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  • WEDGE Infinity
  • 2020年06月22日 08:56 (配信日時 06月22日 06:00)

コロナ前に戻る企業は要注意、生産性を高める働き方の追求を 逆境に克つ人事戦略 コロナ禍を転じて福となす - 浅野有紀 (Wedge編集部員)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの企業が在宅勤務などのテレワークを半ば強制的に行うことになった。パーソル総合研究所の調査によれば、正社員のテレワーク利用率は、3月中旬に13.2%だったが、緊急事態宣言発令後の4月中旬には27.9%と約2倍に増加、東京都に限れば49.1%に達した。このうち、所属する会社で初めてテレワークを実施した人は約7割に上った。

SESAME/GETTYIMAGES

(出所)日本生産性本部資料を基にウェッジ作成 (注)調査対象は20歳以上の日本の雇用者1100名 写真を拡大

 手探り状態でテレワークを行う中、多くの人が通勤時間が削減されることや、電話対応等に時間を取られなくなって業務がはかどるなどのメリットを感じた一方、ネット上での資料の共有化や通信環境など、さまざまな課題も浮き彫りになった(右図参照)。

ある食品商社の事務職社員は、「在宅勤務者が一気に増えたことで社内システムにアクセスが集中して動きが遅く、業務効率が悪くなった。また、商品の卸先にはFAXでやりとりするところもあり、発注内容を確認するために定期的な出社が求められた」と話す。また、ある生命保険会社の営業職社員は、「顧客のところへ直接訪問することが原則禁止になったため、2~5月の4カ月間は新規の契約がゼロだった。5月中旬にテレビ会議システムが導入されたが、初めての試みで顧客対応どころかシステムの使い方にまだ慣れていない」と不安気に語った。

コロナ禍で知見を蓄積
コロナ後を見据える企業

急なテレワークへの移行で困惑する企業がある一方、コロナ後を見据えて働き方改革を加速させようとしている企業もある。

三井住友海上火災保険は、コロナの感染が拡大し始めた2月末から社内会議をオンラインに移行し、緊急事態宣言後は特定警戒地域における出社人数を通常の3割に抑えた。宣言解除後も、オンラインの方が生産性が高い業務は継続実施しており、出社人数は多くても7割に抑えている。

人事部企画チーム課長の荒木裕也氏は、「これまでリモートツールを使わなかった役員や役職者から『やってみると以外に普通に会議ができるじゃないか』という前向きな声が多く出ている。会社全体のITリテラシーも上がったことが非常に大きい」と語る。

代理店や得意先企業とのやりとりにおいても、コロナの感染拡大後はTeamsやZoomなど、相手が使用可能なオンライン会議システムに応じる形で対応し、6月に入ってもオンライン対応を継続している。また代理店に対しては、コロナ前から導入している、保険商品に関する質問に自動で回答するチャットボットサービスに加え、2月には代理店の行動解析に基づく指導機能を備えたAI搭載ソフトを導入するなどして、これまで代理店とのリアルなやりとりを要していた業務の効率化を進めている。

一方、情報漏洩リスクやセキュリティを理由としてリモートワークの導入が遅れてきた銀行業界でも、コロナ禍を機にテレワークが浸透しつつある。

あおぞら銀行では、2017年から電子稟議(りんぎ)システムを導入するなど、テレワークと相性の悪い紙・ハンコ文化から転換を図り、保有文書の約6割を削減し、2000人強の全行員に対してテレワーク可能な制度が整えられていた。銀行業界の中では極めて先進的な動きだが、コロナ前まではテレワーク利用者は月50~100人ほどにとどまっていた。それがコロナ禍で4月には約1300人が利用し、社内アンケートでは、「テレワークの利用がコロナ後も増える」と考えている人は8割に上った。

人事部企画課長の高山功士氏は、「これまでテレワークをしなかった人が抱いていた『自宅じゃ業務ができない』という固定観念が薄まった。また、非対面のオンライン会議が基本になったことで、短時間で効率的に会議を行う意識が生まれ、会議時間がすでに短くなっている。こうして多様な働き方を経験する中で気づいた、より生産性を上げる業務の進め方は今後も続けていきたい」と語る。

ここで忘れてならないのは、リアルとリモートをミックスした働き方改革を進めるにあたり、それを機能させる評価制度を整える必要があることだ。

コロナ前から全社員にノートPCが貸与されているソニーは、緊急事態宣言中もグループ全体で約7割、東京本社では約95%が在宅で業務を行った。「柔軟な労働環境を整えることで、社員それぞれのライフスタイルに応じて能力を最大限に発揮してもらい、生産性が高まるよう各種人事制度を導入してきたことが役立った」と人事企画部労政グループ統括課長の高田直樹氏は語る。

同社では、柔軟な働き方とセットで社員の自律を促すための厳格な人事評価が導入されており、年間の賞与は社員個々の役割と成果に応じて40~130%の間で変化するという。こうした「責任ある自由」を確立する人事制度が柔軟な働き方の根底にある。

早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏は、「生産性を高めるデジタル化、それに伴う人事制度の整備など、以前から日本企業に必要だった変化だ。それがコロナ禍で加速しているだけで、このタイミングですらその変化に乗り遅れる企業は、市場から取り残されることになる」と指摘する。

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