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パチンコは潰れない…依存症考える会「給付金10万、7割がばくちに使った可能性」

コロナ禍で国民のストレスのはけ口となったパチンコ

コロナ禍でも自粛要請に従わずパチンコ店に駆けつけた人々や、休業要請に応じなかったパチンコ店に客が詰めかけたことが非難されています。今回のような事態が起こると、真っ先にやり玉に挙がるのがパチンコ業界です。

東日本大震災の時は、パチンコ業界が無駄な電力を使っていると言われ、消費者金融が社会問題になったときはパチンコが元凶と言われていました。最近はギャンブル依存症問題にパチンコ業界自体が取り組み、業界が時代の流れとともに努力を続けてきている事実もあります。

上野・アメ横のパチンコ店の前でマスクを着けた男性がスマホを操作している

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tuckraider

“合法的”に批判しやすいタイミングで、ここぞとばかりに非難するのはまるで、不自由な生活を強いられる中でのストレスの「はけ口」とされているようです。何かを攻撃して、ストレスを解消するのは正しい解消法とは違うと考えます。とはいえ、日本が抱えている「ギャンブル依存症」の問題については、社会全体で理解を深めることが大切です。自分が理解できない行動をとる人たちを排除するのではなく、彼らの背景には何があるのか知る必要があると考えます。

依存症の7割は給付金10万円をギャンブルに

公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の調査で、パチンコ依存症経験者の6割が、新型コロナウイルス対策で居住地のパチンコ店が営業自粛した場合に別の都道府県に行くと考えていたことや、10万円の特別定額給付金についても、ギャンブルで費消する可能性が示されています。

調査は5月6、7日にインターネット上で実施し、依存症から立ち直った人、同会などが支援する依存症者の家族が回答しています。「もし依存症から回復する前に特別定額給付金10万円の支給があったら何に使っていたと思いますか?」という質問に元依存症者の23.15%が「家族の分も含めてギャンブルに使っていた」、47.22%が「自分の分だけギャンブルに使っていた」回答し、ギャンブルに使うと答えた人は合わせて70%を超えている結果になっています。

自粛が叫ばれるなか、開店前から感染リスクがあるにもかかわらず長蛇の列をなし、入店してパチンコをする行為は、依存症または依存症予備群の人でなければ、取らない行動でしょう。日本に存在する、多くのギャンブル依存症を目の当たりにすることになりました。

ギャンブル依存症の現実

ギャンブル依存症は精神疾患の一つで、自分の意志の力ではギャンブルがコントロールできなくなる病気です。さらに、本人はその病気であることを自覚できないのです。ギャンブルなどにのめり込むことで本人や家族の生活に支障をきたし、多重債務などの重大な社会問題を生じさせているとして、2018年に「ギャンブル等依存症対策基本法」が施行されています。

自粛要請中にもかかわらず、報道されたパチンコ店に並ぶ客は「パチンコでストレス解消したい」「ヒマでパチンコくらいしかやることがない」と話していましたが、これは依存症者の行動パターンともいえるそうです。ギャンブル依存症問題を考える会の調査でも、元依存症者の69.9%が「ギャンブルで不安を払拭していたと思う」と回答し、60.5%が「都道府県をまたいででも営業しているパチンコ店を探しに出かけたと思う」と答えています。

ギャンブル依存症でない人は、自分なりのストレス発散方法を持っていますし、不安に駆られたときに冷静さを取り戻すことも可能です。しかし、依存症の人は、漠然とした不安があるコロナ禍では、衝動に駆られるかのように、とにかくその不安をパチンコで紛らわせたいと考える人が多くいるのが現状です。

ギャンブル等依存症問題の状況

厚生労働省が17年に、ギャンブル依存症の実態把握のために実施した調査によると、生涯でギャンブル依存症が疑われる状態になったことがある人は成人の3.6%と推計され、国勢調査のデータに当てはめると約320万人に相当します。直近1年間に依存症が疑われる状態だった人は0.8%で、計算上では約70万人となっています。

ギャンブルにのめり込むことにより、本人およびその家族の日常生活や社会生活に支障を生じさせるのみならず、多重債務や犯罪等の重大な社会問題を生じさせる可能性がある点について以下のデータを見てみます。

「ギャンブル等依存症対策推進基本計画(平成31年4月19日)」のデータによると、17年度に精神保健福祉センターや保健所に寄せられたギャンブル等に関する相談件数は4843件で、PIO‐NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された借金の問題に関して、ギャンブル等に関連すると思われるものの件数は2万6387件中、535件でした。財務省財務局・財務支局に寄せられた「多重債務」に関する相談中、相談者の借金をしたきっかけが「ギャンブル等」であると判明したものは、5299件中323件。

刑法犯の総検挙件数31万6412件中、主たる被疑者の犯行の動機・原因がパチンコ又はギャンブルをすることへの欲求であるものの件数の合計は2570件。保護観察対象者のうち、「ギャンブル等依存対象者」類型に認定された者の数は2万8035名中、1296名。これらは、ギャンブル依存症が多重債務や犯罪につながっている問題点が浮き上がるデータとなっています。

30兆円の産業といわれたパチンコ業界が今

30兆円産業で不況に強いなどと言われてきたパチンコ業界ですが、業界自体は縮小傾向で20兆円規模になっています。縮小傾向と言いつつも、外食産業が約25兆円といったことから考えても、パチンコ業界の20兆円の市場規模は十分に大きいです。法的に運営ができなくなるようなことがない限り、完全になくなることは考えにくいです。

「レジャー白書」によれば、1995年のパチンコ参加人口は約3000万人から現在では900万人台にまで減少しています。ここまでパチンコ人口が減ってしまった背景には、この十数年、パチンコ業界を取り巻く環境が一変したことにあります。ギャンブル依存症が社会問題化し、経営体制のグレーな部分が批判されるようになると、利用者数も減少傾向になりました。また、法改正により、ギャンブル依存症対策として「儲かる遊技台」が規制され、これによって客離れはより顕著になっています。

さらに、今回のコロナの影響で顕著になったのが、パチンコ台の仕入れ代金や光熱費、従業員の給料などの「固定費」が、ほかの業種に比べて高い業界なのです。そのため、休業の要請に応じることで、東京都の場合、協力金として最大で100万円が支払われますが、家賃だけで月に1000万円以上かかる場合もあり、ほとんどの店で大幅な赤字なのです。結果、今回のコロナの影響で、全国で少なくとも85の店が事実上倒産、閉店をしています。

クリーンなパチンコが要求される

パチンコ業界もひとくくりにせず、自粛要請をきちんと守っている店もあります。また、「ギャンブル等依存症対策基本法」の一環として、パチンコ機のギャンブル性にメスが入っています。21年1月末日までに、すべての台においてギャンブル性をそいだものに入れ替えなければならないのです。

これにより、一店舗あたり平均で300台以上の台を買い替えるとなると、資金面でかなりの負担になります。そして、パチンコ店舗は地域との関係性を構築し、地域に還元していくといった、まるで上場企業のような「クリーンなパチンコ」を要求される時代の流れがあります。この流れと今回のコロナの影響により、弱小は倒産または、大手の傘下に入るなど、淘汰が進むでしょう。パチンコ業界も時代の流れについてくことができる、クリーンな大手だけが生き残る世界になりそうです。

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。
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