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スズキ創立100周年の「試練」 コロナとインドでダブルパンチ

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主力市場のインドがコロナで大打撃(EPA=時事通信フォト)

昨年12月に新型を発売した「ハスラー」の販売台数も前年実績割れに

スズキの鈴木俊宏社長(左)と、父で会長の鈴木修氏

業績悪化を機にトヨタとの関係強化に向かうか(左は豊田章男・トヨタ自動車社長)

軽自動車シェアでダイハツと激しい争いを繰り広げてきたスズキ(写真は「アルトRS」)

 3月15日に創立100周年を迎えた自動車メーカーのスズキ。だが、そんな記念の年に世界中を襲った新型コロナの影響をもろに受け、最大の危機を迎えている。果たしてスズキはこの試練を乗り切ることができるのか──。ジャーナリストの有森隆氏がレポートする。

【写真】スズキのヒット車「ハスラー」

 * * *

 100年前の第一次世界大戦中の1918(大正7)年から翌年にかけて、スペイン風邪が世界的に流行した。日本では約2300万人の患者と、およそ38万人の死者が出たと記録されている。

 戦後恐慌の最中の1920(大正9)年3月15日、鈴木式織機製作所が静岡県浜名郡天神村(その後浜松町、現・浜松市)で設立された。初代社長は鈴木道雄である。

 それから100年──。スズキは新型コロナウイルスの直撃を受け、日本やインドで新車販売がガタ減りとなった。インドはスズキにとって最重要市場である。コロナとインドのダブルパンチを喰らったわけだ。100年目の実に重たい試練である。

「日本は完成車の不正問題、インドは市場の回復の遅れがあり、(決算)期末にはコロナの影響があった。色々な問題を抱える中での結果だ」

 スズキ社長の鈴木俊宏は5月26日、連結業績をこう総括した。

 2020年3月期の連結決算は、売上高が前の期に比べて10%減の3兆4884億円、純利益は25%減の1342億円だった。四輪車の世界販売台数は285万台で14%減った。このうち、インドが18%減と大きく落ち込み143万台。日本は7%減の67万台となった。

 同期間の国内の軽自動車の新車販売台数は、ホンダの「N-BOX」が断トツの首位。2位はダイハツ工業の「タント」。ススギの「スペーシア」は3位だが、日産自動車の「デイズ」に並ばれた。スズキの「ワゴンR」「アルト」「ハスラー」の販売台数は前年実績割れ。「販売のスズキの面影はいずこに」(軽業界の重鎮)といわれるような惨憺たる結果を招いた。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、4月に緊急事態宣言が発出され、外出自粛や店舗休業が続くなかで販売が一段と低迷。各社の5月の軽自動車の新車販売台数は前年より半減、8か月連続で減少した。

 現在、緊急事態宣言が解除され、販売店に少しずつユーザーは戻りつつあるが、すぐに販売に結びつくわけではない。

主力市場のインドで成長が止まった

 スズキの最大の懸念は、主力のインド市場の低迷だ。インドは世界販売台数の半分を占め、日本のそれの実に2倍だ。インドの自動車市場はコロナ感染が拡大する前から冷え切っていた。金融機関の貸し渋りや保険料の負担増で消費者の買い控えが広がっていたためだ。政府の景気刺激策も功を奏さなかった。

 感染拡大で都市封鎖(ロックダウン)される以前の2020年2月のインド市場全体の新車販売台数は31万台と16か月連続で前年実績を割り込んだ。3月下旬に始まったロックダウンで、スズキの四輪車を生産する3工場は操業を停止。販売店も休業した。

「インドでは4月の販売はゼロ。5月も1万台前後だろう。大変な危機と受け止めている」

 電話会議方式で開いた決算発表で、代表取締役会長の鈴木修は危機感を募らせた。インドの四輪車工場は5月に操業再開にこぎつけたが、今後、販売を伸ばせるかどうかは不透明。感染流行の第2波、第3波が避けられない、とみられているからだ。

 グジャラート州に建設している新工場の稼働を4月から7月に3か月先送りしていたが、新型コロナの影響で再延期を余儀なくされた。稼働時期を未定だ。新工場はインドで8番目。稼働すればインドの年間生産能力は25万台増の225万台となる。

 鈴木俊宏は「リーマン危機からの復活に日本は6年かかった」と話す。今回のコロナ禍では、医療体制が比較的整っている日本に比べ、インドはまだ感染拡大が止まっていないため、車の需要が元に戻るのは気が遠くなるほど先になるだろう。

インド成長の礎を築いた名物経営者

 会長の鈴木修は1930年1月30日生まれだから、今年90歳になった。1978年、48歳でスズキの4代目社長に就いて以来、42年間トップに君臨する超ワンマン経営者である。「修さんの引退こそが(100周年の)最大のセレモニー」(関係者)との声もあったが、いまだに経営の最前線をひた走る。

 修は常々、「どんな小さな市場でもいいから、ナンバーワンになって、社員に誇りを持たせたい」と語っており、その目は新興国市場に向けられていた。

 1982年3月、国民車構想のパートナーを求めて、インド政府の調査団が浜松市を訪れた。修は腕まくりして、黒板に現地に建てる工場の図面を描き、熱っぽく説明した後、「カネが要るなら大手にいけばいい。ウチは技術指導をきちんとやる」と結んだ。

「田舎者のプレゼンテーション」(修本人の弁)がインド進出の決め手となった。翌1983年からインドで生産を開始。2007年、インド政府は持っていた合弁会社の株式をすべて売却。マルチ・スズキ・インディア社はスズキの子会社となった。

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