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元経産省職員が解説「霞が関が"丸投げ委託"を続ける根本原因」

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中小企業などに最大200万円を支給する「持続化給付金」の事業をめぐり、外部委託を繰り返す仕組みが国会で問題視されている。元経済産業省職員の高辻成彦氏は「委託事業は補助金制度と異なり、委託先を担当の職員が自由に決められる。担当者は委託先を客観的に選ぶべきだが、以前から親密だったことが報じられており、問題がある」という――。

参院予算委員会で答弁する中小企業庁の前田泰宏長官(右)。後方左上は梶山弘志経済産業相=2020年6月11日、国会内 - 写真=時事通信フォト

委託先との親密さを疑われても否定できない制度的要因

6月11日発売の週刊文春は、持続化給付金事務事業を担当する中小企業庁の前田泰宏長官が2017年、アメリカで開いたパーティーに、この事業の委託先であるサービスデザイン推進協議会の業務執行理事を務める平川健司氏(当時・電通社員)が出席していたと報じた。

前田長官は当時、大臣官房審議官という幹部の立場にあった。米テキサス州で開かれた企業関連のイベントに参加し、近くのアパートを借りて平川氏らとパーティーを開いたという。前田長官は11日、参院予算員会に出席して事実関係を認めた。

持続化給付金事務事業をめぐっては、事業者に対する入札前のヒアリングを行った点にも批判が集まっている。入札前の経済産業省担当者と、入札関係者との面談時間は、サービスデザイン推進協議会は3回で3時間に対して、デロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー合同会社は1回で1時間だったことも報じられた。

経済産業省のルールでは、事前接触の際は各社に同等の時間を提供するよう求めているが、徹底されていなかった。

こうした報道が出れば、委託先との親密さが疑われ、国民の不信を招くのは避けられない。しかし、問題の根源は、委託事業の実施にチェック機能が働いていないことにあり、今後は外部有識者によるチェックが可能な体制を整備していく必要がある。

経済産業省には「委託」の選択肢しか無かった

そもそも何故、持続化給付金事務事業は委託事業だったのか。国の事業には大きく分けて、①直轄事業、②独立行政法人が実施、③地方自治体が実施、④補助金事業、⑤委託事業の5つのやり方がある。しかし、経済産業省は⑤委託事業という選択しかできなかった事情があると筆者はみている。

第1は、国が直轄で事業を扱うケースである。持続化給付金事務事業の場合、中小企業庁が自ら行うか、地方局である各経済産業局が行うやり方である。しかし、日本全国の売上減少の中小企業が対象になり得る。5月1日と2日に申請された件数だけでも約28万7000件もあり、人員上の制約からとても捌ききれない。

第2は、独立行政法人が実施するケースである。具体的には、中小企業基盤整備機構が行うやり方である。しかし、中小企業基盤整備機構自身が、中小企業経営力強化支援ファンドの立ち上げなど、新型コロナウイルス対策の事業を別途扱う事情から、難しかったとみられる。

第3は、地方自治体が国の事業を実施するケースである。国が本来、果たすべき役割の事業を地方自治体が担うものである。例えば、中小企業が国の保証付き融資を受けられるセーフティネット保証の認定事務は、市区町村の商工担当課が実施している。


また、新型コロナウイルス対応のために過去最大級の景気対策が必要だったことが、結果的にこの委託事業の設立を容易にしてしまった可能性がある。景気対策の金額を増やすために、新規事業を作らなければならなかった、ということである。新規事業を立ち上げて実施すれば、景気対策に取り組んでいる姿勢をアピールしやすい。

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