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コロナ禍を受けて『大阪2020住民投票』は実施すべきでない 5つの理由<後編>

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 4月に予定されていた出前協議会(市民を集めてオープンに開催される法定協議会)は、緊急事態宣言が出されていたにも関わらず5月に再設定され、緊急事態宣言が延長される感染状況を受けて結果として中止となった。例え、緊急事態宣言が5月6日で解除されていたとしても、5月10日や12日の開催は非現実的であった。この時にも、都構想に賛成している市議の中にも5月開催は現実的でないとの声はあった。

 今も、都構想に賛成する大阪市民にも、11月の住民投票はすべきでないと考えている人は少なからず存在する。そして、11月の住民投票をすべきでないと考えている都構想に反対する大阪市民より以上に賛成する大阪市民の方が「コロナによる影響」を「11月に住民投票をすべきでない」理由と考えているという調査結果がある。

 もし、吉村知事や松井市長が「コロナ対策に専念すべきであり、住民投票は自身の任期内には必ず実行するが、今しばらく様子をみたい。」と発言すれば反対するものはいないだろう。反対はできないだろう。都構想に賛成している市民以上に、都構想に反対している市民の共感をよび、頑なに都構想に反対する市民の翻意を促すことになるかもしれないとすら感じる。

コロナ禍を踏まえて『大阪2020住民投票』は延期すべきである。

 都構想に賛成されている方々の方が、そのように考えてもおかしくないのではないだろうか。

(5)恒久的な府市一体を導く制度改正に、緊急性はない
 コロナ対応で、大阪は府市一体であることが評価されていると言われる。私自身も4月だったか、マスコミの電話調査に対して、吉村知事のコロナ対応を評価しますか?の問いに「評価する」と答えた。この評価についても様々な意見はあるが、評価が高いのは事実であり、松井市長などは府市一体でコロナ対応ができたからこそ評価されていると発言されておられる。

そこで、仮に、属人的に府知事・大阪市長が同じ方向を向いていることが評価されるべき状況にあって、素晴らしい体制であるとしよう。少なくとも、あと3年はその素晴らしい状態が続く。そして、その素晴らしさが継続して府民・市民の目にさらされていれば、3年後の府知事・市長選挙も当然府市一体で取り組む首長が誕生するはずである。

 すなわち、短期的に府市一体の体制が崩れることはないのである。都構想は、属人的に府市一体である状態を恒久的な制度として確立するものであると言われる。今は、初期費用0円でバーチャル都構想が実現している。有効期限は決まっているが選挙で更新が可能な状況だ。住民投票を行って都構想を実現するとなれば、初期費用(イニシャルコストは)241億円がかかる。コロナ禍において、同じ効果が得られるのであれば、先んじて貯金を食いつぶして費用をかける必要はない。

 しかも、この3年は維新は単独で法定協議会での過半数を持ち、公明党を拘束しながら住民投票の実施が揺らぐ事はない。そもそも、前回の住民投票から5年が経ち、これがコロナ禍の影響で仮に住民投票が来年になっても、住民に大きな不利益になるとは考えられない。寧ろ、今やることによる弊害の方が大きいのではないだろうか。

 今、急いでやろうとしていることは、市民がコロナ禍で関心を持てていない間に、マヤカシがばれないようにやりたいと見えてしまう。コロナ禍のどさくさに紛れて粗を隠そうとしているようにも見える。真にホントの都構想が良いものであるのならば、堂々とコロナ禍の影響を踏まえた数値を勘案して、議論を深めて、市民に分かりやすい説明ができる状況を作った上で、住民投票をすれば良い。


コロナ禍の影響で中長期の財政シミュレーションなども大きく変わる
(3)コロナ禍を受けての社会経済情勢の変化を踏まえての議論が全くされていない

 大阪市を廃止分割して特別区を設置する、いわゆる大阪都構想は、1つの大阪市を4つの特別区に分割することから分割コストというものが生じる。新たな庁舎を建設しないとした場合でも、イニシャルコストは約241億円かかると試算されている。一方、大阪市の事業が府に移管されることによる、いわゆる統合効果のコスト減は明確には示されていない。

 分割コストの負担があることに対して、特別区が本当に住民サービスを維持できるのかということが都構想議論において一つの大きな論点となってきた。不安を払拭するべく示されてきたのが財政シミュレーションである。大阪市における中長期の財政見通し(粗い試算)を活用して、特別区の中長期の財政シミュレーションを示し、収支不足が長期的に生じないということ理由として「特別区においても財政が成り立つ」と副首都推進局・当局は主張してきた。

「特別区設置における財政シミュレーション」…第14回大都市制度(特別区設置)協議会資料

 今般のコロナ禍を受けて、自治体の税収は大幅に落ち込むことが予想される。そして、その落ち込みは1年だけのものではなく、中長期的に大きく影響をするものと考えなければならない。

 中長期の財政見通しは、何が起こるか分からない中でのひとつの試算でしかないが、今、目の前にコロナ禍の影響が一定顕在化していることを考えれば、当然、今時点の財政見通しを反映させた上での特別区の財政見通しを提示するのが真摯な対応である。現状の財政シミュレーションは2018年(平成30年)2月の粗い試算を活用しており、毎年夏頃に国において示される試算のベースを元に、改めて粗い試算をはじき出し、その試算で各特別区の財政シミュレーションが示されるべきである。

 本来は、大阪府や大阪市も事業のあり方すべてが再検証されてもおかしくないぐらいの100年に一度と言われるコロナ禍の影響である。事業が見直されれば、大阪市における広域と基礎の事業の配分も変化し、財政調整の考え方にも影響を及ぼすものと考える。ただ、そこまでの再計算を求めるとなれば2,3年の実態把握が必要となることから、そこまでは求めない。

 しかし、少なくとも来年度に向けての財政見通しぐらいは反映させなければ、特別区の財政が成り立ち、住民サービスが維持されるという根拠が失われている状態だということになる。


(4)区割りなど協定書(案)にも影響があるし、感染症対策のあり方などについて議論を深めておく必要がある
 財政シミュレーションそのものは協定書への必須記載事項ではないが、記載事項である「区割り」に対しても少なからず影響を与えるものである。特別区設置にあたって重要な「区割り」についても、コロナ禍の影響を受けて改めて検証する必要が出てくる。「区割り」は、区の名称や、区庁舎の位置や職員体制など全てに影響するものであることから非常に重要だと言わなければならない。

 特別区制度案に記載されている様に、区割りは財政の均衡化を最大限考慮するとしている。また、人口についても将来格差が2倍以内におさまることを念頭においている。
特別区制度(案)…区割りの基本的な考え方
 コロナ禍の影響による財政の増減は、現在示されている4特別区の財政の均衡を不均衡にするかもしれない。また、人口の大きな変動を導くかもしれない。歴史的経過やコミュニティーなどを重視した区割りであれば、普遍的であることから区割りの変更の必要性は生じない。

しかし、コロナ禍で大きく変わり得る事象を元に区割りをしている以上、コロナ禍の影響がどのようになるかは検証が必要である。住民投票の結果、特別区が設置されたもののコロナ禍の影響で財政的に大きな不均衡が生じたからと言って、区割りを変更するのは至難の業となる。
 
 また、今般の新型コロナウイルスのような感染症対策について、現状の大阪府と大阪市の体制から特別区が設置されて大阪府と4つの特別区になった時に、どのような事務分担の変更が生じ、人員体制も含めた役所体制がどうなるかについても、法定協議会で議論がなされた経過はない。大阪市の保健所は現在1つであるが、4つの特別区にはそれぞれ設置されるとのことである。

保健所数の増加は体制の強化のように見えるが、保健所業務の質や連携のあり方も含めて今日的に確認しておく必要がある。現状の大阪市には、1つの保健所のブランチとして5つの生活衛生監視事務所がある。特別区が設置された時に、5つの生活衛生監視事務所は4つの保健所に統廃合されると考えられるが、その点などは全く法定協議会の議論では触れられてもいないのだ。

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