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【コロナと復興五輪】「来年に向け準備進めるが現実も注視しないと…」 訪問先の福島県庁で本音ポロリ。復興大臣が思わず漏らした五輪開催への高いハードル

新型コロナウイルスの感染拡大防止のための往来自粛が解除された事を受け、復興庁の田中和徳大臣が19日午後、福島県庁を訪れた。内堀雅雄知事を表敬訪問し、復興庁設置法の改正(復興庁の10年間延長)などについて報告したが、会談後の記者会見では、1年間延期された〝復興五輪〟について開催に意欲を示しつつも「現実は今後、やはり注視していかなければならない」と本音も漏らした。東京五輪開催の是非は18日に告示された東京都知事選挙でも争点となっているが、開催へのハードルの高さが閣僚からも示された格好だ。

【「予測つかないこと起こる」】

 「私どもとしては〝復興五輪〟、まあ来年やはり、やらせていただくという想いを持って準備をしていかなければならないと思いますし、ご期待もいただいているわけでございます。ただまあ現実は今後、やはり注視していかなければならないと思っておりますけれども、私自身、ぜひひとつ初期の目的が達成できるような〝復興五輪〟にしていきたい。こんな想いでございます。以上です」

 福島県庁の応接室で行われた田中和徳復興大臣の記者会見。すぐに東京に戻らなければいけないとの理由でわずか7分間。NHK、テレビユー福島につづいて指名された筆者は、田中大臣に「来年、本当に〝復興五輪〟など出来ると考えているのか」と尋ねた。その答えが冒頭の「現実を注視」だった。やりたいが状況は厳しい。そんな本音が垣間見えた。

 16日の定例会見でも「本当に予想だにしなかったコロナが起こりまして、オリンピックのことも含め〝復興五輪〟が来年に持ち越されたこともあって、いろいろな思いがあるわけでございますけれど、やはり世の中というのは予測もつかないことがこのような形で突然起こってくるわけでして、予断を許さないということがございます」と述べている。

 もちろん、田中大臣も基本的な考え方は「五輪開催に全力を尽くす」だ。

 「いずれにしましても、私の立場からすれば、ぜひひとつ来年、見事に開催していただけるように願っておるところでございます」(5月22日の定例会見)

 「〝復興五輪〟が被災地の方々を勇気づけて、復興を後押しするものとなるように、復興の情報発信に全力で取り組んでいかなければならないという思いを強くしておるところでございます」、「いずれにしても、私の立場から〝復興五輪〟というのは揺らがないという思いでございます」(6月5日の定例会見)

 しかし、「開催したい」という想いと「開催出来るか」、「開催するべきか」という問題は別だ。それを田中大臣も感じ始めているのではないか。

知事表敬後の会見で、来年の五輪開催へのハードルの高さも口にした田中和徳復興大臣=福島県庁

【自粛解除受け福島へ】

 田中大臣が福島県を訪問するのは、3月7日以来、10回目。このタイミングになったのは、福島県も首都圏や北海道との往来自粛を解除したため。解除と同時に原発事故被災県を訪れる事で「被災3県の中でも特に、福島県の事を考えていますよ」と〝アピール〟したい復興庁の思惑があった。

 午後2時半すぎ、大勢のSPや職員に囲まれて福島県庁2階の第一特別委員会室に入った田中大臣。新型コロナウイルス感染防止のため、福島県の内堀知事とは距離を開けてテーブルについた。「ソーシャルディスタンスなので」と声をかけた内堀知事。

 まず田中大臣が「12日、復興庁の10年間の延長だとか、福島復興再生特別措置法の施策の拡充など今後の復興をさらに進めるための礎となる復興庁設置法等の一部を改正する法律が公布されました。本法律の成立に向けて知事のご協力、大変なものがあったわけでございまして、改めて知事さんに御礼を申し上げる次第でございます」と切り出した。

 「福島県ではいまだに多くの方々が避難生活を余儀なくされておられるなど被災者や被災地の皆さんには大変な御苦労をおかけしているとろこでございます。被災地への訪問を再開させていただいて、現場主義の下に被災者の生活再建あるいは営農再開の加速、帰還移住の促進、風評払拭の諸課題に復興創生期間後もきめ細かく対応して行きたいと存じております。引き続き内堀知事さんのお力添えご指導のほど、よろしくお願いを申し上げます」

 これに対し、内堀知事は「特に復興庁が次の10年間をしっかし存続をし、政府部内で復興の司令塔として役割を果たして頂ける事、本当に心強く思っております。併せて国際教育研究拠点この最終取りまとめが先般なされました。この拠点は新しい復興期間において復興をけん引するエンジンとなる重要な拠点であります。この法案の成立、教育拠点、それぞれ田中大臣のリーダーシップの下、復興庁の皆さんが努力をしていただいた結果であります。県民を代表して心から感謝を申し上げます」と述べた。

 内堀知事はさらに、新型コロナウイルスに伴い①震災、原発事故、風評被害、昨年の台風19号、そして今回の新型感染症。次から次へと新しい重い課題が目の前に来て、心が折れそうになっている方々がいる②実際には復興は前に進んでいるが、式典が中止になったり延期になったりして復興が実感できない、実感しづらい③現場主義の危機。県内の市町村を訪問する事はなかなか出来ていない。どんな苦労をしているのかつかみにくいという状況がある─と「3つの危機意識」を田中大臣に伝えた。

福島県の内堀雅雄知事を表敬訪問した田中和徳復興大臣。手元には3枚の〝カンペ〟が広げられ、田中大臣は終始、読み上げた。〝カンペ〟には、内堀知事の発言も含めて一字一句が書き込まれていた。「※マスコミ退室後にご発言の予定とのこと」はピンク色のペンで塗られていた

【今回も〝カンペ棒読み〟】

 昨年9月の就任時から〝カンペ棒読み〟だった田中大臣。この秋で1年になるが、この日も手元に広げた3枚の〝カンペ〟に目を落とし続け、棒読みに徹した。

 テーブルに広げた〝カンペ〟には、自身の冒頭挨拶だけでなく内堀知事の想定発言まで書かれていた。全てを読み取る事は出来なかったが、3枚目にはピンク色のペンで塗られている箇所がある事は遠目からでも確認出来た。

 撮影した写真を拡大すると、そこには「※マスコミ退室後にご発言の予定とのこと」の文字。その前には内堀知事の想定発言があり、後ろには田中大臣が答えるべき文章が綴られていた。一部県議からは「帰還困難区域の未除染解除についても話題になるのではないか」との声もあったが、〝カンペ〟からは「令和3年度以降」、「地元からの要望」、「5年間の復興財源フレーム」、「事務方同士で繰り返し意見交換」などの表現が読み取れる事から、今回は来年度以降の復興予算について語られたものと思われる。

 なお、田中大臣の知事表敬を取材出来たのは冒頭の8分足らずのみ。内堀知事の挨拶が終わったところで、事務方から「報道の方、ここまでになります」と声がかかり、取材者は退室を命じられた。

 いわゆる〝頭撮り〟しか取材を認めなかった理由について、復興庁の広報担当者は「普段から(〝頭撮り〟のみにしている)というのもありますし、福島県庁との調整もあってこうなった」と説明した。現場を訪れるといっても、訪問先は県庁。被災者の生の声にはならないが、この点については「福島県内を一番ご存知なのは県知事だろうという事。この後、岩手や宮城を訪れ、その後に各市町村という形になっていく」と話した。

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