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「4月入学」にこだわる人こそ、日本の生産性を下げている元凶だ

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新型コロナウイルスによる休校の長期化で急浮上した「9月入学」。来年度導入は見送られたが、議論は続いている。今年3月まで9年間にわたり開成中学・高校の校長を務めた柳沢幸雄氏(現・北鎌倉女子学園学園長)は「9月入学は、先進国で群を抜いて低い日本の労働生産性を上げることにも結びつく。やるべきだ」と主張する――。

日本の女子高生

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vanbeets

「来年3月までに」という焦りを子供に伝えるな

——9月入学について、自民党は「本年度・来年度の直近の導入は困難である」と見送る方針を固めました。

【柳沢】後述しますが、今後気づいたら物価が10倍になっているという時代がくる可能性があります。そのショックをできる限り小さくするために、自分の努力している(働いている)時間の果実(成果)を今よりも多く生み出せるような働き方をしなくてはいけません。

そのための第一歩として9月入学は必要です。留学生を受け入れている大学では、4月入学のほかに9月入学も実施しています。多くの国の入学時期である9月に実施しなければ、優秀な外国人留学生の受け入れが困難になりますからね。しかし年に2回、入学時期があることによって2度手間になる仕事が少なくありません。9月入学の1回になれば、それらの無駄な仕事を省くことができます。学生にとっても、現在9月入学生は4月入学生のカリキュラムに遅れて参加している状態ですが、9月入学に一本化すれば同時に勉学をスタートできます。

——9月入学に移行した場合の、小中高校生たちへのメリットは。

柳沢幸雄氏(北鎌倉女子学園学園長)(写真=本人提供)

柳沢幸雄氏(北鎌倉女子学園学園長)(写真=本人提供)

【柳沢】勉強の積み重ねから抜け落ちたコロナ世代を作らない、救うことができます。休校の長期化によって、受験生を心配する人が多いのですが、重要なのは低学年の小学生です。ネットを使った遠隔授業は低学年生では難しいですし、集団の中で自分の時間を過ごす形に慣れさせることが小学校低学年では非常に重要。

今年度を12カ月プラス5カ月(来年の8月まで)の17カ月で考えれば、時間的余裕ができます。今まで通り、「来年3月までに今年度の教育をこなさなければ」と教員が焦ると、子供に伝わる。そして、「この学年どうなるんだろう」と子供の不安や焦りを生み出します。ぎゅうぎゅうに押し込まれたスケジュールでは、誰でも勉強が嫌になる。だからスロースタートがいいんです。これからもし第2波、第3波がきたとしても、焦ることなく教育することができます。

——ただそうなると、4月から8月までの間に生まれた子供たちを吸収し、1学年が1.5倍の人数になるという指摘や、7歳の入学は世界的にみて遅いなどという批判もあります。

【柳沢】それは派生した問題で、派生項目を最優先するのは主客転倒でしょう。

「勉強ができなくなった世代」を作らないことが最重要

【柳沢】最重要課題は何か。今は「コロナによって勉強ができなくなった世代」を作らないことが最も重要です。その対策によって生じた変動は時間をかけて吸収するべきです。例えば4月から8月までの「5カ月の遅れ」を5年間かけて吸収していくなど、いろいろな工夫ができます。

日本は教育に限らず、あらゆる分野おいて「修正」が苦手です。運転しながら不具合を点検し、修正していくということができない。スタート時点で“間違いが起きない完璧な仕組み”を作ろうとする。だから効率が悪く、労働生産性が低いのです。

それは今回のコロナ禍によっても明らかになりました。人口10万人あたりのPCR検査数が世界各国と比べて圧倒的に少ない。コロナ感染拡大の初期の頃から指摘されていますが、一向に変わりませんね。日本人にとって常日頃、こういう現象があるのです。

各国、地域におけるPCR等検査数の比較

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の資料(2020年5月4日)より抜粋。

なぜPCR検査の数という「成果」が出てこないのか

——どういうことでしょうか。

OECD加盟諸国の1人当たりGDP(2018年/36カ国比較)

日本生産性本部「労働生産性の国際比較2019」(2019年12月18日)より抜粋。

【柳沢】日本の労働生産性、つまり労働者が1時間に生み出す「付加価値」が非常に低い。OECD(経済協力開発機構)で36か国中、21位。先進7か国の中で50年間最下位なんです。付加価値というと難しく感じますが、簡単に言えばプロダクト、作り出した「成果」です。コロナで考えると、PCR検査の数というのは「成果」。それが日本の普段の労働生産性と一致して低い、そう考えれば驚くにはあたらない。日本の伝統ともいえます。

——日本人は勤勉で労働の質もいいという印象があります。

【柳沢】確かに“労働の質”はいいでしょう。フランスにPCR検査機器を提供したところ、フランス大使館からその会社にお礼状が送られたというほど技術は素晴らしい。だけどそれが“成果”につながらない。世界に冠たる技術を持っているわけですが、宝の持ち腐れになっているのが現状です。

なぜか。「木を見て森を見ない」からです。それが私の結論。一人一人が自分が見える範囲、自分の持ち場はきちんとやっています。PCR検査に関しても、検査に関わっている人は誠心誠意、一生懸命働いている。けれども、ある大きさを超えると日本人は対応しきれなくなる側面がありますね。

本来、森の中のどの木を間伐するかという「森全体の生産性」をあげるための視点を持たなければいけない。そういった仕組みや組織、人(司令塔)が必要なのですが、日本では“上から見る”ということに非常に悪いニュアンスがある。「あの人は上から目線だよね」「鼻持ちならない奴だ」と。

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