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アングル:世界で強まる消費者の倹約志向、コロナ後の回復に影


Mark John

[ロンドン 8日 ロイター] - 「エイミーズ・ハウスウェアズ」では、英国内の他の小売企業と同様、6月15日にロンドン市内の店舗の営業を再開すべく準備中だ。だが、同社のマイケル・クラーク氏は大きな不安を抱えている。

「顧客が経済をまったく信用せず、消費を控えるのではないか」

ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)措置の全国的な解除を前に、英国独立小売企業協会(BIRA)が行った調査に寄せられたクラーク氏のような不安は、杞憂(きゆう)とは言えないかもしれない。

世界のどの国でも、ロックダウン(都市封鎖)から解放された消費者たちは、以前よりも用心深く、倹約志向を強めている。景気が回復するとしてもこれがブレーキになり、各国政府・中央銀行は、新型コロナウイルス対策としての補助金に加えて、さらにコストのかかる刺激策へと踏み込んでいくかもしれない。

新たな倹約志向はさまざまな形で現われている。ロックダウン中に使わなかった現金を貯め込んでいる家庭もあれば、以前より安いブランドばかり購入する、あるいは必需品だけに購入を絞るという家庭もある。

消費需要に関しては他にもリスクがある。パンデミック(世界的な大流行)によって生計の手段を失った人はそもそも購買力が急落しているし、在宅勤務を続ける人が増える場合に支出パターンがどうなるかといった評価困難な要素もある。

中国ではロックダウンが緩和されたことにより、4月以降はショッピングモールに再び人が戻り始めている。分野によってはオンライン販売が急増したが、これは値引きや国が配布したクーポンが効果を発揮している場合も多い。

だが不要不急と見なされる品目については購入を控える流れが残っており、中国政府の期待とは裏腹に、個人消費が成長の柱として浮上するには至っていないようだ。

フィッチ・ソリューションズは6月4日のレポートで、「消費者は生活必需品の分野への関心を強めている」と指摘し、中国では今年の家計消費が落ち込むと予想。2020年の成長予測を、パンデミック前の5.6%から、わずか1.1%へと引き下げた。

<積み上がる貯蓄>

米国では、チョコレート大手のハーシーや歯磨きメーカーのコルゲートといった著名ブランドが、消費者の低価格志向を指摘している。これに対し、「(1ドル以下の商品を扱う)ダラー・ストア」は、2008ー09年の大不況後に見られたように、新たな顧客を迎え入れられるのではないかと期待している。

ダラーツリーのゲイリー・フィルビン最高経営責任者(CEO)は5月28日、「2008年には多くの人が職を失い、私たちに気づいてくれた。今年後半、そして2021年に向けて将来を展望するなかで私たちが予想しているのも、1つにはそういうことだ」と語った。

いま大きな要因となっているのは、ロックダウンによる最悪の影響を免れた米国の世帯が積み上げた多額の貯蓄がどうなるか、である。これによって米国では、所得に対する貯蓄率が過去最高の33%まで上昇している。

貯蓄率は今後下がっていくだろうが、大量の現金が経済に戻ってくることを期待しても裏切られるかもしれない。国際通貨基金(IMF)の研究者が2012年に発表した論文では、2008ー09年の大不況が始まった後、長引く不安感によって貯蓄率は高止まりし、経済全体としても消費・成長の低下につながったとされている。

さらに、オックスフォード・エコノミクスは、単発の税金還付が5月に終了し、パンデミック失業に対する補償も7月に打ち切られるため、米国の多くの家計が「所得の崖」に追い詰められようとしていると述べ、今年いっぱい、家計所得の減少が続くと予測している。

オックスフォード・エコノミクスは6月3日のノートで、「2021年に入ってもかなりの時期、これが消費支出の回復にとって制約要因となる可能性が高い」と述べている。

こうしたシナリオのもとでは、世界各国の政策担当者は、預金者に消費を促す措置を講じざるを得ないかもしれない。ロックダウン緩和の動きを加速し、さらに多くの経済支援策を提供し、マイナス領域も視野に入れてさらに金利を引き下げるといった動きだ。

同じジレンマは欧州にも存在する。欧州中央銀行(ECB)では、今年の家計の貯蓄率は19%まで上昇し、来年も高止まりすると予想している。ある出来事が行動に持続的な影響を与える場合に、エコノミストのいう「後遺症」が続くためだ。

フランスのルメール財務相は、需要拡大に向けた直接的なインセンティブを求めた。同財務相が来週発表する予算案では、家計が貯蓄を積み上げることにより、2020年は消費支出が10%低下すると予測している。

ドイツは今年下半期、消費推進のため、子どものいる家庭への現金給付と合わせて、付加価値税を引き下げることを発表している。

クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は4日、ユーロ圏の成長見通しを大幅に引き下げるとともに、国内需要への後遺症の深刻さが、今後の景気後退・回復の程度を左右する大きな要因の1つになる、と述べた。

ラガルド総裁は、「(ECB)理事会では、全体として、リスクバランスはダウンサイド(下降)であると見ている」と警告している。

(翻訳:エァクレーレン)

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