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【北海道警察不祥事】薬物担当の刑事が風俗嬢と覚醒剤漬けの3カ月 「おれはサツだぞ、一緒なら捕まらない」

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記者クラブに属さないながらも、独自の取材で北海道警の不祥事を追っているフリーライター・小笠原淳氏。今回取り上げるのは、薬物捜査を担当する刑事でありながら自ら覚醒剤を使用し、札幌随一の繁華街・ススキノの風俗嬢と覚醒剤漬けの日々を送っていた男性巡査部長(当時46、懲戒免職)の姿だ。

決めゼリフは「俺はサツだ」。今回のレポートからは、強い使命感を持って警察官を志したはずの元巡査部長が、覚醒剤漬けの日々へと堕落していった姿が浮かぶ。

元巡査部長は2018年10月10日、覚醒剤を所持していたとして、覚醒剤取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕。11月1日に同法違反(所持、使用)の罪で起訴され、翌日に保釈された。

ところが、保釈中の12月上旬に覚醒剤を使用したとして、同法違反(使用)容疑で再逮捕される事態に。札幌地裁は19年2月7日、懲役2年6月、うち懲役6月を保護観察付き執行猶予2年(求刑懲役3年)とする判決を言い渡した。

元巡査部長は約10年半にわたり、薬物捜査を担当していた。元巡査部長の起訴段階になって、風俗店従業員の女(当時23)が共犯である事実が判明した。

元風俗嬢が働いていたススキノのソープ街(札幌市中央区)

忘れようもない“シャブ中”の件

久しぶりの電話の相手が不意に話題を変えたのは、私が“警察不祥事マニア”と知ってのことだったろう。

「そういえばサツ、最近でっかいのやらかしてないですね」
札幌市内で警察取材を経験し、現在は地方の支局に勤めるその若手記者が、電話の向こうで首を傾げる。彼の言う通り、北海道警察の不祥事はこのところ不作続きだ。

「一昨年の後半はすごかったですよねー。連続わいせつ、ひき逃げと来て、シャブ中でアガリ、みたいな」

声を受け、2018年下半期の記憶を手繰り始めた私は、もともとの電話の用件を忘れてしまうほど当時の状況を生々しく思い出した。とりわけ「シャブ中」の件は、忘れようにも忘れ難い。

「あの2人、まだ出所してないですよね。出たらまたやりそうな感じですか」

訊かれた私は、反射的に「やるでしょう」と答えていた。家族や自助団体などの支援で薬物依存を克服する人がいることは、もちろん知っている。だが当事者に立ち直りの意志がみられないとなれば、話は別だ。

事件の主役は、薬物捜査担当の警察官とススキノの風俗嬢。2人は覚醒剤を通じて出会い、短くも濃い蜜月を経て獄に堕ちた。

逮捕後に再犯、常習の可能性が

道警では何年かに一度、大きな不祥事が連続する時期がある。2018年の後半は、まさにそんな季節だった。

同年7月、機動隊の巡査長が重傷ひき逃げ事件で逮捕(停職3カ月)、翌8月には苫小牧署の巡査部長が連続わいせつ事件で逮捕された(免職)。ひき逃げの巡査長が事故後に偶然を装って現場対応にあたっていたことや、わいせつ巡査部長が子供相手に29回もの露出事件を繰り返していたことで、当時はともにその悪質性が話題となった。後者については当事者が幹部職員の息子だったため、地元メディアのみならず東京の週刊誌なども事件を報じるに至っている。

それらを一瞬忘れさせるほどの衝撃的な不祥事が発覚したのは、先の2件の裁判が続くさなかの10月10日夜。道警の『報道メモ』は、事件を次のように簡潔に伝えている。

《被疑者は、みだりに、平成30年10月10日、札幌市東区北6条東1丁目先において、覚醒剤を所持したものである》

当時、容疑者の職業は「地方公務員(警察官)」としか記されていなかった。だがすぐに、記者クラブ加盟社の記者からの情報で、その職場が札幌中央署の薬物銃器対策課であることが知れる。薬物捜査にあたる現職警察官が、自ら薬物事件で捕まったわけだ。容疑者は当時46歳。階級は、下から数えて2番目の巡査部長だった。

元巡査部長を乗せて検察庁へと向かう警察車両(2018年10月12日)

この前年、同じく薬物担当の警察官が売人への情報漏洩で逮捕され、免職となっていた。同事件の取材で知り合ったその元警察官に連絡をとったところ、今回の容疑者を知っているという。電話の主は、札幌市内の警察署で同僚だったことがあるというその人を「一匹狼のような感じ」と評した。

「ほかの人間とあんまりツルまないんで、何やってるのかよくわからないところがありましたね。一見、チンピラみたいな風貌で悪そうだけど、ほんとに悪いことするようには見えなかった。芯の通ったところもあって、上司に噛みついたりもしてました。ただ、その割には仕事の実績が上がらないんで、みんな『よくやるよねー』『頑張るねー』なんて冷ややかに見てましたね。昇任試験もなかなか受からず、ずーっと巡査部長」

なるほど、出世と無縁の一匹狼。人知れずストレスが積み重なり、つい薬に手を出してしまった。そんなところだろうか。と思っていたら、それどころではなかった。

逮捕1カ月後の11月初旬、札幌地方検察庁が巡査部長を起訴した。その起訴状に「甲と共謀の上」との記述。共犯者がいたということだ。

さらに1カ月を経た12月中旬、道警が彼の再逮捕を伝えた。巡査部長は最初の逮捕後に保釈され、再び覚醒剤に手を出していたのだ。
これは常習だ。捕まってもやめられなかったところをみると、すでに依存症と言ってよい。それもかなり重度の。

かぶりを振りながら警察発表に眼を落とすと、あることに気がついた。最初に逮捕されたときと2度目に逮捕されたときとで、自宅住所が違う。

巡査部長は10月の逮捕当時、妻子とともに札幌市北区の戸建てに住んでいた。この5年ほど前には同手稲区の住宅街に家を持っていたことがわかっているが、再逮捕時の住所はそこでもなく、同豊平区のマンションになっている。妻は仕事を持っており経済的に自立していたというから、本人は別宅でも構えていたのだろうか。

結論を言えば、そのマンションは巡査部長の実家だった。妻は事件直後に愛想を尽かし、事実上家庭が破綻していたのだ。

ここで、月額1000円で契約している「ゼンリン住宅地図」のアプリを開いてみる。道警の『報道メモ』に記された豊平区の一画に、巡査部長と同姓の世帯は5軒ほど。おそらくはこのいずれかが薬物再使用の現場だ。さほど広い地域ではないため、一度現場を歩けばある程度は絞り込めるだろう。そう思いつつ、念のため地元の警察OB団体「警友会」の名簿を手繰ってみる。その手が「豊平支部」のページでぴたりと止まった。

再使用現場と同じ住所に、巡査部長と同じ苗字――。

また二世かよ、と天を仰いだ。

保釈後に身を寄せた実家で、不肖の息子は再犯に及んだ(札幌市豊平区)

父親も警察官 縁故採用の弊害、最悪の形で

同じ年の夏に幹部職員の息子が連続わいせつ事件を起こしたことは、すでに述べた。それから半年も経ないうちに“不肖の息子”がもう1人現われるとは、北海道警はいったいどういう組織なのか。かつてその組織の「裏金問題」を実名告発した元釧路方面本部長の原田宏二さん(82)は、当時の取材にこう答えている。

「職員を採用するときに最も神経を使うのが、警察官としてふさわしい人物かどうかの見極めです。暴力団などとのつきあいはないか、犯罪を起こしそうな資質はないか、左翼的な思想を持っていないか…。これらを、警備・公安も使って徹底的に調べる。親が警察官だとそれがほとんど必要なくなるので、人事担当としては安心なんですよ」

これを聴く限り、警察では自ずと二世の採用が多くなりがちであることが予想される。原田さんは「幹部枠の拡大による資質の低下」なども指摘し「個々の不祥事を個人の問題として片づけず、縁故採用が孕む問題と真剣に向き合うべき」と警鐘を鳴らしていた。

それにしても、保釈された息子の身柄を預かっておきながら同じ屋根の下で薬物の再犯を見逃がすとは、もはや「資質」どころの問題ではない。

巡査部長再逮捕後の12月から翌19年1月にかけ、何度かそのマンションを訪ねた。元警察官たる父親とは2度ほど接触できたが、事件に関して意味のある話は聞けていない。最後に追い出された際、金属のドアに指を挟まれかけ、慌てて手を引っ込めた。そのドアの真ん中にぶら下がっていたのは、しめ飾り。いや、たしかに今は正月だけど、今年はそれどころではないんじゃないのか…。

父親と同期の元警察官5人ほどをそれぞれの自宅に訪ねると、親子2代で同じ職に就いていた事実を知る同僚は一人もいなかった。息子がいることさえ知らなかったという人もいた。息子の元同僚もまた、事件後初めて父親が警察官だったことを知ったという。

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