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オンライン授業強行記 - 片桐由喜(小樽商科大学商学部 教授)

はじめに

新型コロナウイルス感染防止のための最強対策は人と接触しない、会わないことである、らしい。これを信じて、私たちは科学的根拠の有無を厳密に問う思考を停止させ、あらゆることに耐えてきたし、今も耐えている。

感染症対策に関して素人の私はこれ以上、余計なことは言わず、この3か月、まさに自分自身が経験してきた「The オンライン授業」について現況報告をしたい。

なお、オンライン授業にはライブ授業とオンデマンド授業があり、前者はその名のとおり、生放送授業であり、学生は画面の向こう側で講義を聴き、後者は音声と資料を大学HPにアップロードし、学生たちが好きな時間に視聴するものである。ここでは主として後者を念頭においている。

やればできる

感染拡大が報じられる中、今春、大学の多くは前期授業をオンライン方式とすると定め、しかも、その準備期間は極めて短いものであった。従来からパワーポイントを授業で活用している、パソコン操作に詳しい教員にとってはどうってことのないオンライン授業であろうが、その対極にいる私のようなアナログ人間には青天の霹靂である。

絶対、そんなことできないと思ったが、そんな泣き言が通じる状況ではない。やるしかなく、そして、「やれば、できる(た)」のである。案ずるより、何とかとはまさにこのこと。 そして、今、これに乗じて、今後は積極的にオンライン授業を展開するなどという声が聞こえてくる。

急ごしらえの「やれば、できる」程度の授業である。緊急事態だから学生も黙っているだろうけれど、平時に戻ってもオンライン授業なら、いくらおとなしい日本人学生でも怒り出すに違いない。もし、彼らが黙って何も言わないなら、平時の大学教育によほど魅力がないことになる。そうなると困るのは大学で禄を食む私たち、である。 

余談のない授業

オンライン授業では、少なくとも私は余談をほとんどしない。1人、画面に向かって、あまり授業と関係のない話をするのは、むなしく、しらじらしいからである。加えて、余談はそれなりにきわどい話にもなる。対面で、この場限りの授業時間だからこそ、話せる内容でもある。オンライン授業で形に「残る」授業となると、意図とは違う形での拡散を気にして、つい慎重な物言いになる。

多少なりとも授業内容に関係のある余談をすることは学生に興味関心を持たせ、リアルな状況を想定させるのに大いに役だち、何よりリフレッシュにもなる。とりわけ、社会保障法の授業では、「実は・・・・・」「聞いたところによると・・・・・」といって始まる余談は、授業を盛り上げるのに大いに役立つ。それができないオンライン授業は、面白さ半減である。

自己満足警戒中 

対面授業では、授業しながら、学生の顔を見て、「こりゃ全然、わかってない」、「話に興味を示している」といった手応えを感じることができる。あるいは、終了後、「今日はうまくできた」、「今日はどうも上手に説明できなかった」という感触がある。わたしなどは反省することが、自己満足に浸るよりずっと多い。

ところが、オンライン授業だと学生の理解度、反応がまったくわからない。そうなると、反省することもなく、独りよがりの授業展開になりがちである。これを警戒し、慢心を戒める。こう考えると、オンライン授業は対面授業より、ずっと大変である。

片桐由喜(小樽商科大学商学部 教授)

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