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コロナ禍を受けて『大阪2020住民投票』は実施すべきでない 5つの理由<前編>

コロナ禍を踏まえて『大阪2020住民投票』は延期すべきである。

大阪市を廃止分割して特別区を設置する、いわゆる「大阪都構想」の是非を問う住民投票は以下の5点において、予定される今年11月実施に向けてのスケジュールで行われるべきではないと考える。

(1)未だ市民理解を深める十分な活動ができる環境ではない
(2)住民投票にかける人・金・時間は、コロナ対策に今は使うべきである


コロナ禍の影響で中長期の財政シミュレーションなども大きく変わる
(3)コロナ禍を受けての社会経済情勢の変化を踏まえての議論が全くされていない
(4)区割りなど協定書(案)にも影響があるし、感染症対策のあり方などについて議論を深めておく必要がある

(5)恒久的な府市一体を導く制度改正に、緊急性はない


<前編>では、(1)(2)について説明したい。


(1)未だ市民理解を深める十分な活動ができる環境ではない
 特別区設置を問う住民投票は、大都市地域に関する特別区の設置に関する法律(以下、大都市法)に基づいて行われるため法的拘束力のある住民投票と言われることもある。
 大都市法の第7条2項には次のように記されている。
「関係市町村の長は、前項の規定による投票に際し、選挙人の理解を促進するよう、特別区設置協定書の内容について分かりやすい説明をしなければならない。」
2015年の住民投票に至る過程においても、法定協議会にて「分かりやすい説明」をどのように行うのかということについては一定議論があった。当時の橋下大阪市長は、住民投票の告示までの間に、1日3回13日間にわたり39回の住民説明会を設定した。そして、大阪市民を対象として280人~1400人定員の各会場で説明会は開催され、最終のべ3万人に及ぶ参加があったとされる。予定された会場は定員をオーバーして溢れかえり、別会場にモニターを設置したという話があったことも記憶している。説明会の内容が適切であったかの議論はここでは控えておくが、市民説明に力を注がれた橋下市長には敬意を表しておきたい。

 緊急事態宣言が解除されたとは言え、ワクチンや特効薬が開発されていない中で、日本でも「コロナとの共存」が求められており、新しい生活様式に基づいて社会経済活動が徐々に再開されているというのが現状である。そんな中で、数百人の市民に集ってもらう説明集会の開催は不可能だ。

「ネットで配信して見てもらうこともできる」という意見もあるだろう。当然、ネットなど様々な広報媒体を活用することが求められるが、ネットを見る層・見られる層は限られている。「分かりやすい説明」をすることが困難である現実を受け止めなければならない。
 
 また、「分かりやすい説明」は説明する側のアリバイ作りであってはならない。説明される側である市民が関心を持ち、理解を深められる環境を整えることが重要だ。ところが、今、市民は都構想どころではないというのが現実ではないだろうか。

感染拡大については、大阪市内では一定の落ち着いた状況が見られるとは言え、7月8月の催事の中止、学校の夏休みも短縮、失業や生活困窮、新たな事業手法の展開や新たな地域活動の展開など・・・目の前の生活再建に忙殺されている人がほとんどである。住民投票に向けての説明に耳を傾けて頂くような環境では到底ないことは誰の目にも明らかだ。

 各級選挙がこの間も実施されているように、投票行動を行ってもらうだけであれば、様々な工夫によって対処はできるだろう。しかしながら、関心を深めて頂いた上で「分かりやすい説明」を経ての住民投票は不可能なのではないだろうか。

 可能だと言うのであれば関心を喚起できている証明として、前回の投票率67%と同じレベルに達せずとも投票率50%を越えなければ当該の住民投票を無効とする条例を別途制定するぐらいのことを合わせてすべきである。

(2)住民投票にかける人・金・時間は、コロナ対策に今は使うべきである
 2015年の住民投票に至るまで約32億円もの税金が使われたと表現されることがある。民主主義のコストとして、許容されなければならないのかもしれないが、可能な限り税金は効率的・効果的に、その時々に真に必要な施策に投じられなければならない。

 住民投票そのものの費用は約6億円超であるが、そこに至るまでも当然別途費用がかかるし、その準備に職員も手を取られ、時間も費やすことになる。また、住民投票で大阪市の廃止と4分割されての特別区設置が決まれば準備に向けて設置コストが生じる。最終的に4特別区における区庁舎を建設するという前提で約1300億円の費用が最低でもかかることが示されている。

 一方で、コロナ支援策として、国や府、市において様々な支援制度が示されているが、マンパワーが足りていない等もあって、その支給が遅れていることが報道されている。相談窓口となる電話がつながらないという苦情も未だに少なくない。更には、現状の支援制度に加えて、新たな支援も必要ではないかという話も出てきている。

外出自粛や休業要請が解除されたからといって昨年までのような社会が戻ってくるわけではなく、新しい生活様式に向けての様々な対応が求められるからだ。その過程において、新たな失業や生活困窮といった実状も現れ始めている。自粛から自衛と言われるように、第二波がくるかもしれないことを想定しながら、リスクを最小限に抑える備えを誰もが考えなければならない。

 大阪府や大阪市といった自治体も例外ではない。これまでの事業の見直しや予算の組み替えも9月議会に向けて進める必要があり、同時に役所の窓口体制や3密を控える業務のあり方を再構築していかなければならない。

 今、住民投票に人・金・時間を費やしていて良いだろうか。そこに人・金・時間を使う優先順位は、コロナ対策より高いのだろうか。考えて頂きたい。

 住民投票に使う6億円があれば、別の支援策が打てるはずである。住民投票の準備に従事する職員、副首都推進局の職員84人、全員今年度はコロナ対応にシフトしても良いのではないだろうか。一刻も早い支援を待つ市民がいる。その市民に対する支援が少しでも早く届くように力を注ぐ時なのではないだろうか。

 コロナ対策だけをやれば良いと言っているわけではない。(1)~(5)の理由を総合的に考えれば、当然、住民投票に費やす人・金・費用は、今この時は(せめて今年度は)コロナ対策に傾注すべきだという答えになる。

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