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“アンチWHO”の首脳も…テドロス事務局長の言動に問題? コロナ対策をめぐるWHO批判は妥当なのか? 元WHO担当・豊田真由子氏に聞く


「世界は危険な新局面にある」。24日、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は、新型コロナウイルスの感染者が1000万人に達する見通しという衝撃的な数字を発表した。感染拡大をなぜ止められないのか。日々対応に追われる中、WHOの決断に対しては疑問の声もある。

・【映像】危険な新局面"WHOのコロナ対策は失敗だった!? 元厚生労働省キャリア官僚・豊田真由子と考える

 今年1月に中国での感染が確認された当初、WHOは「人から人への感染はない。または限定的」との認識を示し、状況が悪化し、世界がパンデミックを意識し始めた2月の時点でもとテドロス事務局長は「パンデミックに至っていない」とコメントしていた。

 そして多くの国が入国制限に乗り出した3月、テドロス事務局長は「新型コロナウイルスをパンデミックと位置付けることにした」と発表、判断の遅さを批判された。

 WHOの役割とはそもそもどんなものなのだろうか。

 また、これまでの対応は妥当だったのか。26日の『ABEMA Prime』では、厚生労働省やWHOで医療政策に携わった坂元晴香・東京大学特任研究員と、厚生労働官僚時代にはハーバード大学で公衆衛生学を学び、2009年の新型インフルエンザのパンデミックの際はWHO担当の外交官として奔走した豊田真由子・元衆議院議員に話を聞いた。

■WHOの役割とはどんなものなのか?


「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的に1948年に設立されたWHO。予算総額は56億2360万ドル(2018~19年)、職員数は7000人(全世界で)に上る。健康に関する研究課題・政策課題の決定や提唱をし、規範・基準を設定、加盟国へ技術的支援を行っている。ただ、それらの規範や基準に法的拘束力はない。

 また、新型コロナウイルスのワクチンの研究開発という役割もあり、有望な研究に資金提供をし、完成後は各国と調整して配布する。その枠組みはすでにできあがっているが、枠外企業のワクチンに関してWHOは関与ができないという。

 坂元氏は「今回のコロナ対策に限らず、どこまで守るかはあくまでも各国の裁量だが、いわゆる途上国と呼ばれる地域にとってはWHOの指針が役立っていると思うし、WHOとしても特に重要視している」と説明。

 豊田氏も「WHOは勝手に何かを言っている組織だという受け止め方をしている人もいると思うが、それは誤解だ。日本も含む194の加盟国と2つの準加盟国という、世界のほとんどの国が総会、あるいは様々な委員会に参加してルールを決めている。

すべての国と連携できる唯一のグローバルな機関として、各国が状況を報告しているし、総会で決定した勧告や決議には法的拘束力こそないが、少なくとも法治国家においてはルールとして聞くことが前提になっている」と話す。

 また、2009年の新型インフルエンザ流行時、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の外交官として、WHOや各国代表とともに最前線で対処。

「3台の携帯電話を駆使して24時間フル対応」した経験から、豊田氏は「新型インフルエンザは1年後くらいには普通のインフルエンザになったので、WHOは“製薬会社と結託して、お金儲けのために大騒ぎしたんじゃないか”という言いがかりをつけられた。

検証委員会が調べた結果、そんなことはなかったが、予算や人員を減らされてしまった。私は当時、WHOの職員や外交団が不眠不休で対処しようとしているのを見ていたし、私の知る限り“これで金儲けをしてやろう”というような人は1人もいなかった」と証言した。

■“アンチWHO”の首脳も…テドロス事務局長の言動に問題?


 最近ではブラジルのボルソナロ大統領のように、“アンチWHO”とも言える動きも目立つ。また、トランプ大統領は「WHOは中国の操り人形だ」と主張、米中に新たな確執を生む要因ともなった。

 さらに「ウイルスの脅威を過小評価し、世界的な感染拡大を招いた」とテドロス氏の辞任を求めたネット署名は100万人を超える賛同者を得ている。

 坂元氏は「日本でもそうだと思うが、現場の医療者が思っていることと、全体の方向性が一致しないとことがある。ブラジルについてもそうだと思う。残念だなと思うのは、テドロスさんと中国との関係性やトランプの大統領の発言など、WHOが政治の議論の道具に使われてしまっていることだ。テドロスさん個人とWHOとは分けて考えた方がいい」と話す。

 豊田氏も「ブラジルについて言えば、大統領が特殊なだけで、州知事たちも反論している。現場の人たちは1人も死なせたくはないのに、それが実現できないのがジレンマだ」とした上で、テドロス事務局長の問題について次のように指摘した。

「国際機関のトップは公正中立であるということを示さなければならないし、政治的な発言はしてはいけない。さらに言えば、加盟国が自国を守る対策を取っていることへの批判も口にすべきではない。例えば前任者のマーガレット・チャンさんというは中国の方だが、“中国寄り”と見られてしまうような発言は絶対にしなかった。

テドロスさんはそういう最低限の守るべきルールを守っていないと思う。WHOの職員や現地の外交団の友人に聞いてみると、周りは心配して“そんなこと言わないでね”と言っているというが、テドロスさんはすごく頑固だという。

また、国際機関のトップは厳正な選挙で選ばれるが、やはり外交の問題が出てくる。実際欧米の国はイギリスの方を応援し、中国やアフリカ諸国はテドロスさんを応援した。その意味では、“紐が付いている”ことでの動きにくさはあると思う」。

 また、台湾は新型コロナウイルスへの対応に成功したとされている。その知見をWHOから除外されているために活かせないのは損失だとの指摘もある。

 坂元氏は「台湾とWHOの公的なチャネルはないが、台湾がよくやっているということは皆が分かっているので、実務者レベルでヒアリングをするなどして、対策を取り入れるといったことは当然やっている」と説明。

 豊田氏は「私がWHOで仕事をしていた2009年の段階では中国政府とうまくやれる政府だったのでオブザーバー加盟ということで総会にも入れていたが、今の蔡英文総統に代わってから対立するようになり、外されてしまった。日本やアメリカなどは入れるべきだと言ってきたし、政治や経済ではなく命の問題だ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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