記事

自粛生活の中で洗い出された問題点は、より良い学びや働き方のための貴重なデータです - 「賢人論。」第115回(前編)水無田気流

1/2

新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とする緊急事態宣言の発出以来、世の中の様相は一変した。社会生活様式における新ルールが次々生まれ、これまで一部で導入されていた“テレワーク”や“リモートワーク”も一気に広まることとなった。今回、「賢人論。」もリモートインタビューを実施。「社会学は人の気持ちを取り上げる学問」と語る水無田気流氏(みなしたきりう/國學院大学経済学部教授)にご協力をいただいた。テーマは「新型コロナ危機がもたらしたこと」。この経験を“新しい未来”につなげるために、私たちは何を見つめ直し、どのような心構えで臨むべきなのかを伺った。

取材・文/木村光一

リモートの導入は“私的インフラ”の整備が課題

みんなの介護 東京では3月末から不要不急の外出に対する自粛要請が出ていました。それから5月25日の非常事態宣言解除に至るまでの約2ヵ月間、水無田さんはどのように過ごされていましたか。

水無田 私と夫は在宅勤務、4月から中学に入学した息子も遠隔授業を受けています。家の中で3人がヘッドセットを着けてパソコンに向かっている光景は、まるでディストピア小説みたいでちょっと不気味でした(笑)。

みんなの介護 水無田さんは國學院大学で教鞭を執っておられますが、リモートによる遠隔授業は経験されたのでしょうか。

水無田 はい。このインタビューの後にも行うことになっています。実際にやってみて思ったのですが、遠隔授業はインターネット環境や必要スペースの確保などの私的インフラの整備が前提なので、まだまだ誰もが簡単にやれる状況ではありませんね。
画面に映り込んでしまう背景や生活音などのプライバシーにも気を使わなければなりませんから。

自粛生活は埋もれていた問題や働き方を見直すきっかけになった

みんなの介護 対面授業にはないメリットはありましたか。

水無田 少人数のゼミ形式の授業は、画面上の学生の反応を見ながらやれるので、お互いの接続環境さえ整っていればそれほど問題はありません。でも例えば、300人の受講生を相手にする授業などは、実際に行ってみると問題も多々ありました。人数が多くなれば受講環境も自ずと多様になるので、音声の大きさや動画資料の受信状況など、毎回学生に問題の有無を確認しつつ、手探りで調整を繰りかえしています。

そもそも、基本的に学生の側にはミュート(消音)にしてもらわないと参加者全員の生活音が入り混じって収拾がつかなくなります。

とはいえ、対面授業とは異なり、反応もなく受講生の理解度を測らないまま授業を続けていくことはできませんので、毎回レポートやリアクションペーパーをネット送信してもらうようにしました。すると、対面授業のときよりも、学生が授業の内容をどのくらい理解したのかが把握しやすくなりました。言葉で具体的にフィードバックをしてもらうことで、それまでわかっているだろうと思っていたことが、意外に理解されていなかったことにも気づくことができました。

また、学生たちがどういう点に疑問を抱いたのかも把握できて、授業そのものを見つめ直す良い機会になっています。今後、対面授業に戻っても、ここで得た経験はより良い授業を行ううえで貴重なデータになると思います。

ほかにも、これは他業種でも多くの方が指摘されていますが、これまで私たちは、例えばオンラインなら簡単に済ませられることを、会議で何時間もかけて決めていた…などという無駄にも気づかされました。もちろん、対面による討議を通じて見えてくる問題もあり、オンラインで行うことが最適解とは言い切れません。それでも、必ずしも必要ではないことを洗い出すきっかけにはなりました。

また、既婚女性にとって長時間勤務がネックになっていた業種などでは、今回のリモートワーク導入によって就業継続がしやすい状況となったと思います。

みんなの介護 社会全体の働き方改革を推進する意味では有意義だったと。

水無田 はい。そのように捉えています。

あわせて読みたい

「日本社会」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    GoToなぜ今か 政府は説明すべき

    青山まさゆき

  2. 2

    中国ダム決壊危機 世界的影響も

    郷原信郎

  3. 3

    れいわ10万円配布案の効果に疑問

    猪野 亨

  4. 4

    松坂大輔が離脱へ 晩節汚すのか

    WEDGE Infinity

  5. 5

    発展に疲弊 シンガポールの若者

    後藤百合子

  6. 6

    感染拡大の裏に軽率さ 医師警鐘

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    党規約が緩すぎるれいわ新選組

    田中龍作

  8. 8

    コロナ楽観予測報道はミスリード

    勝川 俊雄

  9. 9

    西村大臣 PCR陽性率は約5%に低下

    西村康稔

  10. 10

    河野大臣「朝日社説は誤解招く」

    河野太郎

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。