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アングル:強まる安倍首相の退陣観測、河井前法相逮捕がさらに逆風


Linda Sieg 竹本能文

[東京 18日 ロイター] - 自民党総裁の外交特別補佐も務めた河井克行前法相の逮捕は、支持率が過去最低水準まで沈んだ安倍晋三首相にとって壊滅的な打撃となりかねない。来年9月に迎える党総裁任期前の退陣へと扉を開く可能性もある。

自民党内の一部では早期退陣がささやかれ、ライバルたちによる後継争いの動きが活発化している。日本の憲政史上で在任期間最長となった安倍首相は、これまで支持率が落ちても立ち直ってきたが、今や身内の支持を失いつつあるようだ。

日本の検察当局は18日、妻の案里氏が初当選した昨年の参議院選挙をめぐり、票の取りまとめを依頼するため地元議員らに現金を配った容疑で河井夫妻を逮捕した。東京地検によると、夫妻は5人に計170万円を供与。これとは別に、克行容疑者は約90人に計2400万円を支払った。

案里氏には自民党本部から1億5000万円の政治資金が支払われていた。違法ではないものの、その額の大きさから、安倍首相が了承したものかどうか疑問の声が出ている。安倍首相は18日、通常国会閉会を受けて開いた記者会見で、河井容疑者の逮捕について「大変遺憾だ。かつて法相に任命した者として責任を痛感している」と述べた。

「総理は持たない」と、自民党の中堅議員は話す。「年末まで持つのは厳しいのではないか」。

有権者の間では安倍政権による新型コロナウイルスの経済対策に不満が高まっていたが、河井夫妻の逮捕というスキャンダルが、さらに支持率に影響を与えそうだ。検察幹部の定年延長問題を巡っても、司法の独立を脅かすとして批判にさらされていた。

「当然だけど大きなお金も動いている。そのお金は闇の中ということなのか」と、東京の主婦(65)は言う。「安倍さんの責任は重い」。

<背負う数字>

2007年にいちど退陣した安倍氏が、首相に返り咲いたのは2012年12月。自民党総裁として最後となる3期目の任期は、来年9月に終わる。

    安倍首相は、突然辞めた07年と同じ轍は踏まないと考えているかもしれないが、ポスト安倍をめぐるレースは熱を帯びてきた。

「総理は数字を背負っている。2021年9月という数字を」と、東京を拠点に日本を見続けてきたファンドマネジャー、イェスパ―・コール氏は語る。「(後任を狙う)自民党の挑戦者たちは、駐機場で離陸する準備をしている」。

安倍首相に近いものの、世論調査の支持率が低い岸田文雄元外相は今月、ポストコロナ時代の政策立案を目指す党内の勉強会、「新国際秩序創造戦略本部」を立ち上げた。逆に世論からの支持率は高いが、自民党国会議員の間で人気が低く、安倍首相に批判的なことで知られる石破茂元防衛相は、党の二階俊博幹事長との関係を深めている。

河野太郎防衛相が首相の座を狙っているという憶測もある。

仮に安倍首相が来年9月までの任期を全うできたとしても、特に日本経済が第2次世界大戦以降で最悪の事態に陥りつつある現状、自民党内そして政策の主導権を取り戻せるだけの力の回復は難しいかもしれない。

「もしかしたら日本のコロナ対応は悪くなかったのかもしれないが、それを相殺して余りある問題があるということだろう」と、与党のベテラン議員は言う。「首相をやっている期間が長いから、国民が(安倍首相に)『飽きている』のも(支持率低下の)原因だろう」。

日本では新型コロナの爆発的な感染拡大はみられていない。しかし、初動対応や給付金支払いの遅れなどには批判がある。安倍首相は国民の不安に鈍感、といった声も聞かれる。

<首相が握るワイルドカード>

安倍首相は今年、全く違う光景を思い描いていたに違いない。ホスト国の首相として東京五輪・パラリンピックを迎え、選挙で自民党を勝利に導き、もしかすると党総裁の任期を延長できるかもれない、と。そのバラ色のシナリオは、新型コロナの感染拡大で五輪延期が決まった3月に崩れ始めた。

日本のメディアが5月末に実施した世論調査の中には、内閣支持率が30%を切るものが2つあった。危険水域とされる水準だ。今月5━7日に日本経済新聞が行った調査では、支持率が前回から11ポイント減の38%に低下した。

安倍首相にはワイルドカードがある。事態を打開するため、解散総選挙に打って出るという手だ。党内からは、あり得ないが排除もし切れないとの声が聞かれる。安倍氏は首相として、5回の国政選挙で党を勝利に導いている。「安倍政権は解散風を吹かせないと持たない」と、与党幹部は指摘する。

安倍首相のもう一つの味方は、ライバルが弱いということだ。「政権を交代してほしいが、次に総理になってほしい候補者も別にいない」と、都内に住む26歳の翻訳家は話す。

首相は18日の会見で、「国民の信を問うべき時が来れば、解散を断行する」と語った。

(取材協力:宮崎亜巳)

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