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【読書感想】なんのために学ぶのか

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なんのために学ぶのか (SB新書)
作者:池上 彰
発売日: 2020/03/06
メディア: 新書

Kindle版もあります。

なんのために学ぶのか (SB新書)
作者:池上 彰
発売日: 2020/03/05
メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)
「勉強はたいていつまらないもの。でも、学んで損をするということはない」「社会に出てからでもいい。学びの楽しさを知っておけば、その後は一生学び続けることができる」「学ぶことに遅いということは絶対にない」…池上彰が初めて語った「学びの喜び」と「学びの意義」。

 池上彰さんが2019年5月に岡山市のノートルダム清心女子大学で講演した内容をもとに書籍化したものです。
 池上さんといえば、「わかりやすい解説」の名手として知られているのですが、これを読むと、「学びつづける」ということに対する池上さんの思いが伝わってくるのです。

 池上さんのお父さんが88歳を過ぎて体力が衰え、寝たきりになった際に、『広辞苑』の新しい版を池上さんに買ってきてもらい、それを病床で少しずつ読んでいたそうです。
 『魔女の宅急便』の「魔女は血で飛ぶのよ」じゃないですが、池上さんの勉強好きは親ゆずりなのですね。

 いや、そういう姿を見てきたからこそ、池上さんも「勉強の尊さ」を信じるようになったのか。
 子どもに本を読んでもらうためには、「読め」というより、親が日常的に本を読んでおり、家の中に本がたくさん存在していることが大事、という話も聞いたことがありますし。

 池上さんは、これが大学での講演ということもあって、「大人になってから勉強することの大切さ」を繰り返し説いています。

 それはともかく、大人になってからの勉強は、学生時代の延長の勉強では得られない気づきがたくさんあります。多くの学問は、社会にどう役立てるか、ビジネスにどううまく機能させるかを追求するものです。社会経験がないままで学問を続けても、机上の空論で終わってしまうことが多いものです。実際の現場を知って初めて、解決すべき課題や問題点が見えてきます。

 僕自身も、大人になってから、「もっとちゃんと数学とか物理とかを勉強しておけばよかったなあ」と何度も思ったのです。
 あらためて思い返してみると、学生時代は自分なりに一杯一杯だったような気もするのだけれど、「それが何の役に立つのか」がわかってから勉強すれば、モチベーションを高く維持できていたのではないか、と。

 でも、「あの時に勉強しておけばよかった」と後悔し続けるよりは、今からでも、少しずつ勉強しなおす、という手もあるのです。
 池上さんがNHKの記者だったとき、取材相手が自宅から出てくるのを待つ時間に、街灯で英会話や経済学の勉強をしていたそうです。

 その一方で、「自動車免許の学科試験に落ちたことがある」なんていう失敗談も告白されています。
 「問題が悪文だった」と、言い訳めいたことを仰っている往生際の悪さが、けっこう微笑ましくもあり。
 実は僕も一度落ちたことがあって、けっこうトラウマになっているので、これを読んで安心しました。いや、それで安心するなよ、って話なのですが。

 今は「博識でテレビにもたくさん出ており、教育にも熱心」というイメージの池上さんなのですが、若い頃は、飲み会に積極的に加わるようなタイプではなく、時間を見つけては勉強していたみたいです。
 
 ショウペンハウエルの『読書について』という本のなかから、こんな文章が紹介されています。

「読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない。習字の練習をする生徒が、先生の鉛筆書きの線を篇でたどるようなものである。だから読書の際には、ものを考える苦労はほとんどない。自分で思索する仕事をやめて読書に移る時、ほっとした気持になるのも、そのためである。

だが読書にいそしむかぎり、実は我々の頭は他人の思想の運動場にすぎない。そのため、時にはぼんやりと時間をつぶすことがあっても、ほとんどまる一日を多読に費やす勤勉な人間は、しだいに自分でものを考える力を失って行く」(岩波文庫)

 これは衝撃的でした。本を読めば読むほどバカになると書いてあります。要するにそういうことですよね。自分でものを考えることができなくなる、と。
「ああ、そうか」と思いました。ただひたすら本を読んでいればいいというものじゃないんだ、それでは自分の頭を「他人の思想の運動場」として貸しているだけなんだと気づかされたのです。

 こんなブログをやっていて、日々、義務的に「たくさんの本を消化すること」を続けている僕は、このショウペンハウエルの言葉に「そうだよなあ……」と頷かざるをえませんでした。

 最近、「自分にとって読みやすい本」や「時間がかからない本」を選んで読むことが多くなってしまって、「わからない本を悩みながら時間をかけて読む」ことが減っています。

 もちろん、「読みやすい本」にも新たな発見はあるのですが、「冊数を誇るための読書」というのは、かえって効率を悪くするのではないかと思うのです。

 そして、「読書家」と言われる人には、「読んで、せいぜい好き嫌いを語るくらいで、その内容について考えこまない人が少なからずいる」ような気がします。

 僕自身も、そうなってしまっている。

 ショウペンハウエルは、この文章の少しあとで、こう書いているそうです。

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