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特集:トランプとバイデン、どちらが良いか?

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 本日から都道府県を越える移動の自由が復活し、今宵はプロ野球も開幕になります。「平常への回帰」が進んでいることに、感謝あるのみです。本誌もこのところずっと「新型コロナ」ばかり取り上げてきましたが、そろそろ目先を変えてみたいところです。

 そこで取り上げるのは、「11月3日に当選する米大統領はトランプとバイデン、どちらがいいか」というベタなテーマです。日本外交はこれまでトランプ大統領とうまくやってきたけれども、将来の世界秩序を考えればバイデン新大統領の方が良いかもしれない。とはいえ、今後の米中関係も気になるところ。ここでは「YA論文」とそれを批判する「宮家論文」を手掛かりに、次期大統領と米国外交について考えてみたいと思います。

●現役公務員が匿名で伝えたかったこと

 4月10日、米国の外交論壇誌”AmericanInterest”に「YA論文」が掲載されたとき1、世間の注目度は高くなかった。新型コロナウイルスの話題ばかりが飛び交う時期であったことを思えば、それも無理からぬことであったといえよう。発表から2カ月も経過した後ではあるけれども、あらためてご紹介することにしたい。

 YA論文の抄訳を本号の7~8pに掲載してあるので、まずはそちらに目を通していただきたい。AmericanInterest誌はそっけなく、”Y.A. is an official of the Government of Japan.”とだけ紹介している。YA氏が誰であるか、おそらくは政府内で「犯人探し」も行われていることであろうが、本誌の関心はそこにはない。ただ、ここに書かれている「日本政府の公務員」の見方が、まことに「ぶっちゃけベース」で面白いのである。

 2本稿が掲載されたThe AmericanInterest誌は、2005年にThe National Interest誌から分離独立した隔月刊の外交論壇誌である。書名はいかにも保守派の雑誌だが、中心人物はフランシス・フクヤマ氏であるから、「ネオコンから転向したリベラル派」でもある。読者は米国内で外交や国際関係、安全保障論に詳しい知識層といったところだろう。

なぜ本稿が匿名論文になったのかは、拙訳をご覧いただければ自明だと思う。「今のトランプ外交は問題だらけだが、それでも日本にとってはオバマ時代よりも良い」「それはオバマが中国に対して甘過ぎたから」であるという。日本の保守系論壇誌であれば、こうした論調はそれほどめずらしくないだろう。しかし現役官僚の発言となれば、物議を醸すことは避けられないだろう。しかも中国を敵視する表現が非常に多い。普通だったら、「誰だ、こいつは!」ということになって、たちまち出世街道から外されてしまいそうだ。

 とはいえYA氏には、リスクを承知で伝えたいことがあったのであろう。以下、それが何かを考察してみたい。私見ながら、本稿最大のパンチラインは以下の部分である。
So, do we want, if possible, to go back tothe world before Trump? For many decision-makers in Tokyo, the answer is probably no, becausehaving a poorly implemented but fundamentally correct strategy is better than having a well-implemented but ambiguous strategy.
 つまり、実行がお粗末な正しい戦略(中国敵視=トランプ政権)は、きちんと実行される曖昧な戦略(対中関与=オバマ政権)に勝る、というのである。トランプ氏は通商問題で譲歩を求めたり、防衛負担の増大を迫ったりするけれども、それでもちゃんと中国に対峙してくれるからありがたい。それが日本、ひいてはアジア諸国の受け止め方だという。

 オバマ政権の対中政策のどこが間違っていたか。あまりにも理想主義的で、グローバルイシューばかりを追い求めた。その間にアジアの周辺国が犠牲になり、中国の脅迫を受けることとなった。おそらくオバマ氏にとっては、中国の協力を得てパリ協定を締結したことこそ、自分の最大の外交成果と考えているのではないか。しかしその間に強化された中国の海軍力は、尖閣諸島や南シナ海に迫るようになった。

 民主党支持のLiberal intellectualsの中には、「気候変動こそが最大の安全保障問題」という見方が少なくない。そうした考え方は欧州でも一般的である。しかしアジアの国々(YA論文は具体例として「台北、マニラ、ハノイ、ニューデリー」を挙げている)にとっては、中国の軍事拡大こそが目の前にある現実的脅威なのである。

仮に11月3日にジョー・バイデン氏が勝ったなら、即座にこの問題が復活するだろう。トランプ大統領は就任早々の2017年6月にパリ協定からの離脱を宣言した。しかるに同協定28条の定めにより、米国の協定離脱が有効になるのは今年の11月4日(大統領選挙の翌日!)である。となれば来年1月20日の就任式以降に、バイデン新政権は米国のパリ協定再加盟を検討することになるだろう。4年前よりも左傾化した民主党支持者と欧州各国は歓迎するだろうが、アジアの国々は「米国外交の逆戻り」を懸念することになりそうだ。

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