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デモ参加者は感染リスクを軽視しているわけではない。感染より恐ろしいことがあると伝えたい人たちに必要な工夫

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世界のあちこちで大規模な抗議デモが繰り広げられている。「コロナ禍の真っただ中にやらなくても」と批判の声もある一方で、脅かされる民主主義、まん延する人種差別、警察による残忍行為に対して闘うことは、基本的人権を守ることでもある。


2020年5月30日のデモにて、交通量の多い交差点にたむろするオクラホマシティの抗議者たち
Photo by Nathan Poppe, The Curbside Chronicle


新型コロナウイルス感染症は世界中で46万6527名の命を奪った(6月22日時点/ジョン・ホプキンス大学発表 )。社会的距離の確保が強化され、人混みや大規模集会を避けることがすっかり人々の生活に浸透している。

ところがここに来て、世界の大都市で数百人・数千人規模のデモが繰り広げられ、コロナ対策ガイドラインがおざなりにされる事態が起きている。香港やアルゼンチン、レバノン、ブラジル、イスラエル、ウクライナ、インド、そして直近では米国や英国でも。抗議者たちは “感染”と“逮捕”の危険にさらされながらも、改革を求めて結集している。

抗議行動拡大で米大統領は地下に避難ーそしてコロナ死者数は1日600人に

新型コロナ感染症の死者数が11万人超えとなっている米国でも、31の州で暴動が起こり、デモ参加者らは医療専門家や州政府、地方当局からの指示に抗い、夜間外出禁止令が出される事態となった。 最初の抗議デモは、ミネアポリス市の白人警官が武器を所持していない黒人男性ジョージ・フロイドを死亡させる残忍な場面をとらえた動画が Facebook 上で急速に拡散されたことに端を発する。

シカゴ各地の宗教指導者らが集い、ジョージ・フロイドの顔写真と名前が描かれたバナーを手に、ブロンズビルのマーチン・ルーサー・キング・ドライブまで行進した
Credit: Kathleen Hinkel


5月29日にはホワイトハウスの目の前で抗議活動が繰り広げられ、シークレットサービス(大統領警護隊)がトランプ大統領を地下壕に一時避難させる事態となった。

6月1日、『ニューヨーク・タイムズ』誌は「新型コロナウイルスによる危機と、警察による黒人の殺害。今、2つの悪疫が同時に米国を破壊している」と報じた。同誌によると、デモが最高潮に達した5月31日(日)に、新型コロナによる1日の死亡者数は600人以上に達した。

規模を増す抗議活動について、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は定例会見の中で「私たちがあらゆる感染対策を行ってきたのに、多数の感染者が出てもおかしくない大規模集会の模様が連日TVで報道されている。今一度立ち止まって自身に問いかけてください、“私たちは何をしたいのか”と」とコメントした。

感染リスクを顧みないほどみなぎる闘志

デモ参加者たちの大胆な行動を見ていると、疑問が生まれる。何千もの人々が外出禁止令に違反してデモに参加すれば、これまでの感染対策が ”水の泡” になるのではないか。人権や人種間の平等を求める闘志は、感染症への脅威を打ち消すほどに強いものなのかと。

警察車両やガソリンスタンド、郵便局、銀行、電器店などに火を放ったデモ参加者たちの中には、一部マスクを着用している者もいたが、大半は無防備だった。アトランタ市のケイシャ・ランス・ボトムズ市長は言った。「昨夜のデモ参加者はPCR検査を受けるべきです。米国のパンデミックは収束していませんし、特に死亡率が高いのは黒人です」。

2020年5月31日、オクラホマ州議会議事堂を取り囲む抗議者たち
Photo by Nathan Poppe, The Curbside Chronicle


英国マンチェスター大学の研究が先週発表された。それによると、新型コロナウイルスの危険に晒されようとも、大規模デモに参加しようという人々の「意欲は削がれない」ことが分かった。

同研究の主執筆者オルガ・オヌチ博士(同大学政治学准教授)は言う。「米国、イスラエル、香港、ブラジルの様子を見ていると、多くの人々は感染の危機に晒されようともデモを続けていくという印象を受けますし、いずれのエビデンスも、抗議活動の“縮小”ではなく“拡大”を示唆しています」

デモ参加者たちは自身の命を危険にさらしてでも人権や人種間の平等を求めているのか、との問いに博士はこう回答した。「私は疫学者ではありませんが、特に新型コロナウイルスの感染力を考えると、大規模集会での感染リスクは非常に高いと理解しています。ですから、抗議運動への参加は “命を危険にさらすことになる”と言えるでしょう」

6月4日、ナッシュビルのダウンタウンでの大規模デモ行進。
主催したのは、10代の若者6人から成るグループ「Teens for Equality」。By Alvine / The Contributor


「ただ、これは私の仮説ですが、外出制限を課せられていたことで人々の堪忍袋の緒が切れたのではないでしょうか。そんな背景もあって、あからさまに基本的権利が侵害されているのを目にして行動を起こしやすくなっているのではと」

「私たちの研究結果から示唆されるのは、抗議活動がこのまま継続しても“驚くべきではない” ということです。そして、デモに参加するのは感染をものともしない若者たちばかりと決め込んではなりません。何よりも、政府がコロナ危機を理由にこのような抗議活動を軽視してはいけません。公衆衛生と経済のトレードオフを比較検討することだけが政府の仕事ではありません。パンデミック下であっても、抗議活動を行う市民の権利をいかに尊重していくかを考えなければなりません」

6月4日、ナッシュビル。抗議者らはBlack Lives Matterと書かれた大きな看板を持ち、警察に殺された黒人の名前(ジョージ・フロイドやブレオナ・テイラーなど)を叫んだ By Alvine / The Contributor

同研究によると、1983年に独裁政権が終わりを告げて以来、大規模な抗議運動をいくつも経験してきたアルゼンチンは、一般的に抗議運動への参加意欲が高いとされている。とはいえ、都市封鎖が敷かれ、感染者が右肩上がりで増えている中でも大勢の人々(調査対象者の45%)が変わらず「抗議運動に意欲的」であることが分かり、研究者たちも驚いたとのこと。

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