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【読書感想】音楽が聴けなくなる日

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音楽が聴けなくなる日 (集英社新書)
作者:宮台 真司,永田 夏来,かがり はるき
発売日: 2020/05/15
メディア: 新書

内容(「BOOK」データベースより)
電気グルーヴのピエール瀧が麻薬取締法違反容疑で逮捕された翌日、レコード会社は全ての音源・映像の出荷停止、在庫回収、配信停止を発表した。近年ミュージシャンの薬物事件ではこのような対応が即座になされ、また強化されてきたが、その「自粛」は何のため、誰のためのものだろうか?

こうした「自粛」に異を唱える著者たちがそれぞれの立場から問題の背景と構造を明らかにし、現代社会における「音楽」「薬物」「自粛」の在り方について考察を深めていく一冊。巻末の音楽自粛小史は必見。

 ピエール瀧さんが麻薬取締法違反容疑で逮捕された翌日に、瀧さんと石野卓球さんのユニットである電気グルーヴのすべての音源・映像が「自粛」されることになりました。
 この本は、その「自粛」という対応に異議を唱え、ネットで署名活動などを行った、社会学者の永田夏来さんと宮台真司さん、音楽研究家のかがりはるきさんが、それぞれの立場から、「作者の不祥事で、音楽は自粛されるべきなのか?」について語ったものです。

 かがりはるきさんは、音楽の「自粛の歴史」について紹介されています。
 かがりさんは「自粛がほとんどなかった時代の例」として、1987年に尾崎豊さんが覚せい剤取締法違反容疑で逮捕され、懲役1年6か月、執行猶予3年の判決を受けた半年後、執行猶予中にシングル『太陽の破片』をリリースして復帰したのを紹介しています。

 その2年後の1989年(平成元年)4月に、BUCK-TICKの今井寿さんがLSDの使用による麻薬取締法違反容疑で逮捕され、懲役6か月、執行猶予3年の判決を受けた事例が、「自粛」が一般的になるきっかけになったようです。

 この件では「自粛」の萌芽ともいえる措置やメディア対応が見られました。作品に対する回収等の措置こそなかったものの、直後に予定していたツアーは中止となり、BUCK-TICKのメンバー全員が約半年間の謹慎をしました。ただし、今井寿さんの脱退などはなく、今井さん本人は復帰直後のインタビューで、事件のことをこう振り返っています。

「ツアーが中止になったのはどうしようかと思ったけど、事務所とかレコード会社とか大家とか、そういうビジネス面での迷惑がすごくかかるわけだから、ああとんでもないことしちゃったっていうのがそこで初めてわかった」(「ROCKIN'ON JAPAN」1990年1月号)

 また、「ROCKIN'ON JAPAN」1999年12月号の、日本の90年代ロックを振り返る特集でも右のインタビューに触れられており、同誌編集者(当時)の中本浩二さんが「その事件の時はほとんどの音楽誌がBUCK-TICK関係の記事を削除したり、シカトしたり、なんか嫌な自粛ムードがありました」と語っています。

 こうした証言から、ミュージシャンや周囲のスタッフから音楽誌に至るまで、BUCK-TICKに関して明らかな「自粛」ムードが感じられます。

 とはいえ、現在の感覚からすると、自粛の期間自体は短く、復帰も華々しいものでした。約半年間の謹慎を経た後の復帰の場はなんと、年末の東京ドーム公演「バクチク現象」。もちろん今井さんはこの時点で執行猶予中です。

 当時、BUCK-TICKは破竹の勢いで、この直後に代表作ともいえるアルバム「悪の華」もリリースします。レコーディングに要する期間を考えると、謹慎期間中といっても実際には音楽の制作活動をしていたと見ていいでしょう。

 それまでは、ミュージシャンの不祥事に対して、「作品の回収や、記事の削除」などは、ほとんど行われていなかったのです。
 そういえば、尾崎豊さんが復帰したときも、『太陽の破片』が大々的に宣伝されていたのを見た記憶があります。

 音楽の「自粛」が平成からはじまったというのは、昭和天皇の御病気による「自粛ムード」の影響もあるのではないか、あと、BUCK-TICKが、自粛後にミュージシャンとして(セールスの)ピークを迎えたことや、企業の「コンプライアンス」が厳しく問われる時代になったことについても、かがりさんは指摘しておられます。

 今の感覚では、ミュージシャンが不祥事を起こしたら、作品も排除するのが当たり前になっているのですが、そうなったのは、そんなに昔の話ではないのです。

 宮台真司さんは、その「販売、配信停止、回収」が本当に正しいのかどうか、疑問を呈しているのです。

 正直、宮台さんが書いておられる部分は、僕には難しくて、しっかり読み取れている自信はないのですが、アーティストの「作品」というのは、そのアーティストだけのものではなくて、その時代の空気みたいなものから生まれてきたものだ、と宮台さんは考えられているようです。

 巫女が告げた「ご神託」の内容について、巫女に全責任を問うのはおかしい、ということなのでしょう。

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