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政権支持率は27%か42%か? 新聞の世論調査の謎に迫る

なぜ数字が違うのか

産経の世論調査で不正が発生

 相次ぐスキャンダルで安倍政権の基盤が大きく揺らいでいるにもかかわらず、新聞やテレビの報道には、どこか釈然としないものがある。「内閣支持率」の数字は、調査を実施するメディアによって大きく異なり、“そんな数字になるのか?”と首を傾げたくなるものもあるからだ。折しも、調査を巡る大規模な不正も発覚。安倍政権がよすがとしてきた「世論調査の支持率」とは、一体何なのか。

【写真】産経の世論調査で不正が発生

◆架空の回答を入力

 この数か月に安倍政権の不祥事がどれだけ続いたか。1月の桜を見る会疑惑とカジノ汚職に始まり、新型コロナの感染が拡大していた3月末には、国民に外出自粛を呼びかける中でファーストレディの昭恵夫人が“私的な桜を見る会”を開いていたことが発覚。5月は検察庁法改正に国民の批判が沸騰し、渦中の黒川弘務・東京高検検事長は賭け麻雀問題で辞任した。河井克行・前法相夫妻の選挙買収事件の捜査も進展。6月には河井夫妻逮捕に加えて、コロナ対策の「持続化給付金」の中抜き問題が噴出した。

 国民に政治不信を深めている中、世論はどう反応するのか――そんな折に明るみに出たのが、世論調査の「不正」「データ捏造」だった。

 産経新聞とフジテレビの系列局が加盟するFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査で、調査業務を孫請けした会社の社員が、調査対象に電話をかけずに自分で架空の回答を入力していたことが発覚したのだ。

 産経新聞とフジは問題の会社に業務を委託していた昨年5月から今年5月の期間に合計14回の世論調査を実施。合計約2500件のサンプル(回答)に不正があったとして、14回分すべての世論調査の記事や関連放送を削除し、取り消すと発表した。その中には、昨年7月の参院選の投票行動に影響を与えたと考えられる調査も含まれている。

 政治意識・世論研究など計量政治学が専門の井田正道・明治大学教授は問題の背景をこう分析する。

「アルバイト調査員が担当ノルマをこなせず、自分で回答書に書いてしまう。そうした捏造は“メイキング”と呼ばれ、特に面接で調査を行なっていた頃はその防止が重要な課題とされていました。新聞社は不正を防ぐために以前は調査員の募集から教育まで自社で行なっていた。

 現在は外部の調査会社への委託が主流になっているから、新聞社は管理をしっかりやるしかないが、今回の事件は管理が杜撰すぎた。産経とフジは委託先が調査業務を孫請けに出していたことさえ知らなかったという。世論調査の信頼性を失墜させる行為です。委託の委託で調査単価が下がり、孫請けは人件費を節約するため不正に走ったという事情も考えられます」

 本誌・週刊ポストが朝日、読売、毎日の3紙に取材すると、いずれも「調査を業務委託しているが、産経・フジテレビとは別の会社。調査の時は当社の社員が立ち会い、不正防止の体制をとっている」という内容の回答だった。

 産経・フジもチェック体制は設けていたのだろうが、1年も捏造を見抜けなかった。

「今回の不正はサンプルの一部でした。メイキングの多くは、露見するのを防ぐため、他のサンプルの傾向に合わせてデータを作ります。それによって発覚しにくくなる」(前出・井田氏)

 産経調査は不正が始まる昨年5月より前から朝日、毎日より内閣支持率が高い傾向が知られていたが、捏造後の数字も同じ傾向だった。産経新聞の“論調”に沿う内容だったから、疑問を持たなかったのではないのか。

◆「重ね聞き」の影響は?

 新聞の世論調査の最大の疑問は、調査はランダムに行なわれているはずなのに、結果は新聞ごとに傾向がはっきり分かれることだ。

 各紙の内閣支持率を比べると、安倍首相が改憲をテーマに独占インタビュー(2017年5月)に応じ国会答弁で「熟読してほしい」とまで“推奨”した読売は比較的高く、安倍政権に批判的な朝日、毎日は低い傾向がある。

 たとえば、コロナの感染拡大前の今年2月調査の安倍内閣の支持率は読売が47%に対して朝日は39%(毎日は調査なし)。不祥事の連続で政権批判が最も高まった5月は読売は42%(紙面掲載は11日)とそれほど下がっていないが、朝日は29%(同25日)、毎日は27%(同24日)まで急落した(調査日はそれぞれ異なる)。

 各紙の世論調査は読者アンケートとは違い、調査対象は無作為に選ばれる。朝日の調査で支持率が高く、読売は低いという新聞の論調とは逆の調査結果が出る月があってもおかしくないはずだが、傾向はほぼ一定だ。

 朝日は今年4月、「内閣支持率、なぜ新聞社で違う?」という記事で、「重ね聞き」という調査手法の違いを理由にあげている。

〈「安倍内閣を支持しますか。支持しませんか」。この問いにあいまいな答えをした人を、朝日新聞では「その他・答えない」という選択肢に振り分けます。読売新聞では最初の質問であいまいな答えをすると「どちらかといえば、支持しますか。支持しませんか」などといった具合にもう一度尋ねます。(中略)重ね聞きをすると、「その他、答えない」が減る分、支持も不支持も増えます〉(4月10日付夕刊)

 ちなみに毎日の聞き方は朝日に、日経の聞き方は読売に似ていると書く。だが、重ね聞きで支持不支持がよりクリアに出るのであれば、政府への批判が高まった時期には、読売など重ね聞き派の調査の方が、より支持が減って不支持に傾くのではないかという疑問が浮かぶ。

 各紙の支持率の差には、調査手法にからむもっと本質的な原因がある。新聞各紙は世論調査にあたって、「〇〇新聞の調査です」と最初に社名を名乗る。「紙面で報道するための調査であり、社名を名乗るのが原則」という考えがあるからだ。

 しかし、たとえば調査対象がその新聞が嫌いな人であれば「〇〇新聞の調査」といわれて調査を断わるケースが考えられる。社名を名乗ることで調査に応じるか、否かの調査対象の選別が起きている可能性がある。前出の井田氏が語る。

「どの新聞社の調査なのかが最初にわかれば、購読層の方が調査に協力的な結果が出ると考えられる。世論調査のランダム性、中立性から考えると、社名がわかるのは望ましいとはいえないでしょう」

 新聞社が社名を名乗って調査することで、調査対象の選別につながり、新聞の世論調査結果が各紙の論調に合わせたようなバイアスがかかってしまうとする指摘だ。

※週刊ポスト2020年7月10・17日号

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