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マスクについて

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 さて、そんなわけで、マスクの効果は「感染者がそれなりに多い状態」で期待される事はわかりました。しかし、よくよくデータを見てみると、「マスクをしてもやはり感染はしてしまう」人は多いわけで、「マスクが絶対的なソリューション(解決策)」ではないことは、上述のとおりです。

 そこで、様々な工夫がもたらされています。

 まずは、N95などの「ベターなマスク」の活用です。N95は密閉性が高く、理論的には通常の医療用マスクよりも防御効果は高いことが知られています。ただ、現実世界での臨床研究では、医療用マスクよりも呼吸器感染症を減らす、という決定的なエビデンスには乏しいのもまた事実です(Smith JD, MacDougall CC, Johnstone J, Copes RA, Schwartz B, Garber GE. Effectiveness of N95 respirators versus surgical masks in protecting health care workers from acute respiratory infection: a systematic review and meta-analysis. CMAJ. 2016 May 17;188(8):567–74.)。実験室内のデータとリアルワールドのデータは必ずしも合致しない、の一例です。

 とはいえ、院内感染のリスクは非常に高いため、ぼくらはレッドゾーン、すなわちCOVID-19確定患者がいる病棟(集中治療室含む)では基本的にはN95マスクを医療者に着用させていました。N95が枯渇した場合は通常の医療用マスクで代替できると思いますが、現段階ではN95でやるのが良いと思います。これはエボラ対策のときにも活用された一種の経験値です(まだ、研究の余地はあります)。

 ユニバーサルマスキング、という概念も提唱されるようになりました。これは無症状の感染者もいるのだから、「だれもが感染者」という前提でみんなでマスクをしましょう、というコンセプトです。ここから派生して、病院職員はどこにいてもいつでもマスクをしましょう、患者にもマスクをさせましょう、という病院内の「ユニバーサルマスキング」というコンセプトもあります(Klompas M, Morris CA, Sinclair J, Pearson M, Shenoy ES. Universal Masking in Hospitals in the Covid-19 Era. New England Journal of Medicine. 2020 May 21;382(21):e63.
追加のレター、Klompas M, Morris CA, Shenoy ES. Universal Masking in the Covid-19 Era. New England Journal of Medicine. 2020 Jun 3;0(0):null.)。

 ただし、ユニバーサルマスキングの提唱者も、その効果は医療機関とか、持続的に密な人間との接触(いわゆる三密)が派生する場合にのみ効果が期待され、外に出るときにいつもマスクを着けることが「ユニバーサルマスキング」なのだ、とは主張していません。ここでも「こういう条件下ではユニバーサルマスキングですよ」という文脈を理解することが大事で、文脈を無視して文章やコトバの一部を切り取って自分の主張に寄り添うように都合よく使用してはいけません。

 ユニバーサルマスキングの効果がどのくらいあるのかは、今後の検証が待たれるところです。ぼくは医療機関の中では原則マスク、というオリジナルなユニバーサルマスキングのコンセプトには反対しません。職場でも病院内ではマスクをしています。が、自室(教授室)ではマスクはしていません。ぼくしか、人はいないですし。

 さて、マスクの効果は感染経路の遮断が目的です。いろんなことがマスクについて語られ、様々なデータの分析もありますが、とにかくマスクの期待される効果は「感染経路の遮断」であり、それ以外にはまったくありません。

 で、すでにデータで確認したように、ある程度感染者がいる状態では、マスクの着用で感染が減らせる(少なくとも医療用マスクなら)ことが期待できます。同時に、ある程度感染者がいる状態では、感染はゼロにできず、少なからぬ人たちはマスク着用にも関わらず感染してしまいます。

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