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学校再開で確認したい通学路の危険 子どもを犯罪に巻き込ませないために注意すべき場所とは

6月に入り、緊急事態宣言解除に向けて学校再開時期を検討していた、東京都と神奈川、埼玉、千葉の3県、北海道の小中学校で授業が再開された。

新型コロナウイルスの感染予防としては、登校時間を午前と午後に分ける分散登校、登校時のアルコール消毒、教室内の換気など対策が取られている。新学期が始まってから初の登校となり、とくに新入生にとっては、通学や学校生活に戸惑いもあるのではないか。

都内で学校が再開した6月1日、登下校中に子どもが知らない男性に声をかけられた、手を引っ張られたといった被害報告が相次ぎ、警視庁は注意を呼びかけた。店舗の営業自粛や在宅勤務がまだ続いている場合や、登校時間の分散によって、大人の眼が少なくなっていることも懸念されている。

子どもが安全に登校するためには、通学路で危険な場所になり得る箇所の把握が必要となる 。通学中に犯罪に巻き込まれることを回避するため、知っておくべき通学路の危険について、犯罪学が専門の立正大学文学部社会学科・小宮信夫教授に話をきいた。

「危ない人」は見た目だけではわからない

写真AC

――外出自粛ムードや社会人の在宅勤務が続き、屋外で人の眼が減っているのではないかと思います。このような状況下では、犯罪の増加が懸念されますか。

防犯学では「犯罪機会論」という考え方が、グローバル・スタンダードです 。簡単にいうと、「犯罪機会論」 とは、「犯罪が起こりやすい場所」に注目する立場です。しかし、「犯罪機会論」は、日本では全くと言っていいほど知られていません。

日本で主流なのは、「犯罪を起こしやすい人」に注目する「犯罪原因論」ですが、「危ない場所」は見ただけで分かりますが、「危ない人」は見ただけでは分かりません。

そもそも、「いかのおすし」 (※)という子ども自身が犯罪から身を守るための防犯標語も、犯罪原因論に基づくものです。しかしながら、その一つ「知らない人についていかない」は、千葉県松戸市でベトナム国籍の女児が殺害され、犯人が「知っている人」だったことが報道されてからは、説得力を失いました。

今回の学校再開を「犯罪機会論」の視点からみると、分散登校、外出自粛、在宅勤務は、子どもに対する犯罪、特に誘拐と性犯罪の機会を増やしていることになります。なぜなら、「見えにくい時空間」を創出しているからです。

※子どもの連れ去り事件を防ぐため、平成16年に東京都が打ち出した防犯標語。「ついて"いか"ない。車に"の"らない。"お"おごえをだす。"す"ぐにげる。おとなの人に"し"らせる」の5つの注意点から作成された。

人が大勢いる場所でも時として「見えにくい場所」になる

――通学路において、とくに注意すべき危険な場所は、具体的にどのような場所ですか。

危険な場所は、「入りやすく見えにくい場所」です。例えば、ガードレールが設置されていない道路は、車に乗った犯罪者が歩道に「入りやすい場所」であり、両側に高い塀が続く道路は、家の中から子どもが「見えにくい場所」です。

柵で囲まれていない公園は、だれもが「入りやすい場所」であり、うっそうと茂る草木に囲まれた公園は、周囲のだれからも「見えにくい場所」ということになります。

田畑に囲まれた道路や建物の屋上は、死角になる部分がないので、一見安全そうに思えますが、周囲からの視線が届かないので、やはり「見えにくい場所」となります。

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こうした物理的な視点だけでなく、心理的な視点も重要です。例えば、落書き、公共物の破壊、不法投棄、捨てられた車、廃屋といった街の無秩序のサインが見つかった場所は、犯罪者が警戒心を抱くことなく近づけるので「入りやすい場所」です。

また、そのような場所は、地域住民から関心が寄せられていないので「見えにくい場所」でもあります。

駅前広場やショッピングモールは、人が大勢いるので、一見安全そうに思えますが、人は外的刺激が多ければ多いほど異常な事態に気づきにくくなり(いわゆる選択的注意)、たとえそれに気づいたとしても、その場に居合わせた人が多ければ多いほど援助行動を起こしにくくなる(いわゆる傍観者効果)ので、やはり心理的に「見えにくい場所」となるので注意が必要です。

安全と危険は「景色」で判断すべきだ

――通学中の危険を回避するためには、どのような行動、手段が考えられますでしょうか。親や子ども、地域にできることがあれば教えてください。

警察庁の調査によると、子供が誘拐された事件の約8割は、むりやり連れて行かれたのではなく、犯人にだまされて自分からついていったケースです。

したがって、子どもを被害者にしないために最も必要なのは、大声で叫んだり、走って逃げたりする練習ではなく、どうすればだまされないかを教え込むことです。

だまされないためには、絶対にだまさないものを見るしかありません。それは、場所の景色です。景色の中で安全と危険を識別する能力のことを、「景色解読力」と呼んでいます。

景色からのメッセージをキャッチできれば、危険を予測し、警戒レベルを上げられるので、だまされずに済みます。道徳教育で言われているように、「人は見かけで判断するな」を基本にしつつも、「人は景色で判断しろ」ということです。

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こうした景色解読力を高める簡単な方法が、「地域安全マップづくり」です。地域安全マップとは、犯罪が起こりやすい場所を、風景写真を使って解説した地図です。地域安全マップは、(だれもが/犯人も)「入りやすい場所」と、(だれからも/犯行が)「見えにくい場所」を洗い出したものです。

ただし、マップづくりとは言うものの、実際には能力の向上という「人づくり」であって、正確な地図の作製という「物づくり」ではありません。なぜなら、犯罪者は地図を見ながら犯行場所を探しているのではなく、景色を見ながら犯行を始めるかどうかを決めているからです。

同様に、子どもたちも、地図を見ながら学校や友達の家に行ったりはしませんが、景色はいつも見ています。つまり、安全と危険は、地図の中ではなく、景色の中で判断すべきものなのです。

新型コロナウイルスへの不安がなくならない中、学校が再開された。子どもたちを犯罪に巻き込まないためにも、いま一度、通学路の危険な場所を親子や地域で確認してみてほしい。

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