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戦いの後に残るもの。

どの会社も今年の2月くらいから、イレギュラーにイレギュラーを重ね、知恵を絞って対応してきたであろう「株主総会2020」

その間、「新型コロナウイルス感染症」をめぐる世の中のムードも激変する中、自社の役員から監査法人までいろんなものに振り回され、寝つきの悪い日々を過ごした方も多かったと思うが、ようやくこの「3月期決算会社の集中ウィーク」を経て峠を越えた感がある。

言霊になると嫌なので、極力呟かないようにはしていたのだが、ここ数日は、東京圏を中心に感染判明者が激増する状況でもあったから、週の後半に総会本番を控えていた会社の担当者の方々は本当に気が気ではなかったはずだが、少なくとも今は、何とか紙一重のところで逃げ切れたという総括で良いのではないかと思っている*1

常に「コロナ」を意識した事前の打ち合わせの中で、良い意味でも悪い意味でも、平時では決して触れることができなかったような経営トップ、担当役員の「ステークホルダー」への向き合い方、考え方の一端に触れ、いろいろと考えさせられるような思いをした方も多かったことだろう。

そして、考えに考え抜いた運営や議事進行のシナリオ、想定問答等がピタリとはまって、上機嫌の議長に「来年もこれで行こうよ」と軽口を叩かれた担当者もいれば、慰労の言葉をかけられるより先に怒声を浴びせられた方ももしかしたらいらっしゃるのかもしれない。

だが、運営でどれだけドタバタしようが、株主様からお小言をいただこうが、会社法上の「株主総会の役割」を前提に考えるなら、

「会社が提案した議案がすべて首尾よく可決され(もしあれば株主提案の議案が粛々と否決され)れば、それで100点満点」

なのだから、今年の総会にかかわった全ての方々が、明日からまた新しい一歩を踏み出されることを願うばかりである*2

ちなみに、今年は、”コロナ下の緊急時”という状況にありながら、株主提案、それも、会社の日常的な業務執行に大きなインパクトを与えかねない提案(特に役員選任をめぐる提案)がやたら目立った年でもあった。

おそらく昨年のLIXILグループの”CEO返り咲き”や*3、アスクルをめぐる親会社の無情な議決権行使の事例*4等に刺激を受けた関係者が多かったことも影響しているのだろうが、そうでなくても何かと運営に気を遣う状況で、「なんも今年に限ってこんなことやらなくても・・」と思いながら泣く泣く複雑なシナリオ作りに追われた担当者も決して少なくはなかったことだろう。

本ブログで背景となった事件の調査報告書を取り上げた天馬㈱からは、本日の19時20分に以下のようなリリースが・・・。

この「第72回定時株主総会開催結果に関するお知らせ」に記された「第2号議案 取締役(監査等委員である取締役を除く。)8名選任の件」の結果は、候補者番号1,2,4の3名が「否決」。

その一方で株主が提案した「第5号議案取締役(監査等委員である取締役を除く。)8名選任の件」も「否決」とされており、最終的な取締役会の構成は、

・非監査等委員 5名(業務執行者2名、非業務執行者1名、社外・独立役員2名)
・監査等委員 4名(社外・独立役員4名)

ということで、全取締役9名中業務執行者はわずか2名で、社外・独立役員が3分の2を占める、という実に先進的なボードが構成されることとなった。

否決された会社提案の候補者は、監査等委員会が「取締役候補として不適切」という意見を述べており*5、2大議決権行使助言会社も「反対」を推奨していた候補者だから*6、事務方としても、事前の議決権行使の状況等を踏まえ、”想定外”の事態が起きることは十分予測はしていたことだろう。

だが、本来なら、総会での議長役や答弁対応の大役を終えた役員たちの安堵感に包まれ、定型的な進行で”シャンシャン”で終わるはずの「総会直後の取締役会」をめぐり、株主側提案の候補者への賛否の行方も含め*7、様々な不確定要素の下、様々なパターンで準備をしなければいけなかった事務方ご担当者の心労はいかばかりだっただろうか・・・。

会社から、総会開催結果と同じタイミングで出された「代表取締役の異動に関するお知らせ」には、改選された業務執行者のお一人を新任代表取締役社長とすることが淡々と記されているのだが(しかも、総会の場で選任が「否決」された「常務執行役員総務部長」のお名前で・・・)*8、表面的な”派手さ”の裏で流された汗と涙への思いは常に忘れずにいたいな、と思うところである*9

*1:むしろ、いろいろ考慮して来週以降に時期をずらしたり、来月に日程を延期した会社が、これから4月、5月総会の会社と同じような苦しみを味合わないといけないのだとしたら、あまりに無情だな・・・と思ったりもするのだが、今はこの週末に少しでも状況が落ち着いてくれることを願っている。

*2:そしてこれまでとは大きく異なる立場で、様々な角度からかかわらせていただく機会を得られた、という点で、”2020年の株主総会”は、自分の中でも一つのマイルストーンになるような気がしている。

*3:返り咲く勇気。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~参照。

*4:サプライズなき資本の論理~それでも明日は来る。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~

*5:招集通知15~16頁参照、https://www.tenmacorp.co.jp/ir/pdf/20200612_01.pdf

*6:株主還元「100%超」の奇策も、天馬の委任状争奪戦は佳境に:日経ビジネス電子版の記事など参照。

*7:議決権行使助言会社が、一部の株主提案候補者に「賛成」推奨を行っていた、という状況もあった。

*8:天馬[7958]:代表取締役の異動に関するお知らせ 2020年6月26日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞

*9:他にも、現経営陣側が株主の提案を「撃退」した会社もあれば、総会を待たずして”白旗”を上げ、株主提案を受け入れた会社もあるのだが、いずれにしても派手に見えるドラマの裏では、概して地道な、だが想像を絶するような大量の汗が流されていたりするのである・・・。

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