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新型コロナ:健康被害の起こりうるリスクは? ~ゼロリスクはないが、許容可能なリスクなら安全~

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 "リスクの伝道師"SFSSの山崎です。毎回、本ブログでは食の安全・安心に係るリスクコミュニケーション(リスコミ)のあり方を議論しておりますが、今月も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連して、いろいろなリスクの大小を比較することの重要性について、考察したいと思います。なお、世界中でCOVID-19により亡くなられた方々に心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 いまなお世界で新型コロナウイルスによるパンデミックは継続中であり、ある意味この地球上で生きている限り、我々はCOVID-19に感染して健康被害に遭うリスクをゼロにすることは不可能だろう。6月17日には、世界で1日に感染した人が15万人を超え、累積の死亡者数も45万人を超えたという(COVID-19 Dashboard by CSSE at Johns Hopkins University)。だから、我々は新型コロナウイルスと共存していく道を探るしかなく、社会として感染者を自然に増やして「集団免疫」を高めるべきいう提言をした科学者たちもいたが、スウェーデンやイギリスでは実際それを試みて失敗している。

 日本においても最近発表された東京・大阪・仙台で実施された一般市民の抗体検査の結果を見る限り、いまだ感染履歴のある市民は1%以下ということが判明しており、市民の6割・7割以上が免疫を持たない限り成立しないと言われる「集団免疫」には程遠い状況だ。そうなってくるとワクチンや著効する治療薬が出て来ない限り、高齢者や基礎疾患をもつ方々にとっては非常に怖い疾患なので、しばらくの間はすべての市民にとっても感染することの健康リスクが非常に大きい感染症と言わざるをえない。

 市民にとってリスクが許容可能(Tolerable)な水準に抑えられた状態を「安全」と定義するので、COVID-19の感染者がいまだ報告されていない岩手県は本感染症に関して「安全」と言ってよいだろう。しかし、県外からのヒトの物理的流入を禁止する移動制限をかけて、ゼロリスクを目指すことはやり過ぎだ。なぜなら、市民の感染リスクが十分小さく「安全」なのに、移動制限をかけることで県外との往来によるビジネスや観光を抑制し、経済損失リスクを大きくしているからだ。具体的には県内のホテルや旅館が廃業に追い込まれて、自殺者が出たりすれば、それも間接的な健康被害といえるわけだ。

 本ブログでは、これまで何度も議論している原理だが、これを「リスクのトレードオフ」と呼ぶ。市民のリスク低減を左右する公共政策を、行政担当者や立法担当者が検討する際に、この「リスクのトレードオフ」は十分理解しておくべき原理だろう。とくに今回の新型コロナ問題を考える際に、この未知のウイルスの感染リスクを最小化する対策として、世界も日本もヒトとヒトとの接触を物理的に制限する、ロックダウンや外出自粛・休業要請・移動制限などを市民に課したわけだが、これはまさにゼロリスクを目指したものの、感染リスクを抑えることに失敗した上に、大きな経済損失リスクを生み出したように見える。

 国内での緊急事態宣言もやっと解除され、経済封鎖による損失リスクがなくなった今、経済活動を早く元に戻しながらも、明らかに世界のCOVID-19感染リスクはいまだ残っているわけで、これからは個人/民間が主体となって感染予防活動によりリスク低減をしていかなければならない。もちろんそこには政府/自治体による支援も必要であり、とくに新型コロナ陽性者をスムーズに隔離するための検査体制(PCR+抗原検査)や感染拡大に備えた医療体制の確保が重要だ。

 では、個人/民間が行うべきリスク低減活動において、どこまで実施すれば健康被害のリスクが無視できるくらい最小化できるのだろうか?筆者が考えるリスクの大小評価を、以下の表にまとめてみたので参照されたい(SD=ソーシャル・ディスタンス):

ハザード 対象 リスク対策/条件等
(頻繁な手洗い+環境消毒+換気が大前提)
リスクの大小評価
(2020年6月21日現在)
新型コロナウイルス感染症
(COVID-19)
市民(非感染者)
*直近2週間、生活圏
内で感染者報告なし(無症状感染なしと見込む)
外出時にマスク着用+他者とのSD不問
(会食時を含む)
≒0(無視できる)
*ただし、ゼロリスクではない
外出時にマスク不着用+他者とのSD不
問(会食時を含む)
小さいが無視できない
*飛沫感染リスク(生活圏外の感染者流入)が残る
市民(非感染者)
*直近2週間、生活圏内で感染者報告あり
外出時にマスク着用+他者とのSD維持
(会食時を含む)
≒0(無視できる)
*ただし、ゼロリスクではない
外出時にマスク着用+他者とのSD不問
(会食時を含む)
小さいが無視できない
*飛沫感染リスク(マスク不着用の感染者から)が残る
外出時にマスク不着用+他者とのSD維
持(会食時を含む)
小さいが無視できない
*飛沫感染リスク(マスク不着用感染者との偶発接触)が残る
外出時にマスク不着用+他者とのSD不
問(会食時を含む)
中程度
*飛沫感染リスクが十分残る
市民(無症状感染)
*直近2週間、生活圏内で感染者報告あり
外出時にマスク着用+他者とのSD維持
(会食時を含む)
小~中程度(発症リスク)
家族への感染:大
他者への感染:≒0
外出時にマスク着用+他者とのSD不問
(会食時を含む)
小~中程度(発症リスク)
家族への感染:大
他者への感染:小
外出時にマスク不着用+他者とのSD不問
(会食時を含む)
<小~中程度(発症リスク)
家族への感染:大
他者への感染:中程度
市民(有症感染者)
PCR陽性
在宅時もマスク着用+家族とのSD維持
(会食を含む)+外出禁止
中程度~大
家族への感染:中程度
他者への感染:≒0
医療/介護従事者(非感染者)
PCR陰性
院内外でマスク着用+マスク着用患者とのSD不問+患者以外(医療従事者含む)とのSDを維持(会食を含む) 小さいが無視できない
*接触感染リスク(無症状感染患者)が残る
他者への感染:≒0
院内外でマスク着用+マスク不着用患者とのSD不問+患者以外(医療従事者を含む)とのSD不問(会食を含む) 中程度
院内感染リスク:中程度
家族への感染:中程度
他者への感染:中程度

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