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「政党法」など

 石破 茂 です。
 都道府県を越える移動制限が緩和され、我々も選挙区や各地に出向けるようになりました。前の週末も県連会長としての党務や、首長選挙のために地元・鳥取と大阪へ参りましたが、現政権に対する批判というよりも、これに対して異を唱えない自民党国会議員への批判が強いことを如実に感じさせられました。

 自民党内統治の手法として「資金」「役職」「選挙応援(公認や支援体制)」の3つを用いるのは今も昔も同じですが、そこには自ずと一定の抑制が効いていたように思います。

 その箍(たが)が外れてしまったのでしょうか。「他候補の10倍もの資金支援」「政府や党要人による手厚い選挙支援」「理由の不分明な役職起用」…昨年の参議院広島選挙区はこれらの典型と言えます。報道の通りだとすれば、空前の買収が行われたということで、その原資は党からの資金ではないと説明されているようですが、ではその資金はどのように使われたのでしょうか。「もう党費は払いたくない」との党員の声を聞くと申し訳ない気持ちになります。

 広島では河井氏から資金を受け取った市長や町長が辞任に追い込まれていますが、当該自治体の混乱を引き起こした責任は誰がどうとるのか。規模といい、内容といい、前代未聞の選挙戦を展開してまで実現したかったことは何であったのか。

 小選挙区制導入を柱とする政治改革でしたが、構想当時から、選挙制度だけ変えればその趣旨が実現するとは全く思っておりませんでした。地方に権限や財源を移譲する「地方分権」と、政党の在り方を定める「政党法」の制定なくして政治改革の趣旨は貫徹されない、と平成5年の衆議院政治改革特別委員会で細川総理や山花政治改革担当大臣を相手に議論したものですが、その後も選挙制度にのみ焦点が当たり、この二つは議論から切り離されてしまった感がありました。

 政党は国民の税金から政党助成金を受け取る権利を有しながら、国民に対してその使途を細部まで示すこともなく、組織としての意思決定の過程を透明性をもって開示することも義務付けられていません。「権利を享受しながら義務を負わない主体」などというものは法的に存在しえないのであり、政党法の制定は絶対に必要だと今でも思っています。

 自民党の平成24年憲法改正草案は、第4章「国会」第64条の2にとして「国は政党が議会制民主主義において不可欠な存在であることに鑑み、その活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない」「政党の政治活動の自由は保障する」「政党に関する事項は法律で定める」としています。

 広島選挙区の事案は、単なるスキャンダルで終わらせることなく、この「政党法」の制定に繋げるべきだと思っております。

 昨25日木曜日、自民党憲法改正推進本部において、国民に理解を求める方法についての紹介があったのですが、徹頭徹尾「憲法に自衛隊を明記しよう」という事項にのみに絞られたプレゼンテーションに終始し、暗然たる気持ちになりました。自然災害やコロナ禍で活躍する自衛隊の映像を流した後に、憲法学者の6割が自衛隊を違憲だと言っていることを紹介し、「こんな自衛隊を憲法に明記しなくていいのでしょうか?」と締めるパターンで、数分もののこのような何種類ものビデオを拡散せよ、とのことでした。

 いつの間に、未だに正式な党議決定もされていない「自民党改憲4項目」、さらにその中の「9条に自衛隊明記」が最優先事項となったのか。何度でも繰り返しますが、「9条に自衛隊を明記するだけで他は何も変わらない」とする改憲案には、私はほとんど意義を見出すことが出来ません。「必要最小限度の組織と行動」だから「戦力」ではなく、「戦力」ではないから「軍隊」ではない、という、国際的にも通用せず国民にも理解不能な論理から脱却すること。そして自衛隊を「国の独立を守る組織」「司法・立法・行政の厳格な統制に服する」「その行動は国際法ならびに確立した国際慣習による」とすること。そうでなければ9条を改正する意味は極めて乏しく、自衛隊の活動の充実や、日本人の安全保障観の健全な醸成にも、何ら資することはないと考えます。この考え方を「原理原則に拘る」と評する向きもあるようですが、国家の基本である安全保障の原理原則に拘りを持たないことの方が私には理解できません。

 そして、同じく「自民党改憲4項目」の一つである「合区の解消」は一体何処へ行ってしまったのでしょうか。これは正式に決定した昨年の参議院選挙の公約でもあります。「人口が減少する限られた県の問題」とでも思っているのかもしれませんが、次期参院選は2年後であり、時限性のある課題に目途をつけることも重要なはずです。

 イージス・アショアについては前回も記しましたが、秋田・山口の予定地への配備について「ブースターを演習地内に確実に落下させることが難しく、その回避のためには多額の費用と時間を要し、迎撃範囲も大幅に縮小する」というのが停止の理由だとすれば、洋上(人口島や無人島など)に配備すれば済むのではないでしょうか。

 抑止力の向上は、米国の拡大抑止体制(核の傘)の信頼性、シェルター整備などの国民保護体制の充実と併せて論ぜられるべきものであり、いきなり「日本も策源地攻撃能力、つまり『矛』を持つべきだ」との議論に直結するものではありません。「大きな一石を投じる」ことを重視するあまり、論理的整合性を捨象してしまうことは、決して良い結果には繋がりません。

 中公文庫より猪瀬直樹氏の名著「昭和16年夏の敗戦」が新版として発売され、巻末には10年前の猪瀬氏と私との対談も収録されています。単行本は1983年、文庫は1986年と2010年、新書(「空気と戦争」)は2007年に発刊されており、既にお読みの方も多いと思いますが、この機会にまた一人でも多くの方にお読みいただきたいと思っております。

 今日の都心は梅雨の晴れ間ものぞいています。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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