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孤立死と少子化は私たちが望んだもの?「しがらみ」失い孤立する社会の生きづらさ

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「行政や福祉や医療に任せておけばいい」は本当か?

孤立死や少子化に対し、社会の側も対応しようとはしている。さまざまな法律がつくられ、行政や福祉、ときには医療がコミットすることで問題を解決しようとしている。

行政や福祉や医療が困っている一人ひとりを救済する、その営み自体は肯定されるべきものだ。

だが、行政や福祉や医療が一人ひとりを救済し、それもまた世間の常識になっていくなかで、「行政や福祉や医療に任せておけば良い(=私は救わなくても構わない)」という感覚もまた、常識の一部になっているのではないだろうか。

行政や福祉や医療による救済は、さきに挙げた常識とも相性が良い。なぜなら、行政や福祉や医療が困っている人を救済してくれるなら、個人としての私たちは困っている人がいても関わり合いを持たなくて済むし、付き合う相手を選ぶ自由やプライバシーを手放さなくて済むからだ。

個人が自由を得ようとした結果、救済は行政や福祉に委ねられようとしている Pixabay

行政や福祉や医療が困っている人をちゃんと救済してくれる限り、付き合いやすい相手とだけ付き合う自由をむねとする常識と、そのような社会は守られる。実際には孤立する人・子育てに困難を感じている人・メンタルヘルスの悩みを抱えている人が増え続けていたとしても、行政や福祉や医療が救済する仕組みが整っていく限り、その社会はそれで正しいということになり、正当化されてしまう。

もちろん実際には行政や福祉や医療にも行き届かない部分はあるし、行政や福祉や医療が踏み込めない側面はいずれにせよ残る。たとえば、孤立した人に行政や福祉や医療ができることはたくさんあるが、友達や恋人を、つまり人間関係を授けることはできない。子育てやメンタルヘルスの悩みについても限界はある。本来、行政や福祉や医療だけでは救いきれない側面があるはずなのに、"行政や福祉や医療に任せておけば良い"という感覚が常識になっているうちに、私たちは何か大切なものを見落としているか、見て見ぬふりをして頬かむりしているのではないだろうか。

この、昭和までの不自由が克服されると同時に新しい生きづらさが浮かび上がってきた社会はこれからどうあるべきなのか?

どうすれば新しい生きづらさが克服できるのか?


健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて(熊代亨) - Amazon.co.jp

こうした問題を考察するべく、私は『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由について』という本を書いた。が、およそ一冊の本で結論に至るようなイージーな問題ではない。私よりも広い視野を持った人や深い知識を持った人が、この私の問題意識を受け継ぎ、もっと完成度の高い「社会の診断」を成し遂げてくれることを期待している。もちろん私も一層勉め、令和の社会について知見を広げていきたい。

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