凛ちゃんは脳や肺に出血があったため、生後3日目に手術を受け、1歳で気管を切開。人工呼吸器を使いながら暮らしている。


 産婦人科の看護師として働いていた母・さやかさんは、経済的な理由もあり、2人が1歳になる頃には保育園に預け、職場に復帰しようと考えていた。ところが、自宅や職場がある自治体の保育園に落ち続け、託児所のある病院に転職しようと県内各地の病院に問い合わせてみるも、受け入れてもらえなかったという。

「保育園に看護師がいないから受け入れられないって。ひどいところになると、“あなた一人のために看護師は使えないですし、それだったら働いてもらわなくてもいい”と。医療的ケアがあるから入れない。イコール差別じゃないかと、市役所にも何度か言いにいきました」。

あわせて読みたい

「障害者」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    立民議員の官僚叩きに批判が殺到

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  2. 2

    上野千鶴子氏 任命拒否に危機感

    女性自身

  3. 3

    机叩き…橋下氏語る菅首相の会食

    ABEMA TIMES

  4. 4

    悪質な収集家に裁判官怒りの一言

    阿曽山大噴火

  5. 5

    ピアノめぐり上皇后様に感銘の声

    BLOGOS しらべる部

  6. 6

    国に従わず支援求める朝鮮学校

    赤池 まさあき

  7. 7

    「LGBTで滅びる」削除要請に非難

    女性自身

  8. 8

    移動しなくても良い新しい社会

    ヒロ

  9. 9

    日当7万円 公務員と比較したのか

    橋下徹

  10. 10

    高級車雨ざらし カーシェア破産

    SmartFLASH

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。