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テレワークによる余暇を知的に遊べ!/ラッセル「怠惰への讃歌」

株式投資をはじめて10年ほど経った30代初めの頃、ふと疑問が生じた。同世代と比較すれば、たしかに平均を上回る富を得られたかもしれない。でもそれで幸せになれたかというと、何かおかしい気がする…。

そんな時に「幸福論」と名の付く本を片っ端から読み、バートランド・ラッセル(1872~1970)「幸福論」の一節に、なるほど!と思ったものだ。

「典型的な現代人が金で手に入れたがっているものは、もっと金をもうけることで、その目的はと言えば、見せびらかし、豪勢さ、これまで対等であった人たちを追い越すことである。」(「幸福論」第三章 競争より)

この「幸福論」はラッセルが1930年に発表したものだが、1932年のエッセイ「怠惰への讃歌」に続きのような話があった。

生まれた家柄で人生が決まってしまうような階級社会から解放されたからこそ、競争を勝ち抜いて、富と権力を手にするぞ!という発想になるのは分かる。

しかし先進国では十分な経済的繁栄は達成された現在(1932年当時)、これまで通り仕事に没頭し、富の増大を目指すことは正しいのだろうか?

そう疑問を呈するラッセルの提案はこうだ。

「私が本当に腹から言いたいことは、仕事そのものは立派なものだという信念が、多くの害悪をこの世にもたらしているといいうことと、幸福と繁栄に至る道は、組織的に仕事を減らしていくことにあるということである。」

労働生産性が倍になれば、労働時間は半分になってしかるべき。しかしこれまで通り働き続けてしまえば、過剰生産により失業が生まれ、失業をなくすために、不必要な仕事を作り出すという悪循環に陥ってしまう。

つまり「労働を美徳」とする考え方は、貧しかった時代に正しかった価値観であり、わたしたちは富のみを求めるための労働から解放されるべきである!と説く。

「普通の賃銀労働者が、一日四時間働いたなら、すべての人に満足を与え、失業者もないだろう。これには、或る極めて適当な分量の気のきいた組織があると仮定しての話であるが。」

なぜラッセルが短時間労働を推奨しているのかというと、労働の価値はそれ自体にあるのではなく「余暇」が楽しくなることにあるから。

「ひまをうまく使うということは、文明と教育の結果出来るものだといわなければならない。生涯、長い時間働いてきた人は、突然することがなくなると、うんざりするだろう。だが相当のひまの時間がないと、人生の最もすばらしいものと縁がなくなることが多い。

多くの人々が、このすばらしいものを奪われている理由は、ひまがないという以外に何もない。馬鹿げた禁欲主義、それはふつう犠牲的なものであるが、ただそれに動かされて、そう極端に働く必要がもうなくなった今日でも、過度に働く必要のあることを私たちは相変わらず主張し続けている。」

そして「暇」が重要なのは、本来の人間的な活動は「遊び」にあり、そこから生まれた創造こそが文明の発展に寄与してきたからだ。

このあたりは同時代に書かれた「ホモ・ルーデンス」(1938年)に詳しく、余暇や遊びの重要性が見直されていた時期だったのかもしれない。

金銭欲から離れ、暇を知的に遊ぶことで人間らしい人生を送るべき。ラッセルがなぜそれを重視したのか?

「今までよりもっと人に親切になり、人を苦しめることも少なくなり、また他人を疑いの目で見る傾向も減るだろう。戦争したがる気持ちはなくなってしまうだろう。」

富を求め、絶え間なく競争する先に戦争が見えていたから。残念ながらその後、第二次世界大戦へと進んで行ってしまう。

そしてさらに半世紀以上経った今でも根本的には変わらない。もっとも経済成長を続けなければならないというのが、資本主義の根幹に埋め込まれている以上、軌道修正は難しいのだが…。

ただ個々人の生活においては、COVID-19の襲来により、予期せぬ形で1日2~3時間の「暇」を手に入れた人も多いのでは?テレワークにより通勤時間がなくなったのだから。

浮いた時間を仕事に充てて、さらに富を得ようとする人生はむなしい。ラッセル流「怠惰」を追求する豊かな人生でありたいものだ。

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