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7月1日から有料化のレジ袋は環境保護の厄介者か? エコバッグにはコロナ感染の懸念も

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ところで、アジアの海洋ごみは、10の河川から流出しているという興味深い調査結果がある。

ドイツ・ライプチヒのクリスチャン・シュミット博士らのチームは、世界の河川からの流出状況を推計したところ、プラごみの海への流出経路で、もっとも大きかったのは中国の長江で、2番目はインダス川、次いで中国の黄河、海河、ナイル川、メグナ川の順だったという。10位のメコン川までの10河川で、年間に河川から海洋に流れ込む廃棄プラスチックの88〜95%を占めるという。

一方、海洋に流出したプラごみの発生国は、1位中国、2位インドネシア、3位フィリピン、4位ベトナム、5位スリランカ。アジアの国々が名を連ねている。日本近海がホットスポット(汚染集中区域)と言われる所以だ。

日本が議長国を務めたG20大阪サミット(2019年)でも、海洋プラごみ問題は大きな注目を集めた。世界の途上国を含む主要国が、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有して、2050年までにプラごみゼロを目指すことになった。

安倍首相は、「強いリーダーシップを発揮して、適切な廃棄物管理と海洋ごみの回収などに、あらゆる手段を尽くしていく」と語ったが、そのビジョンとレジ袋有料義務化という施策が、どうも脳内でピンと繋がらないのはどうしたものだろうか。

レジ袋は環境問題解決の人身御供か

いまから約10年前、容リ法の改正を契機に、やはりスーパーやコンビニのレジ袋を削減しようという動きがあったのを覚えている人も多いだろう。つまり、レジ袋業界にとって今回の有料義務化は第二波の騒動ということになるが、その推移を、当時レジ袋問題を取材・執筆したという週刊誌記者が語る。

「国からレジ袋は常に標的にされてきました。プラスチックのなかで、もっとも身近なものだからです。第一波の際には有料義務化には至らなかったため、客離れを懸念した小売店側から無料化の流れが出ていまに至ります。無料から、いままた有料へ。レジ袋を巡って小売店は何度も揺れ動いてきた。ただし、一度〝悪者〟にされたレジ袋の汚名はずっと消えません。業界はその波をかぶり、安い輸入物の増加とも相まって、いま国産レジ袋は全体の2割程度。もちろん出荷数はジリ貧です」

昨年秋の合同審議会に招聘された業界団体の組合代表は、次のように意見を述べた。

「レジ袋が有料義務化となれば、レジ袋に携わる国産メーカーに非常に大きなマイナスのインパクトが発生すると考えています。約10年前の容器包装リサイクル法の改正では、レジ袋の有料義務化は見送られたものの、各市町村単位での自主規制は実施されました。一部の県では、需要の9割近くが消失したケースも発生し、国産メーカーは多大な打撃を受けました。これによって従来比で3分の1まで減少し、今日に至っています。当業界の組合員数も廃業・倒産により、その当時と比較して3分の2に減少しました」

「売上が減り、資金繰りに窮して倒産するところもあれば、これまでの設備投資が無駄になり、大変な負債を抱え込むところも出てくる。様々なケースが発生すると思われます。環境は大事ですが、それを強引に推し進めることによって、それを生業にしている企業、しかもこれまでも環境配慮を続けてきた企業が路頭に迷い、見殺しになってもいいのか。このようなポイントについても、政府には目を向けて頂く必要があると考えます」(合同審議会議事録より引用)



議事録には、大学教授などの委員が発言する、「(レジ袋は)分かりやすい」という言葉が繰り返し綴られている。レジ袋有料化は消費者のライフスタイル変革を促すための分かりやすいアイコンとして、標的になったのか。

組合事務局に聞くと、今回のレジ袋有料義務化の決定で、いまのところは会員企業の倒産・廃業といった情報はないとしながらも、「レジ袋は、(はかどらない環境問題解決の)人身御供にされている」との声が上がっているという。

外食チェーンは「銭函を用意しろ」

ところで、有料化の対象外となるレジ袋もある。有料化するレジ袋とは一線を画して法令に基づく有料化の対象にはなっていないので、店舗では無料で提供できる。プラスチックフィルムの厚さが0.05ミリ以上のもの、海洋生分解性プラスチック、バイオマス素材の配合率が25%以上のものと3種類ある。

そのうち、海洋生分解性プラスチックとバイオマス配合のレジ袋は、総称・バイオプラスチックと呼ばれる。例えば、トウモロコシなど植物由来の素材のことで、日本バイオプラスチック協会などの認証マークが付いている。これが、「地球環境保護のためによいとされる袋」だ。

それが有料化の対象外となったことで、7月以降も無料提供することに決めたのが、北海道で展開するコンビニ・チェーンのセイコーマートや、吉野家、ケンタッキーフライドチキンなどの外食チェーン。7月以降もバイオマス配合のレジ袋を無料提供するというニュースが駆け巡った。

その決断には、コロナ時代のサービスにうまく照準を合わせた、業界の知恵があった。前出の週刊誌記者は事情を語る。

「外食チェーンにとってレジ袋有料義務化は、スーパーやコンビニよりも厳しい事情がありました。有料のレジ袋には10%の消費税がかかります。ところが外食チェーンの券売機には1円を投入する仕様はない。ガイドラインでは〝銭函を用意するなど工夫を〟などとありますが、正直、現実味はありませんね。あまりに急な制度変更で整備が間に合わないこともありますが、新型コロナ感染防止の衛生面を考えれば、無料で出せるバイオマス配合レジ袋は〝渡りに船〟。外食チェーンが足並みを揃えたのは見事でした」

ところで、バイオマス・レジ袋は、本当に地球環境にやさしいのだろうか? 環境省がまとめた「プラスチックを取り巻く国内外の状況」に、非常に気になる項目がある。

「バイオプラスチックに対する国際的な論点」として、バイオプラスチックは、トウモロコシやサトウキビを原料にする食品用途と競合し、温室効果ガスを排出するLCA(ライフサイクルアセスメント)が問題であると。また、生分解性プラスチックは、海洋環境中では生分解されるまで長時間かかり、長期にわたってマイクロプラスチック化してしまうと示されている。

分解されやすく、リサイクルには不向きなため、リサイクルルートで他のプラスチック素材と混在するとリサイクルの阻害要因となるという。「国際的な論点」になる訳である。

最後の1点には、さらに驚かされた。モラルハザードを引き起こし、ポイ捨てを助長する恐れがあるとのことだ。「バイオ=地球にやさしい」というイメージには、倫理崩壊という落とし穴があるということか。

未だ発展途上のバイオプラスチックを、日本は2030 年までに約200万トン導入すると決めている。政府はやはりその顔を立てたのではないか。

エコバッグ「袋詰め」にレジから悲鳴

Twitterで、「#レジ袋有料化」だけでなく、「#袋詰め」のハッシュタグを付けると、多くのコンビニ・スタッフの叫びが聞こえてくるようだ。

「レジ袋の有料化でエコバッグが増えるだろうけど、触りたくねえ。雑菌いっぱいだよ。その手でレジ打ち、ありえない」「誰が袋詰めするんだろう。このご時世、客のエコバッグ触るの抵抗ないか?」
「コンビニには、サッカー台(袋詰めのための台)はないし、混んでる時間はレジがもたついて大変だよ。どうすんだろ」
「スーパーでエコバッグを使う人が増えたら、サッカー台で薄いポリ袋をたくさん使う人が増えそう。ごみ削減に全然ならない」

そんななか、異彩を放っているtweetがあった。発信者は「全国スーパーマーケット協会」。

“「おはようございます。レジ袋有料化の義務化は昨年、政府が決めたことですので、制度自体に対するご意見は、店舗の従業員ではなく、相談窓口にお願いします。消費者向け0570-080-180です」”

経済産業省の相談窓口の電話番号を明記している。さっそく連絡して、「実際にそうした事例があったか」を伺うと、非常にリアルな現場の声を頂戴した。

「いちばんに守りたいのは、現場の従業員の皆さんです。有料化の義務を課せられた小売事業者の側も、苦心して対応にあたっているのです。コロナの影響でできた「新しい生活様式」では、石油燃料を撒き散らして配送する通販が推奨されています。通販ではレジ袋を使用しても、それは有料化の対象外。リアル店舗の事業者には細かい金銭のやりとりや在庫管理、報告義務などが課せられ、ネット販売では事実上、野放し。小売店側もいろんなことに戸惑っているのが実情です」

確かに、新しい制度改革に立ち会うには、戸惑いと混乱はつきものだが、それにしても、レジ袋だけでなく、レジスタッフも決して悪くない。「地球にやさしい」行動変革を目指す前に、「レジスタッフにやさしい」消費者にならなくてはと肝に銘じたい。

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