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「教えて!もやウィン」騒動でふたたび露呈した自民党の酷い憲法観

自民党が自サイトやTwitterに掲載した『教えて!もやウィン』というマンガが議論を巻き起こしている。

自民党のマンガなので、当然自民党の政策を推し進める手助けをするマンガなのだが、最初にいきなり進化論に触れ「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは変化できる者である」という言葉をダーウィンのものとして紹介しているのである。(*1)
そしてその上で「憲法改正が必要だ」と訴えるのである。

もうこの時点でずっこけてしまう。

この言葉は、改革や変化の必要性を説く人によって盛んに使われているが、よく使われるだけに「ダーウィンはそんなことを言っていない」というツッコミも多くされている。

少なくとも「ビー玉はA玉になれなかったB級のガラス玉のことではない」とか「銀ぶらとは、銀座でブラジルコーヒーを飲むことではない」と並ぶくらいには、「この言葉はダーウィンの言葉ではない」というのは知られている雑学だと思っていた。

進化論とは、動物個体が環境に適用しようとして変化したり進化したりするのではなく、動物の集合体として多様であったものの一部が結果的に生き残るということを示しており、つまりは多様性こそが生物の進化を形作っているという考え方である。間違っても自民党が考えているような「特定の方向」にみんなで一斉に変化することを良しとするような考え方ではないのである。

また、進化論はファシズムによって悪用されがち事は、少なくとも政治を学んだことのある人なら知っているはずである。特にナチスドイツによる民族粛正の論理として利用されたことは有名である。ただでさえ安倍政権は批判派から「ファシスト」と批判されているのに、わざわざ自らファシズムとの密接なつながりを示す証拠を提出しなくてもいいのにと思う。

さて、進化論の誤った知識を披露したのが第1話だが、第2話も酷い。(*2)

こちらでは聖徳太子が制定した「十七条の憲法」を取り上げているのだが、これをいきなり「憲法と似たようなもの」と紹介している。そして、最後の方には「リーダーも国民もみんなが憲法に従う義務がある」などと述べているのである。

自由民主党 「【教えて!もやウィン】憲法改正ってなぁに? 」より

2013年に参院予算委員会の質疑応答で、憲法学者の芦部信喜の名前を知っているかと問われ、堂々と「存じ上げておりません」と答えた安倍首相(*3)であったが、それから7年、無知を恥じて憲法を学び直したのかと思いきや、自民党は憲法を学ぶことの一切を放棄したようである。

十七条の憲法は貴族などに対して道徳などを説いたもので、権力者が下々に示す規範である。一方で日本国憲法をはじめとする「近代憲法」は、法の下に権力を置くことで、権力の暴走を押さえ込むものである。

この2つは明確に別のものであり、とてもではないが今の時代に十七条の憲法を指して「憲法と似たようなもの」と言えるはずもない。これを憲法扱いして許されるなら、飲み屋のトイレに貼ってある「親父の小言」的なものでも憲法に似たものと言えてしまう。

ああ、そういえば自民党の中には教育勅語を信奉している議員もいたっけ。そんなに教育勅語が好きなら、トイレにでも貼って拝んどけばいいのに。

『教えて!もやウィン』は今のところ、第2話までがアップロードされているが、その両者ともにちょっと進化論や憲法を学べば簡単に突っ込めるくらいに内容の間違いが酷い。このような間違いを平気で晒すことができる人たちが、長い間、憲法を改正しようと言い続けているのだから、呆れるほかない。

だいたい「変化が必要」だと思うなら、憲法をごっそり変化させる前に、時代に必要とされている「同性婚」や「夫婦別姓」くらいは達成してみてはどうか。それこそお得意の「口頭決裁」で法解釈などいくらでも変更できるではないか。黒川氏一人のためには法解釈を変更できたのに、国民全体のためには変更できないのだろうか?

自民党は現行の日本国憲法を時代遅れのように扱うが、自民党が持ち出す憲法観は十七条の憲法のような、立憲主義以前の権力者が国民を縛るための法であり、日本国憲法よりもはるかに古く、すでに腐敗しきった過去の遺物としか言いようのない法である。

改めて、自民党に憲法改正をさせてはならないことが、明らかになったと言えよう。

*1:【教えて!もやウィン】第1話 進化論(自民党)https://www.jimin.jp/kenpou/manga/first/
*2:【教えて!もやウィン】第2話 憲法とは(自民党)https://www.jimin.jp/kenpou/manga/second/
*3:安倍首相「有名な憲法学者」の名にポカン 「芦部信喜知らないって…」支持者もドン引き(J-CAST ニュース)https://www.j-cast.com/2013/03/30171884.html?p=all

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