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民主党による政権交代の後に起こったこと。

 次の総選挙が近いと言われている。日本をよりよい国にするために、私たちが直面している政治的な課題は何か。今後の日本の道筋を見極めるために、直近の過去を振り返って整理しておきたい。

 2009年の民主党による政権交代は、戦後ずっと続いていた自民党による長期政権に終止符を打ち、日本にも、世界の民主主義国で標準的な本格的な政権交代のスキームをもたらすものとして注目され、期待された。

 課題になっていたのは、日本の統治機構の立て直しであった。戦後、長期政権が続いてきた中で、官の力が強くなりすぎたと多くの人が感じていた。民間の活力に基づく国の再生を図らなければ、日本の復活はないと考えられていたのである。

 ここで、大前提として確認しておくべきことは、民主党が政権交代の課題として挙げた構造改革や、霞ヶ関の統治機構の立て直しは、統治機構をよりインテリジェントで「筋肉質」のものにするという意味で国の発展に寄与し、国力を向上させるという意味において、最終的には霞ヶ関の官僚機構の利益にも適うはずだということである。このまま、「既得権益」にしがみついていても、そもそもその「パイ」自体が先細りになる。思い切って、自分たちの権益の成り立ち自体を懐疑することで、結果的には国が発展し、霞ヶ関の利益にもなると期待されるのである。つまり、ウィン・ウィンのシナリオが、そこにはあるはずだった。

 民主党の2009年マニフェストに挙げられた、「国の総予算207兆円の組み替え、税金のムダ使いと天下りの根絶」、あるいは「地域主権の確立、地方の自主財源の増額」といった政策は、以上のような日本の未来を見据えた政策課題として、適切なものに思えた。民主党の掲げたマニフェストに多くの有権者が共鳴したからこそ、民主党は勝利を収め、政権交代が実現した。

 このような期待にも関わらず、周知の通り、民主党政権は失速した。東日本大震災と、福島第一原子力発電所の事故という予期せぬ出来事があったとはいえ、失速の根本原因は、民主党がマニフェストに掲げられた精神を忘れてしまったことである。

 民主党の挫折のきっかけになったのは、政権交代の立役者だった小沢一郎氏、鳩山由紀夫氏にふりかかったネガティヴ・キャンペーンだった。さまざまな政治家がいる中で、霞ヶ関の既得権益にメスを入れようとしていた二人について、負の情報が吹き出したのは、果たして偶然だったのだろうか。結果として、鳩山氏は首相を辞任した。陰謀史観をとるかどうかは別として、小沢氏、鳩山氏が民主党の要職から外れたことが、民主党による日本の改革を失速させたことは確定した歴史的事実である。

 鳩山氏の辞任を受けて首相の座についた菅直人氏は、小沢一郎氏、鳩山由紀夫氏に対して理解しがたい「処分」を行うことで、民主党の創設者たちを排除する挙に出た。小沢、鳩山両氏にふりかかったネガティヴ・キャンペーンが民主党による改革の挫折のきっかけとなったとすれば、菅直人氏は、その猜疑心と利己主義のかたまりのような振る舞いによって、改革の担い手としての民主党を、根底から無力化したと評価されざるを得ない。

 そして、菅氏に続いて首相に就任した野田佳彦氏は、マニフェストにはなかった消費税増税を最も重要な政策とみなすに至った。日本の財政のためには必要だったという論をとるにせよ、結果として霞ヶ関の官僚組織にとってはもっとも扱いやすい政権になったことは否定できない。
 
 こうして見てくると、民主党が政権についた後の歴史は、改革へ向けた力の急速な無効化と、霞ヶ関の倫理に親和性が高い政権への堕落だったことがわかる。これは、霞ヶ関にとって、本当に「勝利」なのだろうか。日本という国の活力が低下し、ますます斜陽化し、国全体としての「パイ」が小さくなる結果になっても、霞ヶ関の官僚たちは満足なのだろうか。

 民主党による政権交代という改革への試みが失敗に終わったことは、日本にとってほろ苦い経験だと言うしかない。グローバルな競争の激化の中、構造改革は不可欠である。統治機構が、よりインテリジェントで筋肉質なものになることは、霞ヶ関自体の利益にも資するはずである。「維新」などの第三極が注目される今、日本政治の課題が何なのか、鳩山、小沢両氏による試みの原点にさかのぼって、考えてみる必要があるように思う。

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