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ベストの教育なんてない!「フレネ教育」の心意気

大阪府箕面市でフレネ教育を行う「箕面こどもの森学園」の木工部屋

拙著『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方最強の教科書』のなかから、今回はフランスのヴァンスで生まれた「フレネ教育」を紹介します。現在フランスの公立学校の約1割がフレネ教育を取り入れています。実践例は世界38カ国に広がっています。

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これからは正解がない時代だと言われて久しい。特にいまは、新型コロナウィルスの出現で、数カ月先すら見通せない状況になっています。

教育の現場でも日々試行錯誤が続いています。しかしともすると、その議論自体が「正解がない世の中で、どんな教育をするのが正解なのか?」という正解主義に陥りがちです。

しかしセレスタン・フレネは違いました。世界的に有名な「フレネ教育」の創始者ですが、実は彼自身が「これがベストの教育」「このような教師がベスト」というような正解を示すことはありませんでした。

「フレネ教育」という呼び方も、本人はお気に召してはいなかったようです。教育の方法が固定化されたり、教師がカリスマ化されたりするのを嫌ったのです。

有名なモンテッソーリ教育やシュタイナー教育が1つの教育体系であるのに対して、フレネはあくまでも教育技術としてさまざまなテクニックを提唱しました。レストランのお料理にたとえるならば、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育はコース料理です。

それに対してフレネ教育はアラカルト料理のメニューみたいなものです。

要するにフレネ教育とは、さまざまな現実に応じて教師個人が誰でも部分的に取り入れることができる創意工夫のアイディア集みたいなものなのです。

有名なテクニックの一つが「自由作文」です。日本の学校でも自由なテーマで書く作文を自由作文と呼ぶことがありますが、それとは違います。フレネ教育の自由作文は、自由なスタイルで書く作文です。

フランスでは3歳から義務教育が始まります。当然ちゃんとした文章なんて書けません。でも作文するのです。先生が手助けしながら、頭のなかにあるものを何でもいいので、紙に書きます。文字が書けなければ画を描いてもかまいません。絵に一言説明を添えれば、それが立派な自由作文です。

文字や文法の間違いをいちいち指摘して「正しい国語」を教えるのではなく、子どもの自発性を前提にした表現教育です。お互いの作文を読んだり、発表し合ったりして感想を交換したり批判し合ったり、印刷して配布して教材にしたりもします。

時間割も自由度が大きい。一斉授業のようなものはほとんどなく、いわゆる「よみ・かき・そろばん」的なことに関しては、ほとんど個別学習の形式で進めます。

2週間に1度、子どもたちは各々に「学習計画表」を作成し、それ従って自分のすべきことを進めるのです。異学年が同じ教室で学ぶのもフレネ教育の特徴です。

個別学習で基礎学力を担保しつつ、教科の枠組みを超えた「自由研究」にも多くの時間を割きます。各自が自分の興味に従ってテーマを決めて探究するのです。自由研究の成果は、「コンフェランス」と呼ばれる学校内の「学会」で各自が発表します。

フレネ教育では木工や編み物などの「手仕事」も教育の一部だと考えます。フレネは「頭でっかちより、格好良い頭と何でもできる器用な手を」という言葉を残しています。「散歩教室」など実感を伴う学びを大切にしました。

実はフレネは思想的にはかなり左寄りの反戦活動家でもありました。ファシズムに強い嫌悪を抱いていた人物です。そこでフレネは民主主義市民の育成にも力を入れます。フレネ教育の学校では「生徒集会」が重要な役割を果たします。学校の様々なことについての意思決定を行う直接民主主義の場です。

フレネは学校を、単に子どもたちの才能を伸ばすだけの場ではなく、健全な民主主義社会を支える成熟した市民を育成する場ととらえていました。そのために学校を、理想の社会のミニチュアモデルにしようと発想したのです。「現実社会の厳しさやルールをたたき込む」というのとは逆の発想です。

どちらの発想が「正解のない世の中におけるニューノーマル」を実現するのにふさわしいかは、明らかではないでしょうか。

※2020年6月18日にFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」にて話した内容の書き起こしです。

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