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【北海道警察不祥事】薬物担当の刑事が風俗嬢と覚醒剤漬けの3カ月 「おれはサツだぞ、一緒なら捕まらない」

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悪びれず「おれはサツだぞ」

かの二世の共犯者を目のあたりにしたのは、最後に彼の実家を訪ねた1週間後、松の内も明けない1月9日のこと。札幌地方裁判所の証言台で、その小柄な女性(当時23)は不自然に歯切れのよい口調で人定質問に答え続けた。

少し泣き顔の童顔。薄紫のジャージ上下に身を包み、一部が茶に染まった髪を束ねて背に垂らしている。住所を問われ「不定です!」と即答した彼女は、続く職業確認の問いにひときわ大きく「風俗店従業員をやっておりました!」と答えた。裁判官が「現在は」と問い直すと、きっぱり「無職です!」。この前年に弁護士登録したばかりの若い女性弁護士が、なんとも言えない表情でその様子を見守る。

検察官質問では、共犯の巡査部長との関係が語られた。否、正しくは「元巡査部長」。この時点で彼はすでに懲戒免職となっている。

検察官「彼とはどこで知り合ったんですか」
被告女性「ネットの『裏2ちゃんねる』という掲示板です!」
検察官「どれぐらいの頻度で会っていたの」
被告女性「ほぼ毎日のように会ってました!」
検察官「そのたびに薬を」
被告女性「3日に1回とか2日に1回とかのペースでした!」
検察官「使う量は」
被告女性「0.02gから0.04gぐらいです!」

薬物は元巡査部長が手配し、その代金をもっぱら女性が支払っていたという。逮捕当日は、元巡査部長が覚醒剤入りのレターパックを郵便局留めで受け取り、事後に合流してホテルに泊まる約束だった。逢瀬は叶わず、1人は郵便局の前で、もう1人は少し離れた駅の構内で、ほぼときを同じくして警察に身柄を拘束されている。

坂田正史裁判官の質問では、多くの傍聴人の記憶に残ることになるやり取りがあった。

裁判官「警察官と2人で覚醒剤を続けることに、躊躇や後ろめたさみたいなものは」
被告女性「はい。後ろめたさは、とてもありました!」
裁判官「彼のほうは」
被告女性「なさそうでした! 『おれと一緒にいたら捕まらない』と、私を安心させようとしていました!」
裁判官「なぜ捕まらないと」
被告女性「何度も『おれはサツだぞ』と。『サツだからこそ、調査が入ったらすぐわかる。だから安心しろ』って!」

2人が出会うきっかけとなった、薬物売買の掲示板(墨塗り処理は筆者)

面会でも天真爛漫な彼女 「名前、記事に書いて」

歳の離れた刑事とともに薬物に浸っていた日々を、元風俗嬢は天真爛漫な語り口で振り返る。その姿は、小学校のホームルームで発表に立つ学級委員長のようだ。

初公判の翌日、その人が勾留されている女性専用の拘置施設を訪ねた。面会を申し込めば、意外とあっさり会えるのではないか――。予感は的中し、彼女は見知らぬライターの訪問を屈託なく受け入れた。透明な遮蔽版の奥、小窓のついたドアを開けるなり「おはようございます!」の挨拶。少し気圧されながら用件を告げると、まっすぐこちらを見て言った。

「名前、記事に書いてください!」虚を突かれた、とはこのことだ。

眼の前でにこにこ笑うその人は、まだ23歳。実刑判決を受けたとしても、遠からず社会復帰してどこかで生活していかなければならない。実名報道はその際、大きな妨げとなる可能性がある。

名前の公表は、控えたほうがよい。その考えを伝えると、いかにも残念そうな声が返ってくるのだった。

「そうですかあ…。あ、本名が無理なら※※でも! それか、**はどうですか! 私、自分の仕事に誇りを持っているので!」

訊けば、※※は逮捕前に勤務していたススキノの性風俗店での源氏名、**は一度だけ主役を張ったアダルトDVDでの芸名だという。

「検索してみてください、すぐわかります! あ、でも彼は嫌がるんですよねー、AVとかソープの話。会ったときから、なんかお父さんみたいな感じの人で…。裁判では『もう会わない』って言ったけど、また会いたいです!」

おいおい。まったく反省してないぞ。「また会ったら、また薬やっちゃうでしょう」と諌めると「ですよねー!」と飽くまで屈託がない。

「キメた状態でエッチするのがいいんですよ! あの人の奥さんと子供が留守のとき、自宅に呼ばれてやっちゃったこともありますよ!」

立ち会う女性刑務官の無表情には、感心するばかり。こちらは終始クラクラしっ放しだ。瞬く間に規定の30分間が過ぎ、席を立つ間際に彼女は言った。

「また来てください! なんでも話します! …できれば名前、発表してください」

それから彼女の刑が確定するまで、さらに8回の面会を重ねた。ぎこちない筆跡の書簡も、計4通届いた。

その声と筆とを借り、再現してみたい。刑事と風俗嬢との逢瀬の日々を。

元巡査部長は「お父さんのような存在」だった

当人は「早くススキノに戻りたかった」と言う。

AV撮影で東京を訪れたときに覚醒剤を知った風俗嬢は、最初の薬物使用で執行猶予判決を受け、札幌に戻って依存症回復施設に入所した。禁欲的な生活は長く続かず、わずか1カ月で施設を脱走、古巣のススキノで再び性風俗店に職を得て、その3日後に覚醒剤使用を再開するに到る。インターネットの掲示板で売買の情報を集め、海外サーバーを経由したメールサービスで売り手と連絡をとりさえすれば、薬は簡単に入手できた。

その1年ほど前から薬物依存となっていた刑事は、自身で覚醒剤を使うのみならず「余った物」をネット販売していた。常習者が知る隠語をまじえて「札幌アイス」「武器なし特価」「街中来れる方」などと記した書き込みが、ススキノ復帰直後の風俗嬢の眼に止まる。

まだ見知らぬ同士だった2人は、札幌中心部の大通公園での待ち合わせを約束した。大手企業が入居するビルの陰で初めて顔を合わせ、小さなビニール袋と現金を交換。刑事は1万円紙幣を受け取り、風俗嬢に0.4gの白い粉を手渡した。一昨年の7月12日、午前9時ごろ。空は雲に覆われていたが、湿気がなく夏らしい陽気だったという。

二回りも歳下の風俗嬢に、刑事は「かわいいね」と声をかけた。また会おうと持ちかけたのも、彼のほうだ。初対面の翌日、ススキノ西部の大きなラブホテルに投宿した。大量の薬を持ち込み、丸一日以上の滞在。刑事は一度にだいたい5目盛り(0.05g)、依存度の強い風俗嬢は致死量に近い20目盛りほどを「キメた」という。ホテル代は風俗嬢が負担し、以後もそれが2人のルールとなった。筆者に宛てた手紙で、彼女は刑事を「SEXが大好き」と評している。

元巡査部長が所属していた北海道警察

《ある時、私に「オレは刑事」って身分を明かしてきました(8月中旬)。その後ペペサーレ(編集部注・イタリアンレストラン)で2人で食事をしましたが、照れくさくて、顔を合わすこともできない位で、そのあとも、ホテルにとまり、SEX時に「刑事さんとのHはどぉ?」って言って、私をイジメてきました。幸せでした(照)》(2019年1月25日消印)

《本モノの「手じょう」を使ったりして、はげしくSEXしました。覚せい剤は何度も打ちました》(同上)

回復施設を出てから札幌の友人宅に身を寄せていた風俗嬢は、ほどなくススキノ周辺のホテルを転々とする暮らしを始める。自ら「ナンバーワン」と称するだけあり、勤務先のソープランドではかなりの稼ぎを得ていたようだ。少なくとも、毎日のように覚醒剤を入手し、ホテルを泊まり歩くことができる程度には。

別の日に届いた手紙には、こんなくだりがある。

《私のツラかった過去を告げた時、すごく共感してくれて、そして抱いてくれ、一緒に泣いてくれたこと。これは1番うれしかったんです》(2019年1月26日消印)

筆の主いわく、刑事は「お父さんのような存在」だった。

風俗嬢には実の両親がおり、きょうだいもいる。だが生まれ育った人口1万人ほどの町に今も暮らす“元彼”に言わせると、父母の愛情はもっぱら歳の近い兄のみに注がれ、彼女は幼いころから強い疎外感を抱えていたようだ。15歳で援助交際を始め、18歳で風俗業に飛び込み、以後は文字通り身体ひとつで生きてきた。職場で孤立し、おそらくは家庭にも居場所がなかった刑事は、ひたむきな風俗嬢に自分と同じ匂いを嗅ぎとったのかもしれない。

背徳の日々は、3カ月間ほど続いた。

2人が最後の夜を過ごしたススキノのホテル(札幌市中央区)

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