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「亡くなったのはかわいそうだけど」"有名税"を肯定する大学生の言い分

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SNS上での誹謗中傷が社会問題になっている。ITジャーナリストの高橋暁子氏は「匿名性が人の攻撃性を高めるだけでなく、有名人だから誹謗中傷も許されるという誤った認識が問題の背景にある」という——。

2020年1月4日東京ドームで行われた第0−1試合、スターダム提供試合:星輝ありさ、岩谷麻優vsジュリア、木村花。ポーズを決める木村花さん2020年1月4日東京ドームで行われた第0−1試合、スターダム提供試合:星輝ありさ、岩谷麻優vsジュリア、木村花。ポーズを決める木村花さん - 写真=日刊スポーツ/アフロ

後を絶たないSNS上の誹謗中傷

恋愛リアリティー番組「テラスハウス2019-2020」(Netflixおよびフジテレビ系)に出演中だったプロレスラーの木村花さん(22)が亡くなった。木村さんは番組出演を契機にしたSNS上の中傷に悩んでいたと指摘されていた。報道によれば、多い日で一日100件もの誹謗(ひぼう)中傷があったという。

フジテレビは5月27日、番組の打ち切りを発表した。しかし、SNSでの誹謗中傷という問題は残されたままだ。木村さんに限らず、SNSでは個人を標的とした誹謗中傷が後を絶たない。残念ながら、とりわけ著名人が誹謗中傷のターゲットとされることは多い。

この事件で著名人たちも声を上げた。例えば、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんは「誹謗中傷を気にするななんて難しいよ。芸能人だって1人の人間だよ忘れないで」とツイッターに投稿。同じく誹謗中傷を受けたことがある多くの著名人が反応した。

SNSに日常的に触れている若者世代は、この事件についてどのように感じているのか。ひとごとではない誹謗中傷の実態とリスクについて解説したい。

「アンチがいるのは注目の証し」「気にしなければよかったのに」

歌手やタレントといった著名人への誹謗中傷は「有名税だから仕方ない」という人がいる。注目されるほど仕事にいい影響があるのだから、ファンや芸能記者に追いかけまわされたり、恋愛や不祥事が報じられてプライバシーが制約されたりしても、それは税金と同じで納める義務があるということらしい。

こうした「有名税」という考え方は大きな間違いだ。SNS上であっても相手の尊厳を傷つけていいはずがない。

この事件について、若者世代はどのように感じているのか。今回の事件について取材をしていたところ、驚くような言葉を聞いた。「ほとんどのシリーズを見ていて同番組のファン」という大学生の話だ。

「亡くなったのはかわいそうだけど、アンチがいるのは注目されている証しと考えてほしかった。ネットの言葉なんて無視すべきだと思う」

彼の認識では、テレビに出る仕事をしていたら、ネットでたたかれるのは有名税の一部だから仕方ない、というわけだ。

「正直、なぜ番組が責められて中止になるのかわからない。続きが気になってるのに見られないなんて残念すぎる。地上波は無理でも、ネトフリ(Netflix)で配信できないんですかね」

別の女子大生にも話を聞いた。

「知らない人にきついこと書くのはよくあることですよね。ネットの書き込みは気にしすぎるとキリがないと思う。若いし、かわいそうだったけど、気にしなかったらよかったのにとは思いました」

彼女自身も、中学生の頃に悪口をTwitterに書き込まれたことはあるそうだ。見つけたときは落ち込んだけど、気にしないふりして無視していたら、ターゲットが変わり、それ以上書き込まれなかった。

「みんな一度くらい書かれたことあると思う。きついけど、気にしないことで乗り切れる」

匿名で牙を向ける若者たちの存在

匿名では、攻撃性が高くなることが知られている。鬱憤(うっぷん)を晴らすために代替行為として他人の誹謗中傷を繰り返すことも多く、正義感で少しでも悪いところがある相手を容赦なく攻撃することもある。他の人が書き込んでいれば、さらにその傾向は強くなり、行動に拍車がかかってしまう。

SNS上での誹謗中傷は、若者、特に未成年が投稿している例も少なくない。俳優・演出家の土屋シオンさんが今年に入ってから誹謗中傷がひどかった数人を特定したところ、ほとんどが未成年だったという。

土屋さんは、彼らの今後の人生も考えて、訴えるのではなく電話で保護者も交えて話をした。ところが、そのうち数名には「芸能人は皆(誹謗中傷されても)我慢している。無視をしてくれ。イメージが悪くなりますよ」などと言われてしまったそうだ。

未成年の誹謗中傷による事件は、過去にも何度も起きている。2017年には、滋賀県内の高校3年男子生徒(18)をSNS内で誹謗中傷したとして、東京都内の無職少年(19)が名誉毀損(きそん)で逮捕されている。「さまざまな女ユーザーに迷惑行為を行い、最終的にはそんなことをやっていないと逃げ惑っている」などと書き込まれ、警察署に相談した後、男子生徒は自殺していた。

未成年による匿名での荒らし行為もある。ある中学3年は、ニコニコ生放送で荒らしコメントを100以上書き込んだ。その一週間後くらいに、プロバイダから通知が来たそうだ。そこには、覚えがあるコメントと書き込んだ日時、運営会社から訴えがあった旨、明記されていた。

「連絡が来たときには慌てた。親バレして切れられたし、さすがにまずいと思って会社(運営会社のドワンゴ)に謝った」。その配信に荒らしコメントをした理由は、「配信者の困っているリアクションが面白かったから」という。それくらいの理由で簡単に誹謗中傷したり、荒らし行為をする若者もいるのだ。

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