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北朝鮮の“怒り”に韓国は狼狽? それぞれの政権の将来に不安要素も… 講談社特別編集委員・近藤大介氏


 北朝鮮の朝鮮中央テレビは17日、開城の南北共同連絡事務所を爆破する映像、そして「すさまじい後悔と絶望を感じているはずだ」「我々を止めることはできない」と話す平壌市民の映像を放送した。さらに同日、朝鮮中央通信が非武装地帯への軍の配備や軍事演習の再開を予告する軍幹部の談話を伝えている。

・【映像】朝鮮中央テレビが放送した爆破の瞬間映像

 北朝鮮側が爆破の理由としているのが、韓国の脱北者団体が先月、北朝鮮に向けて金正恩委員長を批判するビラを飛ばしたことへの報復だ。

 中国や朝鮮半島情勢に詳しい講談社特別編集委員の近藤大介氏は「まず、文在寅政権への強い怒りがあると思う。去年2月にハノイで開かれた金正恩委員長とトランプ大統領の2度目の首脳会談は、文在寅大統領が仲介して実現したものだが、トランプ大統領には“北朝鮮は何でも言うことを聞くから”というようなことを言い、金委員長には“トランプ大統領は再選したいだけだから適当なことを言っていれば大丈夫だから”と言って会わせた。私が聞いているところでは、金正恩委員長は行きたがらなかったが、金与正氏が“文在寅大統領は信用できるから大丈夫”だと背中を押したという。しかし交渉は決裂、金委員長も与正氏もメンツが潰れてしまった。これに対する怒りが限界に達したということだと思う」と推測する。


 にわかに存在感を増す、金正恩委員長の妹・金与正氏。中国は北朝鮮間のパイプ役として、かつての張成沢氏のような存在にしたいという思惑があるのだという。

 「ハノイの会談の結果、昨年12月まで失脚させられてしまった与正氏には“文在寅に騙された”という気持ちがあったのだと思うし、軍の歓心を買い、権力を掌握するための“箔づけ”という意図での爆破だったのだと思う。加えてアメリカはコロナ問題、人種問題と国内に精一杯で構ってくれないので、アピールする意味もあったのではないか。ただ、金与正氏は経験が浅いので、李善権外務大臣とペアで動いていくことになるのではないか。中国としては金正日総書記の時代、中国は金総書記の義理の弟に当たる張成沢をパイプ役にしていた。しかし金正恩委員長の時代になり、2013年には処刑されてしまった。そこで与正氏をパイプ役にすれば、金委員長と意思疎通も抜群だ」。

 かつては“南北融和の特使”“ほほえみ外交”とも報じられた与正氏だが、今回は南北融和の道を説いた文大統領の演説に対し、「嫌悪感を禁じ得ない」「北南関係の停滞が外部の要因にあるかのように言うのは鉄面皮で図々しい詭弁だ」と反発、文大統領からの特使派遣の提案についても「不純な提案を許可しない」と一蹴している。韓国大統領府は「ひどく無礼な語調でけなしたのは非常識な行為だ」と反応、国防部も軍事合意を破棄する予告に対し「実際に行動に移す場合、北は必ずそれに対する代価を支払うことになるだろう」と警告した。


 一方、近藤氏は北朝鮮問題を担当する金錬鉄統一相が辞意を表明するなど、韓国政府の混乱ぶりも伺わせると話す。

 「15日は初めて南北が首脳会談を開いて共同宣言を出してから20周年の日なので、文在寅大統領はこれを祝おうとした。しかし、それどころではないということだ。大統領府、国防部、統一部の3つが共同で声明を発表するのは3年1カ月になる文在寅政権で初めてのことだ。“もうどうしていいかわからない”、それくらい動揺を隠せない状況だと思う。会見での金錬鉄統一相の様子も“誰かが責任を取らないとダメだから私が取る”と肩を落としていた。国内では国会も揉めているし、大統領選挙まで2年を切っている。おそらく今回の爆破をきっかけに、与党・共に民主党が割れ、文在寅支持のグループと、次の大統領を狙う李洛淵・前首相のグループに割れてくるのではないか」。


 北朝鮮は南北の緊張を一層高めるかのように、開城工業団地と金剛山観光地区への部隊の展開、非武装地帯内の監視哨所再設置、黄海での軍事演習再開を表明している。ただ、国連制裁による経済的困窮や、2023年には外貨が枯渇する可能性も報じられている。また、新型コロナウイルスが朝鮮人民軍内でも拡大しており、中国と検査キット5000個や防護服、食料、化学肥料、石油の援助受け入れ、収束後の観光客受け入れの約束を交わしているという。

 近藤氏は「昨年末から方針を転換していて、核開発をもう一度やることにしているし、中央軍事委員会の拡大会議でもその意思決定をしたばかりだ。先月2日に金正恩委員長が肥料工場の竣工式に出席しているが、実はウランの精製工場ではないかとも言われている。やあり追い詰められれば追い詰められるほど、核とミサイルに頼るしかないのが北朝鮮だ。一方、今回表明したことは実行に移すのだろうが、これは軍を動員した田植えが終わったからであって、偶発的なもの以外、軍事衝突は起きないと思う。やはり国連制裁とコロナウイルスの影響で余裕はないし、今は食料も厳しい時期だ」と説明。

 「金正恩委員長が体調不良で倒れるなど、何か起こった場合には与正氏が継ぐことになると思うが、果たしてうまくいくのかどうか。傀儡のようになったり、軍がクーデターを起こしたりする可能性もある。また、120万人の朝鮮人民軍に食料が与えられない状況になりつつある。例えば北朝鮮最大の貿易港・羅先も新型コロナウイルスによって閉鎖され、貿易ができない状況だ。北朝鮮は中国との貿易が9割以上を占めていたが、1月末から国境を封鎖している。特に春から夏が食糧事情が一番厳しいと言われているが、今年は数十年に一度のレベルになると言われているようだ。地方で反乱が起きれば、中央の決起にも繋がる。過去にも同様の動きや、金正恩委員長の暗殺未遂のようなことも起きているので、不穏な情勢になっていく可能性もある」とした。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:朝鮮中央テレビが放送した爆破の瞬間映像

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