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アメリカ・ブラジル経済優先型、スウェーデンの集団免疫型…各国の“失敗”から得られる新型コロナ対策の教訓は


 緊急事態宣言が解除されて約1カ月。世界に目を向ければ、WHOのテドロス事務局長は19日、「感染拡大は加速している。世界は危険な新局面に入っている」と警告。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によれば、感染者数は23日に900万人を上回っている。

・【映像】なぜ感染拡大止まらない?世界のコロナ対策から学ぶ

 最も多くの感染者を出しているアメリカでは経済活動再開などにより感染者数の増加が顕著になっており、その数は約230万に。次に多いブラジルでも、ボルソナロ大統領の指示により経済活動を優先、感染拡大防止が不十分だったためか、感染者は108万人、死者数も5万人突破。米ワシントン大学の分析では、死者数は今後短期間に倍増し、10万人にのぼると予測している。

■アメリカは“経済優先型”、トランプ大統領が集会を強行も


 アメリカの国立研究機関で研究員をしている峰宗太郎氏は「アメリカなどでは収束の目処が見えていないし、これまで感染者数が伸びていなかった国でも大きな流行が起こり始めている。世界全体として見れば感染拡大が加速しているし、やはりWHOのテドロス事務局長も言っているように、新しい局面に入っていると思う」と話す。

 まず、アメリカの現状について峰氏は「医療機関の逼迫度については、最も厳しかったニューヨーク市に関してもピークを過ぎたと認識されている。ほかの地域も含め逼迫とまではいかないが、緊張が続く状態は続いている。そういう中で“リ・オープニング”といって、ロックダウンを解除し、経済を再開させる動きが出てきた。計画的なものではあったが、それが前のめりになっていたり、人権問題のデモの広りもあって、感染防止対策が少しないがしろになっている部分があるように感じている。やはり長い自粛期間に耐えられなかったり、経済が重要だという考え方に変わったりする中で、感染症を軽く見るような発言をする人も増えていると思う」と話した。

 コロラド州出身のパックンは「本当に最悪な状況だ。しかも大統領がマスクを付けず、専門家の意見を無視して何千人もの支持者を集めた集会を開き、大声を出させている。これが繰り返されれば、マスクをつけない、コロナをビビらないというのがトランプ支持の意思表示ということにもなってしまう」と指摘した。

■ブラジルはマスク着用義務化、最高裁が大統領に命令も


 また、ブラジルではボルソナロ大統領が「ちょっとした風邪に過ぎない」「ブラジルは止まってはならない」と主張、感染対策で対立した保健相を3月に解任したが、翌月に後任も辞任する事態となっている。ただ、首都ではマスク着用が義務化され、従わない場合は1日2000レアル(約4万1000円)の罰金が課されることになっており、23日には最高裁が大統領に対しマスク着用を命じている。それでも感染者数は19日に約5万4800人と、万単位のレベルだ。

 峰氏は「ブラジルの感染爆発は非常に懸念しているところだ。ボルソナロ大統領の考えもトランプ大統領にも近く、しっかり感染対策をしようという知事もいたが、とにかく経済が優先という政策だ。同時に検査が全く足りず実態が掴めていないので、実際の感染者数はさらに多い可能性がある。その状態で施策を打っても、適切ではない可能性がある。ブラジルではこれから冬に入るが、リオデジャネイロ州ではビーチなど人が集まる所で娯楽が盛んだし、ショッピングセンターなどにも人が溢れかえっている。これだけ人の移動とコンタクトがある以上、さらに感染は拡大すると思う」と指摘した。

 さらに峰氏は、インドやアフリカ大陸での感染拡大を懸念する。「アフリカは欧米やアジア各国にくらべて保健所のシステムも弱いので、流行が起きれば対策ができない可能性がある。今のところは抑えられているが、これは人の移動が少ないことが影響していると考えられるので、本格的に流行が始まれば大きなものになる可能性もある」とした。

■注目を集めたスウェーデンの“集団免疫型”の今は…


 他方、「50人以上の集会禁止」「ソーシャル・ディスタンス」等、最低限の予防措置で日常生活を送り、集団免疫獲得を目指したのがスウェーデンだ。日本でも“壮大な社会実験”として注目を集めていたが、死者は5000人以上に上っており、これは人口10万人あたりでみればアメリカを上回る状況だ。こうしたことについて、「集団免疫は夢物語」「経済を止めないのが売りだったが感染対策なしのため、他国から避けられて貿易面でも打撃」「高齢者や弱者が被害を受けて『命の選択』になってしまった」との批判もある。

 峰氏は「できるだけ経済も回しつつ感染を制御するということで、完全に野放図にしたというわけではない。ただ、高齢者など、弱者を手厚く守るというシステムになっていなかった面がある中、高齢者施設などに飛び火してしまった。国の責任者も反省のコメントを出してはいるが、やはり当初から集団免疫を目指すという緩い対策は正解ではなかった可能性がある」と話す。

 また、スウェーデンの抗体保有率が6.1%となっていることについては「集団免疫を獲得させようとすれば、理論的には最大60%程度の人が抗体を持たなければならない。しかし、これだけの感染者数、死者数を出してなお、あと10倍感染しないといけないとなると、社会が崩壊してしまう。やはり自然感染による集団免疫獲得、そして流行を抑えるというやりかたは夢物語だったのではないか」との見方を示した。

■「社会全体としての総死亡者数や実態的なダメージもみなければならない」


 経済活動を優先させた国々で感染が拡大する中、日本でも社会経済活動の再開が進行している。24日夕方の会見で専門家会議の脇田隆字座長が「夜の街だけではなくて、リンクが追えない感染者というのも東京では多く見つかっている。それだけ見えないクラスター感染というのが存在していることを意味するので、ここから市中感染に広がっていかないかどうか我々も非常に警戒している」と指摘したように、日本でも“第二波”への不安が高まっている。

 それでも専門家会議は、日本が現状のレベルに抑え込めている理由について、「効果的なクラスター対策。『3密』回避キャンペーンの浸透」「地方部含めて医療レベルが高い」「保健所を中心に公衆衛生水準が高い。市民の衛生意識が高い」「緊急事態宣言やその前からの自主的な取り組みの効果」といった点を指摘している。


 峰氏は「アジア各国は欧米と比べれば感染者数も死亡者数も少ないし、とくにベトナムやタイ、台湾は完全な封じ込めに近い形で、死者数ゼロも達成している。また、ニュージーランドやオーストラリアもきれいに抑え込んでいる。これらの国々の特徴はサイズが小さく、入国制限をしたり、トレースして隔離したりなど、国が強く統制し、私権をある程度制限してでも感染症対策をやりきった。一方、日本がこれだけサイズの大きい国にも関わらず現状のようになっているのは、やはり基本的な対策と、国民の意識、警戒レベルが高かったからだと考えられる」とコメント。

 その上で「未知の感染症なので、各国が知恵を絞ってできることをやった。だからスウェーデンのことも失敗だったと断罪する必要はないと思う。たっだ、その中でも日本の専門家会議が早くから指摘してきた“3密”を防ぐことの重要さは客観的なデータでも明らかになってきた。やはり原理原則から考えられることを徹底することによって大きな流行を防ぐことが必要だと思う。また、医学・医療的には感染者数や死亡者数を抑えることが一つのバロメーターだが、社会全体としての総死亡者数や実態的なダメージもみなければならない。感染症は抑えたけれど、経済への影響によって失業者数や死者数が増えてしまえば、対策としては成功とは言えないと思う」と指摘した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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