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沖縄辺野古と、秋田・山口のイージス(鈴木耕)

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沖縄「慰霊の日」

 この原稿を書いているのは6月23日。沖縄「慰霊の日」である。

 1945年6月23日、この日、凄惨な地上戦が行われていた沖縄で、日本軍の牛島満司令官が自決。それによって組織的な戦闘が終わったとされている。

 県民の4人にひとりが亡くなったという沖縄戦に終止符が打たれた日ということで、沖縄県はこの日を「慰霊の日」として県独自の休日に指定し、県民がこぞって戦争で亡くなった人たちの霊を慰める日に決めたのである。

 ぼくは、毎年のように沖縄を訪れている。もう何十回になるか、自分でもよく分からない。そして沖縄へ行けば、本島南端の糸満市摩文仁(まぶに)の丘の「平和の礎(いしじ)」に脚を向ける。

 それは、ぼくがとてもお世話になった元沖縄県知事の大田昌秀さんが、生涯の事業として精魂を傾けた大きな碑だ。「平和祈念公園」の中にある。

 これは「平和の礎建設委員会」の答申を受けてのもので、沖縄戦で亡くなったすべての人たちの名前を分かる限り調べ上げ、石碑に刻み込んで戦争の記憶をとどめ、平和への祈りを捧げる場として、後世に残そうとしたものだ。

 すべての人たち。敵も味方もない。日本国中から集められ、戦いに斃(たお)れた兵士たち、朝鮮半島の人たち、アメリカから沖縄までやって来て死んだ米兵たち、戦いに巻き込まれて死んだ沖縄の人たち、それらすべての人たちの名前が刻み込まれた石碑は全長約2.2キロメートル。

 扇上に海を臨む断崖の手前まで続いている。刻まれた人名の数、2020年の時点で24万1593人。この小さな島で、こんなにも多くの人たちが死んでいったのだ。

今年は安倍首相の姿はなかった…

 例年ならば6月23日には、ここを多くの人たちが訪れる。自分の父や母の名を探し兄弟の名を探し、それを静かに指でさすりながら涙を流す。もう二度と戦争は嫌だ、絶対に戦争は許さない……という思いを込めて、家族たちが静かに祈る、そんな日だ。そして、祈念公園では「慰霊の日」の式典が挙行される。

 安倍首相も、(多分)嫌々ながら毎年ここを訪れる。名護市辺野古の米軍新基地工事に執着し、幾度県民の「NO!」を選挙や県民投票で突きつけられても工事を止めない安倍首相には、会場から「何しに来た!」「帰れ!」「辺野古工事を止めろ!」などの鋭い抗議の声が投げつけられるのだから、そりゃ訪れたくないだろう。

 いつ来ても、憮然とした表情で式辞を読むと、そそくさと式場をあとにする。どんな感情も見せることはない。ただ、イヤな仕事を片付けに来た……というだけ。

 今年は「式典」は新型コロナウイルスの影響で小規模になり、少人数での挙行ということになった。だから、安倍首相は参列しなかった。内心ではホッとしていることだろう。

イージス・アショアの配備停止

 もし今年、安倍首相が式場に現れたら、例年以上に激しい抗議に晒されただろう。理由は簡単だ。秋田と山口への地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」配備予定が、突如停止になったからだ。

 6月15日、河野太郎防衛大臣が記者会見で、唐突に「計画停止」を発表した。唐突と言うしかなかった。ほんの数日前まで計画推進をツイートしていた河野大臣の突然の表明。いったい何があったのか。

 河野大臣の説明はこうだ。

 迎撃ミサイル発射後に切り離すブースターと呼ばれる加速装置を、民家のない場所へ確実に落下させることができないというのだ。もし住宅地へ落下すれば、家屋のみならず人命にも甚大な被害をもたらしかねない。

 しかもそれを是正するには、2千億円以上の費用と10年を超える期間が必要になるという。その費用対効果を勘案すれば、一旦、計画は停止せざるを得ないとの説明だった。

 何をいまさら! である。

 ぼくは秋田の出身である。高校まで秋田市に通っていた。だから、秋田の予定地とされていた秋田市新屋地区には、多少の土地勘がある。配備予定地は新屋演習場と呼ばれ、陸上自衛隊秋田駐屯地の演習場として使われている。

 ぼくが高校生だったのは今から60年近くも前のことだから、今とはまったく違っていた。それでもだいたいの場所の見当はつく。

 イージス・アショア問題を追及し、数々のスクープを放った地元紙の「秋田魁新報」によれば、今では周辺に住宅も増え、配備予定地とされた演習場と住宅地の距離は数百メートルしか離れていない。人命を尊重した計画とはとても思えない。

 しかも、計画は凄まじいほど杜撰であり、資料の改竄や隠蔽が次々と魁新報によって暴かれる。

 この経緯は『イージス・アショアを追う』(秋田魁新報取材班/秋田魁新報社、新聞協会賞受賞)に詳しい。ぜひ、一読をお薦めする。地方新聞ならではの底力である。


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