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AV女優、引退後どうしてる?夏目ミュウさんインタビュー

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「性」を扱う職業は、周囲から偏見の目で見られることがある。

筆者自身も前職はアダルトグッズを扱う企業で働いていたのだが、当時「次に雇ってくれる会社なんてないよ」「その後どうするの?」等一切相談していないのにもかかわらず、周囲から勝手によく心配された。

「大切な仕事をしている」という自負はあるものの、性産業に対する周囲からの視線はずっと鋭く、そして痛い。

Christopher Jolly on Unsplash

そんな数ある「性」を扱うコンテンツの中でも、「AV女優」という仕事は、素顔と身体をさらけ出す仕事だ。

人気が出れば出るほどAV女優をやっていたという過去を隠すのが難しく、次の職場で身バレをして退職を余儀なくされるケースもあるという。

では、AV女優を選んだ彼女たちが引退後に選択肢を広げ、次のステップに進むためにはどのようにキャリア形成をしていくべきなのか。

今回は元AV女優で現在は池袋で性病クリニックを運営している夏目ミュウさんにAV女優としてのキャリア、そしてその先のセカンドキャリアについて話を聞いた。

夏目ミュウさん(撮影:工藤まおり)

「頑張った成果がそのままお金になり次につながる」

夏目さんがAV女優になった理由は、親戚が残した借金返済のためだという。夏目さんはまだ小学生だった当時のことを振り返りこう話す。

「家族が親戚の連帯保証人になってしまい、そこからガラっと人生が変わりましたね。いきなり家が差し押さえられて赤札を貼られたこともありますし、家族で夜逃げも経験しました。」

「給食費のたった1000円も払えなくて、家中の小銭を集めてコンビニで両替してもらう、みたいなこともしてましたし、本当にそれくらい大変でした。」

相当な額の借金を返済していく両親を近くで見ながら過ごしていたため、一時は大学進学を迷った時期もあった。しかし、両親が後押ししてくれたこともあり、夏目さんは奨学金を借り、難関の国立大へ進学した。

大学卒業後は、当時最も給料が高かった消費者金融会社に就職。しかし、体調を崩してしまった。

「配属された部署の中では、先輩を抜いて2位という成績を収めることができたんですが、それ以降、先輩や同僚など周りの目を気にし始めてしまい自分自身にプレッシャーをかけ続けていたんですよね。」

「結局、身体が限界を感じたのか突然声も出なくなり、咳も止まらなくなってしまったんです。完全にストレスで身体がおかしくなってしまいました。」

約1年で退職を迫られ、辞職することになった。

仕事を失ってしまったが、実家には膨大な借金がある。自分も返済に協力できるようにならなければならない。

そう思い、夏目さんは飲み屋街でよく声をかけてくれたスカウトのもとへ向かい「事務所、紹介してくれませんか?」と伝え、AV業界の門を叩いた。

夏目ミュウさん(撮影:工藤まおり)

トップのAV女優は一握り。ギャラに10倍の差も

「撮影がある日は現場に行き、撮影がない日は風俗店に行き、働いたお金を受け取ったらそのまま銀行に預けに行っていました。毎日稼ぎに出て、お金をひたすら貯め続けていましたね。」

頑張った成果がそのままお金になり、次回の仕事につながっていくー。

そんなAV女優の仕事のシステムは夏目さんの性にも合っていたという。

遅刻やNGがなく真面目に仕事をしていた夏目さんは、受けきれないほどオファーを貰い、またたくまに人気女優に登り詰めた。

27歳の年には「いただいたオファーを断りたくない」と、自らプロダクション「株式会社オフィスミュウ」を設立し、芸能事務所の社長業と女優業をこなす日々を過ごした。

借金をようやく返し終わったのは、夏目さんが30歳になる年だった。

今までお金のために働いてきたからか、その目標を達成した瞬間に自分は何をすればいいのかが一気に見えなくなったという。

「返済が終わった瞬間、目の前が真っ白になったんです。『私、今まで何のために働いていたんだろう』って。」

「今まで借金のことばかりで、自分のやりたいことを考えていませんでした。今更何をやればいいのか…。パソコンも使えないし、Excelで表も作れない。会社員として何もスキルがない状態なんです。その恐怖って他の女優さんも感じていると思います。」

AV女優は他の仕事に比べ段違いで稼げる仕事だが、引退後も稼ぎ続けられる女優は一握り。有名女優とそうでない女優のギャラの違いも大きいという。

「海外でAV女優をゲームに出すというオファーがあるんですが、企画単体女優と専属女優で有名になっている女優のギャラは大違いなんです。10倍以上はありますね。

Aランク、Bランクというランク表みたいなものがあるんですけど、Aランクは大体15人くらいでトップのAV女優になるのって難しいんだなと思います。さらにその中でも2-3人が引退していることもあります」

Becca Schultz on Unsplash

トップ女優の数はごくわずか。

その中でも、40歳50歳になっても絶えず仕事がくるというケースはどれくらいあるのだろうか。限りなく少ないということは想像できる。

女優業をこなす傍ら、少しずつ新人プロデュース業や芸能事務所の社長としての仕事にシフトしていった夏目さん。

社長業が中心になってきてからは、「やりたいこと」が次々に浮かんできたという。

2003年に仕事で海外に行った際に検査を受けた性病クリニックが実はAV女優が運営しているということを思い出し、「私も借金を返済させてくれたAV業界に恩返しをしたい」と思い2018年5月に、東京豊島区に「池袋駅前ライフクリニック」を設立した。

セルフプロデュース能力がある女優が売れる

借金返済から約10年。今では、クリニックや芸能事務所の経営に社長として携わるだけではなく、昨年にはキッチンカーの事業も立ち上げるなどいくつものビジネスを手がける実業家となった夏目さんだが、「AV女優として売れていくにはどのように仕事をしていくべきか」についてたずねると、業界で活躍する女優の特徴として「セルフプロデュースができていて、事務所に『おんぶにだっこ』状態ではない人」だという。

「SNS運用や、トーク内容、ファンとのやりとりなど、すべてを事務所がカバーすることはできません。そのため、自分から自然に出てくるもので、いかに興味をもってもらえるかが重要だと思っています。」

「つまり、他者から求められているものを自然にキャッチして自分の中でセルフプロデュースをして発信や努力ができる人ですね。なにごとも『待っているだけ』では駄目だと思うんです。」

夏目ミュウさん(撮影:工藤まおり)

「例えば、オフ会をやるのであれば、時間や場所、お土産の中身や帰りのお見送りの方法等、売れている方はちゃんと意見が言える方が多いと思っています。」

「AVの仕事が入らない場合でも、自分はなぜ求められていないのか、どういう風に変えればオファーをもらえるのかを研究して自分を変えていくことも大切だと思います。」

有名トップAV女優の中には、その時の現場に合わせてメイクを研究して変えていく人もいる。そのように相手から求められているものを理解し、その中で自分がどう対応していくかを頭で考えて行動できる人が売れる人だという。

考えてみれば、AV業界に限らず、どこの業界においても重宝されるのはそういう人材だ。

特に「女性の年齢」を重視している業界では、与えられた仕事を淡々とこなしていくだけでは「若さ」という最大の武器を失った時、仕事が減ってきてしまう。

Getty Images

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