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日本の人身売買対策めぐる評価を一段階引き下げ アメリカが指摘する「外国人技能実習問題」から見える課題とは

アメリカ国務省は25日、世界188カ国・地域の人身売買対策を評価した年次報告書を公表した。

報告書では、日本について「外国人技能実習制度に絡む強制労働」などが行われ、その対応が不十分だったなどと指摘。3年ぶりに4段階評価の最高ランクから一段階引き下げられた。

人身売買とは? 2019年、日本では44人の被害者を認知

「国際組織犯罪防止条約人身取引議定書」に定められた、人身売買(人身取引)とは「搾取の目的で、暴力や金銭授受等の手段を用いて、対象者を獲得するなどの行為をすること」。

性的搾取や強制労働、臓器売買などの行為を指し、被害者が18歳未満の児童の場合は、暴力などの手段が用いられなかった場合でも人身売買に該当する。

警察庁によると、2019年に警察が認知した被害者数は44人で、容疑者の検挙は57件39人。

興行の在留資格で来日させたフィリピン人女性6人のパスポートを取り上げ、ホステスとして働かせ搾取していたケース(出入国管理法違反容疑)や、「借金の返済が足りなかったら殺されるかもしれない」などとして女性に売春を強要したケース(売春防止法違反容疑)などだ。

被害者のうち34人が日本国籍、10人が外国籍。過去5年間の被害者の96.6%が女性で、検挙人数は横ばいで推移している。

外国人技能実習生の強制労働についての告発が続いているにもかかわわらず…

NHKなどの国内メディアによると、今回の報告書では日本について

「技能実習を悪用した強制労働の指摘があるのに、裁判では十分な証拠が求められ、強制労働であると認められにくい」

「来日前に高額な手数料を取られるのを防ぐための政府の取り組みが不十分」

「強制労働について告発が続いているにもかかわらず、人身売買の立件が1件もなかった」

などの指摘があったという。

また、人身売買の捜査や摘発が減り処罰が軽いことや、女子高生らによる接客ビジネスの問題について言及。データの公表が不十分とした。

人身売買問題を担当するリッチモンド大使は会見で「技能実習生については長年、懸念しており、改善の余地がある」と述べたという。

「技能実習生の問題だけではない」 日本の外国人労働の現場から指摘の声

BLOGOS編集部

報告書内で指摘された「技能実習」とは外国人が日本に入国する際に必要な「在留資格」のひとつだ。

1993年に創設された外国人技能実習制度に基づく資格で、本来の目的は日本の技術・知識を発展途上国に伝え経済発展に貢献することとされる。

しかし、技能実習生は事実上の単純労働者として、日本の産業現場などを支えてきたのが現実だ。

こうした現状を背景に2019年、出入国管理及び難民認定法(入管法)が改正され、就労目的の新たな在留資格「特定技能」が創設された。

技能実習生は、来日するために借金を背負うケースが多く途中で帰国できないという事情や、在留資格の更新のために企業側の協力が必要であること、法律上転職ができないことなどを理由に、弱い立場に置かれることも多い。

18年に全国の労働局や労働基準監督署(労基署)が監督指導を行った外国人技能実習生在籍の事業場は7,334ヶ所で、うち5,160事業所で労働基準関係法令違反が認められている。

外国人労働サポートセンターを運営するNPO法人POSSEの岩橋誠さんは「苦しい立場にあっても転職する権利がなく、企業側の言いなりにならざるを得ない技能実習生は奴隷状態に置かれていると言える」とコメント。

一方、今回の報告書の内容に関して「技能実習生だけでなく、日本の外国人労働者全体の問題として捉えなければならない」と指摘する。

岩橋さんによると3〜5月の間、POSSEのもとにはさまざまな在留資格で働く外国人労働者から「コロナを理由に一方的に解雇された」「休業を命じられたが休業手当が支払われていない」などの相談が342件寄せられた。

また、パスポートや通帳などを企業に取り上げられ、事実上、外国人労働者の意思では帰国や転職などができず、強制的に働かされているという相談も10件以上あった。現在、日本では技能実習生をのぞいて、企業のパスポート取り上げを違法とする法律はない。

岩橋さんは「技能実習生をはじめとした弱い立場に置かれやすい日本の外国人労働者の権利を守る法律が必要。また、生活に困窮していたり職場で不当な目にあっている外国人を支援する取り組みを広げないと問題は解決しない」と訴えた。

外国人労働者だけの問題ではなく、大きな視点で捉えるべき

外国人労働に詳しい杉田昌平弁護士は「借金を背負って来日する実習生がいることなど、債務による強制労働という側面は大いにある」とする一方、「一定規模の企業で“技能実習生だけ”を強制労働させているケースはほとんどない。外国人が不当な目にあっている現場では日本人も同様に不当な目にあっている」とする。

杉田弁護士は「外国人労働者や技能実習制度の問題として一括りにするとかえって問題点がぼやけてしまう」と指摘し、「日本人の非正規や派遣労働者など弱い立場の人たちが酷使されていることも含めて、技能実習制度の問題だけでなく日本の労働環境全体の問題として考えるべきだ」と話す。

来日前に高額な手数料を取られる仕組みを日本側から変えるのは難しい

報告書で指摘された「来日前に高額な手数料を取られる」という事態が起きる背景には、送り出し機関(各国の法律に基づき設置された、日本の監理団体に取り次ぐ機関)の存在がある。

一部の送り出し機関では、技能実習候補者に対して契約や内定決定時に、80万円ほどの手数料を求めることがある。また、送り出し機関は各国の都心部にあることが多く、実習希望者は地方にいることが多いため、都心部に出てくる際に仲介者を頼むことも多い。

例えば2人の仲介者を挟んだとすると、紹介料10万円×2を支払わなければならない。そうやって日本に来る前に、計100万円ほどの借金を背負うことになるのだ。

しかし、この送り出し機関は各国の法律に基づき運営されている。杉田弁護士は「日本側から海外の法律、機関に働きかけるのは困難」と指摘する。

その上で、「受け入れる日本企業側が虚偽の申告や借金を背負わせるような送り出し機関を使用しないという制度づくりをしていくことはできる」とした。

日本の人身売買対策を批判した今回のアメリカ国務省の年次報告書。外国人技能実習生の問題にとどまらず、今後、外国人を含む日本の労働環境を見直す契機にするべきではないだろうか。

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