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月1回の無料「獣医ナイト」-ペットが友の、若者ホームレスへのサービス。若者をうつ、薬、犯罪から遠ざけるペットたち

カナダの路上で暮らす若者ホームレスの多くは、ペットを飼うことで孤独と闘う。 彼らが頼れる数少ないサポートの一つとして、ボランティアの獣医師による無料診察日が設けられている。

唯一、うさぎも無料診察 ペットの予防接種や不妊手術を助言

 モントリオールにある若者ホームレスのための支援センター「ダン・ラ・ル(Dans La Rue/街頭で、の意)」。その建物の一角で、ニコラス(22歳)とアンジー(20歳)はウサギの“バットマン”を連れて獣医を待っていた。ここはこの街で唯一、無料でウサギの診療ができる場所だ。

ウサギのバットマン。名前の由来は肩マントのようなぶち模様から Photos: L'Itinéraire

 二人がバットマンを引き取ったのは、昨年12月。アンジーは自分のふくらんだお腹をさすりながら「私たちの赤ちゃんよ」と笑顔を見せた。若い二人は生まれてくる子ども、そしてバットマンと一緒に、人生の新たな段階を歩み始めようとしている。

 バットマンを見ながら「この子は愛と思いやりを与えてくれる」と、アンジーは言う。「性格はウサギというより犬みたいな子なの」

「ほら、ケージから外に出たくないんだよ。おっと出てきた!」とニコラスはバットマンが逃げないようにつかまえた。

 毎月第1水曜の夜に開かれるこの「獣医ナイト」では、診察項目は限られているものの、予防接種や虫下しが受けられる。また、若い飼い主がペットの不妊手術や基本的な衛生知識に関するアドバイスを受けられる機会にもなっている。

 ニコラスとアンジーの次に辛抱強く順番を待っているのは、デビッドと2匹の子猫たちだ。

「2013年から路上にいる。ここには無料の夕食や他のサービスを利用するためによく来ていた」

Photos: L'Itinéraire 

 デビッドは今、若者のドラッグ乱用防止活動に携わっている。彼自身のことはあまり語らず、「こういう仕事をしているってことは、もちろんドラッグを使用する若者たちを理解できるような経験が、僕にあるからだろうね」とだけ話した。

一緒にシェルターには入れない。
一方、ペットは若者たちを 非難から逃し、命をも救う

「獣医ナイト」の開始時間が近づき、ダン・ラ・ルの若手スタッフであるヤファ・エリングとエティエンヌ・ラロンドが準備を始めた。獣医師のジョーン・ガウヴィンが到着し、すぐに予約リストに目を通す。猫12匹、ネズミ2匹、ウサギ2匹、犬23匹が今夜の患者だ。

 診察を手伝う獣医学科の学生たちも到着した。何人かはカリキュラムの一環として来ているが、ボランティアとして参加している者もいる。プロの獣医は全員がボランティアだ。

Pixabay

「学生たちにとって、これが最初の臨床体験です。自分たちほど人生が幸運ではなかった若者に会うのは、今までの認識が根底から変わってしまうような機会となるでしょう」とガウヴィン獣医師。

 学生たちは、まず地下の倉庫に40~50袋のエサを運び込むため、バケツリレーの態勢をつくった。「これは寄付品です。でも、私はいつも若い人たちに、地元のペットショップに行って自ら売り物にならない商品をもらうようアドバイスしています。そうすることで、我々の提供する物に依存しすぎず、彼ら自身で社会とのつながりをつくることができるから」とラロンド。

「ペットが唯一の友である若者はたくさんいて、彼らは自分よりペットを優先します。それに、公園で寝る時は犬と一緒の方が安全なんです」

 多くの場合、若者たちは路上にいる時にペットを飼い始める。だが、未成年者がペットと一緒に入れるシェルターは、モントリオールではダン・ラ・ルだけ。この唯一の宿泊施設にも定員があり、希望者全員が入れるわけではない。

「シェルターでペットを飼うことは容易ではなく、若い人たちに、自分のペットの面倒をちゃんとみるよう注意しなければならないこともしばしばです。ここは小さな施設ですから、犬の数が多すぎると管理しきれないんです。猫は比較的楽ですが、利用者に猫アレルギーの人もいるので大変です」とラロンドは言う。

Photos: L'Itinéraire

 グエルフ大学オンタリオ獣医カレッジが2016年に発表した研究によると、ペットと一緒の若者ホームレスは、うつになる可能性、ドラッグの使用やその他の犯罪行為などにかかわる可能性が3倍低いという。さらに彼らは、獣医師を信用しているので日々の出来事を相談しやすくなる。

 カナダの5都市でインタビューした198人の若者ホームレスのうち、98人がペットを飼っていた。主任研究員のミシェル・レムは「この結果は、動物と一緒にシェルターに泊まることを認めない多くの支援団体に警鐘を鳴らした」と言う。

PublicDomainPictures/Pixabay

 カナダの路上に暮らす10~20代の若者は、そのほとんどが深刻な家庭環境や虐待から逃れたり、またLGBTs(※)であることを理由に家族から追い出された経験をもつ。彼らにとって、ペットは批判から逃れられる存在であり、多くの場合、命をも救ってくれる存在なのだ。

※ レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなど、性的指向が多数派と異なる人々のこと。

(Courtesy of L'Itinéraire / INSP.ngo)

※上記は2017-12-01発売の『ビッグイシュー日本版』324号(SOLD OUT)からの転載記事です。事務所に在庫はございませんが、路上の販売者の手元には残っていることがありますので、お気軽にお声掛けください。

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