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「疑いようのない誠実さ」と中央銀行総裁の資格

 「求むイングランド銀行総裁」などという求人広告を見つけたら、貴方はどう思うだろうか?

 言っときますけど、求められているのはイングランド銀行の守衛さんの仕事でもなければ、一般の職員の仕事でもないのです。そうではなく、あのイングランド銀行の総裁のポストがひょっとしたら貴方のものになるかもしれないのです。

 「そうは言っても資格があるんでしょ?」

 「それに、その職に就くには英国にいかなくちゃいけないし‥」

 「イギリスは、美味しい食べ物が少ないと言うじゃない」

 まあ、好きなことを言ってください。いずれにしても、こうして大臣のポスト以上の重要性を持つとも思われる中央銀行の総裁が公募で選ばれるなんて、世の中変わったものなのです。

 「どうして公募するの?」

 「適当な人材が見つからないの?」

 まあ、適当な人材がいないということはないのでしょうが、しかし、人選のプロセスが透明でないと、なかなか英国民が納得しないということではないのでしょうか?

 「どうして?」

 LIBOR事件というのがあったでしょ?

 英国の金融界、そしてイングランドの幹部まで巻き込んだLIBOR偽装事件が発覚し、今や国民のイングランド銀行に対する信頼が地に落ち、このため信用回復にやっきになっているからなのでしょう。

 つまり、イングランド銀行総裁を選ぶプロセスを少しでも透明にして、国民がまた信頼をするイングランド銀行にしたいということなのだと思うのです。

 「でも、どうしてそんなことが分かるの?」

 だって、イングランド銀行総裁の職に応募しようとする者は、次のような資格を保有していなければ
ならないと、はっきり記載されているからなのです。

 a person of undisputed integrity and standing

 日本語になおせば、「疑いのないような誠実さ」になるのだとか。

 「でもね、バンカーのイメージと誠実さは結び付かないような気がするけど‥」

 「それに、日本銀行の総裁や米国のFRB議長だって、固いとか聡明だとかのイメージはあっても誠実だというイメージはないような‥」

 私もそう思うのです。特に、日本の場合には、昔から「解散の時期と公定歩合の変更については嘘が許される」なんて言い方もあるからです。

 もちろん、だからと言って中央銀行の総裁の職に就く者が嘘ばっかりついていいという理屈には
ならないのですが‥つまり、人並みの誠実さはなければいけないと思うのですが、疑いのないような
誠実さを兼ね備えた人材を金融界のなかから探し出すなんて、砂漠で落ちた針を探し出すより難しいのではないでしょうか?

 「だから、公募するのかな?」

 では、仮に、公募の結果、本当に「疑いのないような誠実さ」を兼ね備えた人が見つかったとして、その人をイングランド銀行の総裁に選出するのでしょうか?

 私は、それは大変疑わしいような気がするのです。

 何故ならば、イングランド銀行は、単に英国の経済の番人としての仕事を果たすだけではなく、英国の金融界の発展にも気を使う必要があるからです。さらに言えば、5年ほど前にも起きた取り付け騒ぎのようなことが二度と起きないように‥つまり、金融危機の再発防止もイングランド銀行の大切な任務になる訳ですが、そうした仕事を無難にこなそうとすれば、誠実さというよりも時には嘘を平気でつくことも求められることがあるからです。

 もう一度言います。私は個人的には、決して中央銀行が嘘をつくことはよくないと思うのですが、過去の出来事を振り返ってみると、人々が大混乱に陥ることを回避するために真実を隠ぺいするようなことが頻繁に起きているのです。

 中央銀行のスタッフが民間銀行の経営内容を検査した結果、大変に拙い経営状況になっているとして‥つまり放置していたら遠からず破綻のリスクが高いと分かっていたとして、そのとき、中央銀行の総裁は、国内に経営が危うくなっている銀行が存在するなんて言うか、と。

 だから「疑いのないような誠実さ」が本当に求められるということはないのです。しかし、見た目が
「疑いのないような誠実さ」を兼ね備えていることは必要で、見た目というか、イメージを重視すると言っているのと等しいと思うのです。

 中央銀行の仕事に精通していて、そして、誠実そうなイメージの人を採用しますよと言っているのでしょう。

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