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警察の暴力、日仏で違う意見

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フランス・警察官(イメージ) 出典:piqsels

Ulala(ライター・ブロガー)

【まとめ】

・米同様、仏でも「警官の暴力」に対するデモ発生。

・米の警官発砲に対し、日仏で意見に違い。

・各国の文化・歴史ベースに即した判断基準の尊重を。

米国で起きた白人警官による黒人男性暴行死事件を受けて、デモがアメリカ、フランスを中心に起きているが、アメリカは歴史的背景もあり、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」がメインのスローガンにかかげられることが多い。

それに対して、フランスは、黒人以外の人種に対する差別も多く「人種差別」全体が対象になっており多少の違いがあるものの、両国で共通していることがある。それは、「警官の暴力」に対してもデモが行われていることだ。それほどまでに、アメリカやフランスでは、警官の暴力が多く問題になっているのだ。

そんな中、アメリカ南部ジョージア州アトランタ市で12日夜、黒人男性のレイシャード・ブルックスさんが警官ともみ合いになった末に背後から撃たれて死亡する事件が起こった。抗議の発端になったジョージ・フロイドさんの事件から3週間もたたないうちに起きたこの事件は、全米で続く騒乱と警察の暴力に対する抗議の嵐をさらに増幅させる結果になったのだ。そして、アトランタのニュースはそのままフランスにも伝えられ、フランスでもさらに警察官の在りに対して考えさせられることになった。

▲写真 ジョージフロイド氏を悼んで 出典:Flickr; Lorie Shaull

しかし、そんな中、ふと、日本のいくつかのSNSを見たところ、なんと日本では、「犯人が射殺されるのが当然だろう」との意見が大半を占めていて、そのことに大きな衝撃を受けた。SNS内では過激な論調が目立つためフランス語圏のSNSでもそういった意見はもちろん出ているのだが、ここまで大半が「警官が被害者を射殺」したことを肯定している現象はおきてない。

フランスの最初のニュースでは、「車の中で寝ていただけなのに、最後は射殺で終わった」と伝られていたが、こういった内容を見ていたフランス人は警官が悪かったと認識している人が多い。実際、何人かに感想を聞いてみたところ、誰しもが「悪いのは警察だろう」という口々にいうのだ。

なぜ、同じ動画を見ているはずなのに、日本のSNSではここまで意見が違うのだろうか?「環境の差」や「文化の差」などの違いがあるのだろうか?アメリカの意見も細かい点ではフランスとは違うと思うが、フランスと日本を比べたほどの差はないように感じる。そこで、今回、ツイッターでいろいろな人の意見を聞いてこの違いがどこからくるのかを考察してみることにした。

なぜここまで意見が変わってくるかの考察。

1.フランスと、日本での報じ方が違った

まず、コメントを読んでいると気が付くのが、フランスと日本での報じ方が違っていたという点だ。

フランスでのニュースでは、起こっている事件を、事実のみを語っているニュースが多い。まず、事件の始まりも、「車の中で寝ている人」がいて進路をじゃましていると警察に連絡が入ったという話から始まる。警察の記録に登録されている内容はそこから始まっているからだろう。確かに、その寝ている時点以前の内容、例えばそこまでたどりつくまでに飲酒運転しているかもしれない、などはその状況から得られる想像でしかない。そういった想像と思われることはニュースとして紹介されてないのだ。そして、他には、ジョージア州捜査局(GBI)の報告の内容と、家族の主張、現在の状況が紹介されている。(LCI)(BFMTV)(FranceInfo

一方、日本では、例えばNHKでは、「飲酒運転」の疑いで拘束しようとしたと報じられており、飲酒運転であったようなことが印象付けられている。また、朝日新聞の記事では、最初の文ですでに、「警察に対する批判の声が一層高まりそうだ」と、警察の非難に対して焦点を当てている。そして両記事とも、事件概要の詳細は語られてはいない。FNNでは、「ブルックスさんがテーザー銃を警察官に向けて撃ったため、発砲した」ことを強調し、警察への同情、人種差別の境界線あいまいさについてのコメンテーターの独自意見による解説が付けられている。

フランスで見ているニュースに比べると、日本のニュースは内容がそこまで正確に、詳細には伝えられていないうえに、各社の考えがニュースに反映される傾向があるようだ。

そして、その後、SNSではそういった情報を元に、射殺が正しいことであるとしていくアカウントも複数現れて、拡散されていった。

2.日本では、ニュースや専門家への信頼が低い

「なぜフランスのニュースを信じるのですか。ニュースが言っていることを信じてはいけない。」という意見をいう人がいた。

1. を踏まえると、こういった意見がもたらされることにも納得がいく。これは、日本のニュースでは事実が正確に流されているのではなく、書き手のなんらかの「意図」が含まれているのだ。「ニュースを信じるな」というのは、その意図にだまされてはいけないという意味も含まれているのだろう。

反対に、フランスの一般に向けられているニュースは、基本は知り得ている事実のみが語られている。意見は、ニュースとは別枠で討論などで述べられるのだ。しかし、そうは言っても落とし穴はある。フランスのニュースは知り得た事実を言ってはいるものの、海外のニュースの場合、その情報源は現地のメディアだ。現地のメディアが流している情報がそのままフランスのニュースになることになる。アトランタのニュースも、ほぼアメリカでのニュースと同じ内容であった。

それは日本のニュースが流されるときも同じで、日本のメディアが流す、「意図が含まれている」ニュースがそのまま流れるのだ。そうなると、「何かおかしい?」と思われる内容が流れている場合も出てくる。また特定のフランス新聞では、個人の思想も含める新聞もあるが、昔からその特定メディアの記事のみが日本に紹介されることが多く、そこから「フランスのニュースを信じるな」という考えに傾いていくケースもある。

また、今回は特に新型コロナウイルス関連のニュースで、「結果的に見ても、言っていることが正確ではなかった専門家」が、テレビや一部の記事などに登場し、それが日本では大きな批判の的になっていたが、フランスにも日本のそのメディアの情報がそのまま流れていたことの影響もあるかもしれない。

3.日本では逃げることへの受け取り方が違う

いただいた意見の中には、日本人の分析としてこのようなのがあった。

「日本では、警察に職務質問される場合、やましいところがない限り抵抗することはまずありません。我々は、抵抗するということはやましいところがある人と認識します。ましてや、武器まで奪って逃走となれば、逃げた人に同情的にはなりません。」

日本人は公権力最強ってのが根底にあるからあそこまでお上に逆らったら撃たれて当然と考える」

まさにこの通りなのじゃないだろうか。そのため、他の方が書かれていた

「過失の判定基準がおかしい」

という意見が出てくるのであろう。

フランスの場合を考えてみると、逆らうことは正しいとはとられはしないが、逆らうことも当然のことでもあり、ある意味考えには幅がある。そのため逆らっただけで撃たれるのは通常規則ではアウトだ。警察で決められているプロトコルに従っていなければいけない。その視点から見た時、今回は、アトランタのボトムズ市長も事件後、すぐに、市警本部長の引責辞任を発表するとともに、「武器の正当な使用とは思えない」として、発砲した警官の懲戒免職を要求したことから、プロトコルに従った行動ではなかったと解釈できる。日本でも、もちろん決められた規則があり、アメリカにもあるが、それとは別に、日本の一般人としての感覚として、「抵抗し逃げることは悪事の肯定である」と絶対的に判断されることが大きい。

▲写真 アトランタ・ボトムズ市長 出典:Flickr; Netherlands Embassy

そして興味深いのが、アメリカに在住の日本人も、「警察に抵抗しないのは鉄則だ」という。多分、私も、フランスで同じ状態になったときに、同じことを言うだろう。移民としてできる最大の防御だと日本人として考えるからだ。しかし、他の国の人を見ていると、その考えは常識ではない。育ってきた環境、受けてきた扱いで、その人の常識も変わる。日本人から見て最悪な方法だと思えることをわりと普通にしている人がいて、それが正しい場もある。日本の常識だけでは断定できないこともあることを、頭の片隅に入れておくことは大切だ。

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