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なぜタクシー運転手は女性にだけタメ口で態度が横柄なのか 深夜、知らない場所でタクシーを降ろされた日 - 吉川 ばんび

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「もうここでいいですか、はい、降りてください」

 さっきまで大通りを走っていたはずの白髪混じりの男性ドライバーが、脇道に入って数分のところで突然車を停めてしまいました。仕事で終電を逃した私が一人でこのタクシーに乗り込んだのは、たしか深夜1時ごろのこと。


写真はイメージ ©iStock.com

ただ私を困らせようとしているだけに思える対応

「すみません、○○ホテルまでお願いします」とシートベルトを締める私を一瞥したドライバーの顔は、どこか不機嫌に見えました。出張先で土地勘がないため地図アプリを立ち上げると、目的地までは車で10分かかるかどうか。

 はいはい、と面倒臭そうに車を発進させたドライバーに「住所、お伝えした方がいいですか」と話しかけると、「いや、道路の名前で言ってもらわないと分かんないよ」と鼻で笑われてしまいました。

「あれ、もしかして行き先がわからないまま走っているのか」と思って窓の外を見ると、タクシーはまるで躊躇する様子もないスピードで夜の街を駆け抜けていきます。私は焦って、すぐに現在地からホテルまでの経路を調べなおし、信号待ちのタイミングで、ドライバーにスマートフォンの画面を見せようとしました。

「ごめんなさい、私はここらへんの土地勘がないので今アプリで調べましたけど、○○線だと思います」

 しかしドライバーはスマートフォンの画面を見ることもなく、また面倒臭そうに「いや、わかんないよ。目的地、何だって? 近くに何がある? どこ曲がればいいか言って、ホラ」と矢継ぎ早に言う彼は、ホテルへの行き方を明確にしたいのではなく、ただ私を困らせようとしているだけに思えました。

「もうここでいいですか、降りてください」

 さすがに腹が立ちましたが、車内には私とドライバーの男性の2人しかおらず、あたりは暗くて人通りも少ないため、何かあってもすぐに助けを呼ぶことが難しい状況です。過去にどこかで見た、タクシー運転手が乗客の女性を襲った事件のニュースが脳裏をよぎり、思わず出かかった抗議の言葉を飲み込むしかありませんでした。

「とにかく穏便に済ませたい」と思い、アプリを使いながらドライバーの質問に答えていると、車は大通りからわざわざ脇道に入り、街灯の少ない暗い場所まで来たところで停車しました。

「もうここでいいですか、降りてください」

 支払いを現金で済ませ、タクシーが走り去る低い音を背に凍える手で現在地を検索すると、ここからホテルまでは歩いて20分ほど。一刻も早く明るい大通りに面した場所に出たくて、大きな荷物を揺らしながら走って走って、ホテルに着くころにはもう、深夜2時を迎えようとしていました。

「女の子がこんな遅くまで遊んでちゃだめでしょ」

 タクシーに一人で乗ると、いいことがない。そう感じているのは私だけかと思っていたのですが、女性の友人たちに「この間、こういうことがあって」と切り出すと「実は私もさあ」と、次から次へと「性別」を理由に侮蔑的な扱いを受けたエピソードがでてくるでてくる。

 仕事で夜遅くなった日の帰り道だけタクシーを利用している友人は、あるとき50代半ばごろの男性ドライバーから「女の子がこんな時間まで遊んで……」と説教をされたといいます。疲れていたので適当に受け答えしたり聞こえないふりをしたりしていても、「結婚してるんでしょ? 旦那さん、心が広い人でよかったね、感謝しないとね」などと話しかけてくる始末だったようで、自宅までの10分間が地獄だったことは想像に難くありません。

 友人たちからはほかにも、服装についてしつこく言及されたり性的なからかいを受けたり、ひどいものでは「昔、タクシーの運転手に若い女の乗客が殺された事件があったの知ってる?」と脅しともとれる内容をにやにやしながら言われるなど、耳を疑うような体験談が飛び出しました。

 なかでも全員が大きく頷いていたのは、ドライバーがタメ口で接してくること。男性と一緒に乗車したときは必ず敬語なのに、一人で乗るとなぜか高い確率でタメ口を使われてしまうといったものです。

男性の多くは、この「差」にピンとこない

 先日、男性の友人と2人でタクシーに乗る機会があったのですが、ドライバーが敬語を使っているのを見て「感じがいい人だな」と思い、その友人に伝えたところ「いやいや、普通でしょ」と言われ、はじめて「あ、普通は敬語なのか」と驚いたことがありました。ひとつ納得が行かなかったのは、その「感じのいいドライバー」ですら、友人が車を降りるときには「ありがとうございました」と声をかけたにもかかわらず、私には「ありがと~」と軽く言ったこと。

 男性の多くは、この「差」にピンとこないかもしれません。一緒にいた男性の友人も、運転手が性別の違いだけであからさまに対応を変えている場面を目の当たりにして、とても驚いていました。

 あとで、私がモヤモヤした顔をしているのを見た友人が「ああいうのムカつくよねえ」と言ってくれたことで少し気が晴れたものの、ドライバーのあの「感じの良い対応」が最初から私に向けられたものではなかったのだと思うと、この出来事をきれいさっぱり忘れる気にはなりませんでした。

顔も名前も公開している彼らが悪質な対応を続ける理由

「ああいうの、今は悪い噂がすぐネットで広まるのになんでなくならないんだろう」と疑問を口にする私に、あるヒントをくれたのは気心の知れた友人でした。

「いやな対応されたとき、タクシー会社に問い合わせしたことある?」

 私が「ないかも」と小声で返すと、友人は「だからじゃないかな」と言ったあと、こう続けました。「もちろん100%相手に落ち度があるけど、じゃあ自分は何もしないでいても状況がよくなるかっていうのは別の話だからね」

 確かに知っている中では私も他の友人たちも、理不尽な扱いを受けてしまったあと、タクシー会社に連絡をした人は一人もいません。理不尽な態度を取る人が自らそれを反省するのを期待しても、望みは薄い。誰かが指摘してはじめて、彼らの認識が変わるのかもしれません。

 考えてみると、例えば「#KuToo」や「検察庁法改正案への抗議」も、もしも誰も行動を起こさなければ、大勢の人が抗議に対して賛同の声を上げなければ、今ごろどうなっていただろう。おそらく、いろいろな問題が顕在化されることもなかっただろうし、大きなムーブメントになっても尚なかなか物事が進展しない様子をみるに、差別が自然になくなることはありえないのでしょう。

 ドライバーは顔も名前も車内に掲示しているにもかかわらず、それでも彼らが堂々と女性客を馬鹿にした態度を取ることができるのは、こんなことでクレームが入ることはないとたかをくくっているから。そう考えると非常に納得がいきました。

 でも、もしタクシー会社に報告したことで恨みを買ってしまったら。私たちが乗車した場所、降車した場所をドライバーが覚えていて、報復を受ける可能性があったら。

 そうした不安を拭いきれずに「何か手はないものか」と調べを進めていくと、国や各自治体が運営するいくつかの相談窓口にたどり着くことができました。

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