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【読書感想】美意識の値段

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美意識の値段 (集英社新書)
作者:山口 桂
発売日: 2020/01/17
メディア: 新書




Kindle版もあります。


美意識の値段 (集英社新書)
作者:山口桂
発売日: 2020/02/21
メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)

クリスティーズは世界二大オークション・ハウスのひとつ。その日本法人の社長である著者は、長年東洋美術部門インターナショナル・ディレクターをつとめ、日本美術のスペシャリストとしてさまざまな美術品と出会い、オークションを通じて、多くの作品の橋渡しをしてきた。

本書は、オークションを取り巻く個性あふれる関係者、セールでの駆け引きはもちろん、美術品との数奇な出会い、真贋の見分け方、「歴史の一部」を預かるトップコレクター達の誇り、そして欧米でのオークション・ハウスと人々の関係等の逸話を紹介。そして日本美術への想いを通して、アートと共にある生活を提案し、美意識の磨き方とそれをビジネスや人生に活かす視点を示す。

 『サザビーズ』と並び称される、世界二大オークションハウスのひとつ、『クリスティーズ』の日本法人社長が、アートの観かた、つきあいかたと、日本美術への思いを綴った本です。 
 軽妙な語り口で読みやすく、「アート」に親しみがわいてきます。

 もう十数年前になるのですが、アメリカのボストン美術館に行ったことがあるのです。

 ボストン美術館には「日本美術の間」みたいなのがあって、日本の有名画家の浮世絵などがたくさん展示されているのですが、印象派の絵の部屋がにぎわっているのに比べて、人もまばらで、なんだかとても残念な気がしたんですよね。
 そんなに興味がないのなら、日本に返してくれればいいのに……って。

 まあ、僕が一度観たときだけの印象ではありますし、外国から日本の美術館に来た人も、同じようなことを考えているのかもしれませんが。

 著者は、クリスティーズのスタッフとして、さまざまな美術品の売買に関わっています。

 では、これらの「コレクション」をオークション・ハウスがゲットするのは、一体どんな時なのだろう? その最も重要な「機会」を、巷では「3D」(三つのD)と呼んでいる。そしてこの「3D」とは「三つの英単語」の頭文字であるDを取ったモノなのだ。

 その三語とは「Death(死)」「Divorce(離婚)」「Debt(負債)」……。どの言葉を取っても、人に取っては余り嬉しくないシチュエーションを表す言葉であるが、大きなアート・コレクションが移動する時、誰かが美術品を売る時には、それなりの、そして時には運命的な理由が存在する。

 コレクターが、自慢のコレクションを手放すときには、なんらかの、「喜べない理由」があるものなのです。

 他人の不幸を喜ぶ人たち、みたいな印象を受けるかもしれませんが、著者は、「オークション・ハウスの存在は、コレクションの散逸を防いだり、作品があるべき場所に売ったり、改装や改修が必要な美術館に、その資金をもたらすのに役に立っている」ということも紹介しています。

 クリスティーズのオークションといえば、何十億円もする絵の落札が話題になることが多いのですが、実際は、4万円台くらいで落札される作品も扱われており、超高額のアートだけが出品されるわけではない、ということも。

 ちなみに、著者は、オークションにかかわる人間として、バンクシーの作品の一部が、落札時にシュレッダーで切り刻まれた事件についても軽く言及しています。興味がある方は、ぜひ、読んでみていただきたいのですが、あの演出も含めての「アート」だった、ということなのかもしれませんね。

 2008年3月18日、オークションに於ける日本美術品の史上最高価格が誕生した。作品は《伝運慶作 木造大日如来坐像》、落札価格は1437万7000ドル(当時約14億3000万円)であった。落札者は百貨店の三越だったが、後に真のバイヤーが宗教団体「真如苑」だった事が判明し、大きな話題と為った。そしてこの仏様は、翌2009年に国の「重要文化財」に指定され、クリスティーズが売った最も重要な日本古美術作品と為った。

 ……と云う話を詳しくしようかとも思ったけれど、本当に興味深いのはこの「結果」よりも、何方かと云うとオークションで売れる「迄」の話なので、そちらを書く事にする。

 著者は、大きな話題となったこのオークションにも深く関わっていたのです。
 この作品がオークションにかけられ、海外に流出してしまう可能性があることについて、当時は、多くの批判が寄せられたそうです。

 著者は、日本美術の専門家であり、クリスティーズの一員として、こう述べています。

 もう一点非常に印象的だったのは、この作品に非常にシリアスに興味を持っていた外国人顧客が、私に何回も、「この作品を買ったら、家に飾る場合、どの様に保管したら良いと思う? 湿度を管理出来る、特別な展示箱を作ったら良いのか? それとも美術館に寄託した方が安全かな?」と聞いてきた事だ。

要はその顧客に取っては、値段等或る意味どうでも良くて(現にそれ位のお金持ちだったが)、自分が仏様の新オーナーに為った時の作品の保存の仕方だけを心配していた訳で、それは何しろ「今現在の状態を劣化させずに、後世に伝える」と云う、世界の如何なる美術品の分野に於ける「トップ・コレクター」達でも皆考える、「自分は”歴史の一部」を、ほんの一瞬預かるだけだ」と云う非常に謙虚な発想から来ている。

 それなのにオークション終了後、日本の有名美術誌が「海外の金持ちがその価値もよく判らず、部屋の本棚の空いているスペースにポンと置いて仕舞う可能性のあるオークション等に、この様な重要な日本美術品を出すべきでは無い」等と書いたので、私は本当に怒り心頭だったのだ!

 君達は外国の日本美術品コレクターの、一体何を知っていると云うのか? 私が日本に住む「日本人」の家や蔵で、どれだけ大量の「状態の酷い」日本美術品を見て来たと思っているのか? 本気で「外国人には日本美術の価値が判らない」と思っているのか? ……と云う事は、日本人は絶対に西洋美術の価値が判らないとでも?

 君達は若冲コレクターのプライス氏や、日本でも展覧会を開催している、ファインバーグ氏やウェバー氏の日本美術コレクションを観た事が無いのか? あの作品が「装飾品」のレヴェルだったり状態が悪いとでも? これ位で止めておくが、日本の有名美術誌でもこのレヴェルなのだから、辛い。

 そしてもう一点、
「宗教、信仰に関わる美術品を売買する等、トンでもない。然もこれ程重要な仏教美術を、海外で売り飛ばすとは!」

 と云う意見も私の耳に多く入って来た。その気持ちは判らないではない。が、それら扱う人間に「扱わせて頂いている」感覚が有れば、良いのではないだろうか?

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