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第二波に備えて、専門家会議や厚労省の反省が必要

 新型コロナウイルスの感染拡大対策として、私の知っているかぎり、「接触8割減」という政策を掲げている国は日本以外にはない。“social distance”の励行という政策が普通であり、他人との間隔をしっかりと守っている国ほど、ウイルスの抑え込みに成功している。

 専門家会議は言わずもがな、西浦理論を鵜呑みにする安倍政権の責任は重い。感染防止と経済とのバランスが全くとれていない。政治とは現実的な選択である。

 緊急事態宣言の解除を決めるに当たって、政府や専門家会議が使った基準は、①新規感染者の数、②医療提供体制、③監視体制の三点である。

 第一点については、諸外国は、実効再生産数を指標として使う。一般的には、0.7以下になると解除に踏み切っている。5月1日に専門家会議は、3月以降については3月25日にピークの2.0に達しており、それ以降は減少していると発表している。4月1日には1.0を切り、4月10日には、全国で0.7、東京では0.5となっている。因みに、東京が最高値の2.6に達したのは3月14日である。その後も公表されている4月23日までの数字を見ると、横ばいである。

 実効再生産数に基づけば、緊急事態宣言を出すべきは3月半ばであって、実際に宣言を発出したときには、解除すべきタイミングだったことになる。そういう議論が起こるのを避けるために、意図的に数字を出さなかったのではないかと勘ぐりたくもなるのである。

 もう一つ、有効な基準として、超過死亡がある。これは、過去のデータから予想される死者数、インフルエンザなどの流行で実際の死者数が超過する現象をいう。WHOが導入し指標であるが、東京では超過死亡は3月であり、4月以降はなくなっている。このデータから見ても、緊急事態宣言を発するべきだったのは、3月であって、4月7日ではないことになる。

 要するに、緊急事態宣言を発令するときの科学的基準はなかったのであり、解除の時ときも万人を納得させるような明快な基準は提示できないままである。

 第二点の医療提供体制の逼迫について、注目すべきは院内感染であり、これこそが医療崩壊につながるのである。東京の感染者の実に14%が医療関係者であり、病床不足よりも、医師や看護師が感染によって仕事ができなくなるほうが遙かに深刻である。

 院内感染防止対策を実施することが重要であるが、院内感染の大きな原因は、防護服やマスクの不足である。これは「政府の失敗(government failure)」以外のなにものでもない。

 第三点の監視体制については、PCR検査をきちんと実行しなかったことが問題を生んでいる。5月13日に抗原検査が承認されたので、これからは感染者を見つけるのが早くなる。精度の問題はあるが、PCR検査を補完する意味で大きな意味を持っている。

 こういう体制を迅速に整備できなかったことを、しっかりと反省しばければ、日本は来たるべき第二波に対応できなくなる。

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