- 2020年06月11日 16:06
【冒頭コメント全文】「北朝鮮拉致問題は横田家の話ではない」 横田めぐみさんの弟2人が語った問題の難しさ
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6月5日に拉致被害者・横田めぐみさんの父である横田滋さんが87歳で亡くなったことを受け、9日に妻の早紀江さん、めぐみさんの弟で双子の拓也さんと哲也さんが会見を開いた。
会見の冒頭では3人がそれぞれ思いを述べ、哲也さんが拉致問題が進展しないことを安倍政権批判に利用するジャーナリストやメディアの姿勢に苦言を呈し、話題になっている。
※3人の冒頭発言全文は記事末に掲載
哲也さん「拉致なんてない、というメディアがあったから今苦しんでいる」

哲也さんは、北朝鮮の金正恩委員長について、2012年の就任時に“前の政権の悪行”を否定して生まれ変われていれば 、北朝鮮が国際社会に復帰して国民が豊かになると同時に拉致問題も解決できたと指摘。ウィンウィンの関係になれたのにもかかわらず、それをやらなかったとして「本当に愚かなリーダーだ」と非難した。
また一番悪いのは北朝鮮だと述べつつ、拉致問題をめぐる政権批判に異議を唱える発言に及んだ。
「この拉致問題が解決しないことに対して、あるジャーナリストやメディアの方なんかが『安倍総理は何をやっているんだ』というようなことをおっしゃいます。『北朝鮮問題を一丁目一番地で掲げていたのに、何も動いていないじゃないか』というような発言を、ここ2,3日のメディアで目にしておりますけれども、安倍総理、安倍政権が問題なのではなくて、40年以上も何もしてこなかった政治家や、『北朝鮮なんて』『拉致なんかするはずないでしょう』と言ってきたメディアがあったからここまで安倍総理、安倍政権が苦しんでいるんです。
安倍総理、安倍政権はやってくださっています。なので何もやっていない方が政権批判をするのは卑怯だと思います。拉致問題に協力して、様々な角度で協力して動いてきた方がおっしゃるならまだ分かりますが、的を射ていない発言をするのはこれからはやめてほしいと思っております」
国内には敵も味方もなく「日本対北朝鮮、被害者対加害者の構図しかない」として、協力を求めた。
拓也さん「北朝鮮が憎くてなりません」

拓也さんは 、2002年の日朝首脳会談で初めてめぐみさんが北朝鮮にいるということが分かると同時に、北朝鮮の“犯罪”を国際社会に知ってもらうことができたと振り返った。そして、手がかりなく25年間娘を探し続けてきた横田夫妻を含め自分たちは「早期にこの問題が解決するのではないかという淡い期待をもった」と明かす。
その後も18年間闘い続けてきたが、めぐみさんとの再会が叶わないまま滋さんが亡くなったことには無念さをにじませ、落ち着いた口調ながら北朝鮮への憤りをあらわにした。
「父はめぐみの写真を撮るのがとても大好きでしたから、よく報道でも過去の写真を使っていただくことが多いわけですが、よく言われるように目の中に入れても痛くない、それほどかわいがっていた姉とどれだけ会いたかっただろうと思うと、悔しくて悔しくて仕方がありません。
2002年の日朝首脳会談の後に父が泣いていた姿を見て、そして今回父が他界したことを受けて、私個人は本当に北朝鮮が憎くてなりません。許すことができない。
どうしてこれほどひどい人権侵害を平気で行い続けることができるのかということが不思議でなりません。国際社会がもっと北朝鮮に強い制裁を科して、この問題解決を図ることを期待したいと思います」
また哲也さんと同様、安倍首相の名前を出して「ずっと長い間そばにいて支援してくださった」「これから私たちは安倍総理とともにこの問題解決を図っていきたい」と思いを述べ、与野党の壁を取り払った国会審議や、イデオロギーを排した報道のあり方を訴えた。
他方、早紀江さんはメディアに対して、「長い間、いつも報道していただいて、めぐみたちを助けるために、献身的に私たち全員のことを、被害者のことを家族のことを報道しつづけてくださった長い年月に対して、本当に心から感謝いたしております」と感謝の言葉を述べた。
そして、滋さんに対しては「何にも思い残すことはないほど、全身全霊打ち込んで、主人は頑張った」と生前の労苦を労った。
「横田家の話」と理解されるのが問題の難しさ

後半の質疑応答の中で、滋さんは優しいイメージがある反面、強さや頑固さもあったことについて話題が及んだ。この中で拓也さん、哲也さんは滋さんにそのような面があったことは認めた上で、滋さんを特別視して拉致問題が「横田家の話」として捉えられることに懸念を示し以下のように語った。
拓也さん「この問題の難しいところ、厄介なところは『横田家の北朝鮮拉致問題だよね』という理解(をされること)が問題の本質。我がこと、自分の問題だということ。日本国が主権を侵されて、工作員が日本に入ってきて13歳の無実の少女を拉致したまま43年間人質外交を続けているということ、これは誰もが同じ機会のリスクを負っていたかもしれないということなんだということが分かれば、父の気持ちが決して独自のものでも、頑固なものでもなくて、きっと皆さん自身も同じことを感じているのではないかと思っています」
哲也さん「娘を救い出すためにすべてを投げうって、人生の半分を費やしてでも活動するというのは、たまたまいまこちらに立っている側と取材する側という構図になっていますけれども、子どものためだったら同じですよねきっと。普通のことをやっていたんじゃないかなという、そういう心境です」
1997年に「少女A」ではなく実名を公表することを決めた際は、消極的だった3人と滋さんの間で意見が分かれた。当時を振り返って拓也氏は、「父としての本能的なこともあったと思う。私たち3人が慎重な意見を唱える中で、勇気ある判断をしたんだと思う」と振り返り、哲也さんも「結果としていい方向に進んでいる。偶然かもしれないが、正しかった」と語った。
「対話だけでは済まないから拳を上げている」
拉致問題解決をめざすにあたり、滋さんは経済制裁強化一辺倒というよりも、対話の糸口を探そうという信念が揺るがなかったと記者が指摘。拓也さん、哲也さんに、同様の考えなのか、あるいは経済制裁を強めて即時一括返還をめざすのかを聞いた。
拓也さんは、北朝鮮が拉致を43年前から続け、いまも行う人質外交が許されることかという視点に立つべきだとし、「何も言わずに相手の言うことを聞き続けるのがいいのかということを私たち自身、国民自身、ジャーナリズムが意識する必要がある」と強い姿勢をとることに理解を求めた。
また哲也さんも同様の考えを示し、「ご質問は圧力と対話という言葉にまとめられると思いますが、会話だけで済むならとっくに済んでいます。済まないから拳を上げてこちらに誘導しようとしていると思います。(経済制裁)一辺倒ではいけないけれども、圧力も必要。政府には堅持してほしいと思っています」と語った。
安倍首相「総理大臣として痛恨の極み」

10日の衆議院予算委員会では、安倍首相が、日本維新の会・森夏枝議員の質問に答える形で滋さんの訃報を受けての思いを述べている。
安倍首相は、日本として、あるいは国際的にも北朝鮮に対して強い圧力をかける一方で、米国のトランプ大統領、中国の習近平国家主席、韓国の文在寅大統領を通じて金正恩委員長に拉致問題に自身の考えを伝えていると説明。今後についても「あらゆるチャンスを逃すことなく果断に行動していきたい」と語った。
また、滋さんが実名報道を決断したことについて、「ご夫妻も大変悩んでおられたときがありますが、覚悟を決めて、決意をされてめぐみさんの実名を出されたことによって、全国的な関心を呼び、多くの方々から支援をしていただいた」と解決へ向けて前進する一つのきっかけになったことに触れた。
自身も随行した2002年の小泉純一郎元首相の訪朝の際には国民の大きな声があったと振り返り、「みなさんの声が大きな力になる」とコメントし、問題解決に向けて以下のように思いを述べた。
「拉致問題を解決するということは、北朝鮮によって拉致されたすべての日本人を取り戻す、すべてのみなさんの帰国を果たすことだろうと思っています。総理大臣として残念ながらそれを実現できていないことは痛恨の極みで大変申し訳ない思いであります。
先般は、有本恵子さんのお母さまもご逝去された。一日も早く、被害者のみなさんが帰国するために全力を傾けていきたい」
早紀江さんは「身体もだんだん弱ってきますのでどこまで頑張れるかは分かりませんけど、力のある限り最後まで頑張ります」と述べたが、すでに84歳。拉致被害者家族連絡会の現代表・飯塚繁雄氏も81歳になっている。
コロナ禍でも被害者の親世代の高齢化は止められない。国民に拉致問題を「日本人全員の問題」だと認識させ、国民世論を高めるためには、哲也さんの指摘したようにメディアも改めて報じ方を考えなければならない時かもしれない。
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