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「実はコロナかも…」「誰も気にしない」クラスター多発の歌舞伎町の闇と実情

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治安悪化……陽気で不機嫌な外国人

区役所通りはキャバクラもホストも、それを目当ての飲食店も並んでいるのでにぎわっている。そんな中で暴れる外国人。みんな2メートル近い。

「すげえな、あんなの勝てねえよ」

見ていた男性が半笑いでそうつぶやくのも無理はない。再び歌舞伎町交番前へ。これまた外国人が言い争っていた。この夜は外国人のやんちゃが目についた。外国人の機嫌が悪いのもまあわかる。異国の危険地帯で金を稼ぐストレスと、コロナで母国には容易に帰れないストレス。さっきの中国人だけでなく、白人も黒人も陽気に不機嫌だ。

この日は外国人の事案が多かった印象
この日は外国人の事案が多かった印象 - 筆者撮影

双方応援が駆けつける一触即発
双方応援が駆けつける一触即発、通行人は気にしない - 筆者撮影

歌舞伎町交番の前でも構わず喧嘩
歌舞伎町交番の前でも構わず喧嘩、でもお巡りさんは優しい - 筆者撮影

「やめなさ~い」

間延びした声で目の前の派出所から数歩で出動する警察官たち。この程度では緊張感もなく「はいはい」といった様子。もちろん珍しくもないので野次馬なんかいない。外国人のほうも警察なんかちっとも怖くないとりにダッシュで派出所の掲示板にジャンピングキックを決める。うんざり顔の警察も大変だ。

「お兄ちゃんお金ください…」と金をせびる中年

「お兄ちゃんお金ください」

派出所すぐの大久保病院の通りでおっさんに声をかけられる。私は「ないない」と手をふってみせる。おっさんは物分りよく立ち去る。派出所が見えていても関係ない。そもそも誰もコロナの心配なんかしていない。ここではみんな金しか興味ない。にするかもしれないが、コロナより経済を取った日本の縮図が歌舞伎町だ。現にこの状態で19日には夜の店も都道府県の横断も正式に全面解除となった。

「渡部のこと知ってるよ。あいつのことならしゃべるよ、コロナなんか誰も興味ないっしょ」

座り込んでるホストの兄ちゃんたち、まだあどけなさが残る彼らはまだ駆け出しだろう。取材慣れしているのか渡部の話で興味をひいてくる。あいにく今日はそっちじゃないが、「コロナより渡部」もまた、日本の縮図か。「コロナより手越」でもいいだろう。

「佐々木希とやりてー!」

朝まで営業する焼き鳥屋
朝まで営業する焼き鳥屋 - 筆者撮影

そんなホストのウケ狙いの絶叫と爆笑を背に風林会館から再び旧コマ方面へ。軽ワゴンで焼き鳥屋が営業している。夜の仕事のお姉さんたちが焼き鳥屋のおばちゃんに人生相談だ。三密もクソもない状態だが、私も食べる。焼き鳥だけでなく串揚げもある。

夜のお姉さん「私、じつはコロナだったかも~」

「私、じつはコロナだったかも~。熱すごくて家にずっといたもん」

女の子があっけらかんと話す。冗談ではなく本当にコロナだったかもしれない。結局、日本人の大半は検査を受けられなかった。

「もうみんなコロナになっちゃったし、ホスト遅れてね?」

流行に乗り遅れているということか。なるほど歌舞伎町ではコロナも流行のひとつでしかない。パンデミックという流行は、ファッションという流行に置き換わる。確かにホストのクラスターは3月、4月のピーク時を外してやってきた。理由はわからない。ホストが罹るならキャバもデリも、タクシーの運ちゃんや彼らで仕事をしている飲食店でも起こるはずだが起こっていない。もうすでに罹ったのか、いまやそれすらわからない。

「飲みどうですか?」

深夜の客引き、まだ若い男の子だ。いろいろ聞いてみる。自粛期間もやってたのか。

「ずっと仕事ですよ。店は表向き閉じてたんで声かけないと客入らないし金にならない」

なるほど、自粛のふりで実際は営業していたということか。これもいまだから言えることだろうが。もちろんついていったらひどい目に遭う。女の子はいるのか。

「そりゃいますよ。ここだけの話 ――」

コロナよりお金が大事。それは歌舞伎町もどこも一緒

ゴミ清掃車がやってくる
ゴミ清掃車が朝を告げる

本当かどうか、そうとう若い子がいるそうだ。ちょっとうかつなお兄ちゃん、バイト感覚なのか必死なのか、向いているとは思えない。気がないとわかると区役所方面のネオンに消えた。花道通りにゴミ収集のパッカー車が停車する。そろそろ歌舞伎町の夜が明ける。

コロナはうやむやのままに19日、この歌舞伎町の飲食を伴う接待含め全面解除となった。もっとも、そんなものは最初から誰も気にしていない。国も自治体も蚊帳の外、歌舞伎町は歌舞伎町の掟(おきて)で動いている。満員電車にすし詰めの人々と夜の仕事の人々との違い、わたしにはわからない。たぶん誰にもわからない。ホストクラブにクラスターが起こるなら、オフィスにだってクラスターは起こるはずだ。金のためならコロナなんか気にしないのはサラリーマンも水商売もお互い様、もうみんな、コロナより金が大事だ。ゆえに国もコロナより経済を優先した。この歌舞伎町と同じように、多少の犠牲を覚悟して。

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日野 百草(ひの・ひゃくそう)
ノンフィクション作家/ルポライター
本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。ゲーム誌やアニメ誌のライター、編集人を経てフリーランス。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。2019年『ドキュメント しくじり世代』(第三書館)でノンフィクション作家としてデビュー。近刊『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)。
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(ノンフィクション作家/ルポライター 日野 百草)

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