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シャープを救う国内企業?想像がつきません

日経のコラムで、日本経済研究センター主任研究員の前田昌孝氏が、シャープの救済には国内のどの企業も手を挙げないために、シャープの交渉相手は鴻海(ホンハイ)しかないことを嘆いた記事を書かれています。それで国内企業が集まって救えと訴えておられます。シャープは皆で救うのが一番いい :マーケット反射鏡 :日本経済新聞 :

ソニー、テルモ、富士フイルムホールディングスの3社が支援を競いあっているオリンパス。こちらは取り合い。鴻海と銀行以外は誰も支援しようとしないシャープ。どこも救済の声を挙げない。あまりにも違います。

ではなぜそれほどの違いがでてきたのかと疑問に感じる人も多いと思います。前田氏も理解されていないようです。
大きすぎて救えないのか、社内に買収者をためらわせる病巣があるのか、それとも、見るべき技術がないのかははっきりしない、日本企業の末路としてはさびしい」

そんな情緒だけで救えるわけがありません。問題は戦略がないこと、戦略を描き実行するリーダーがいないことです。

前田氏の言う「みんなで救う」方法の典型が公的資金の注入です。2009年に経営破綻したDRAM半導体のエルピーダメモリを、経済産業省が一般企業でははじめて公的資金を注入して救いました。結果はどうだったでしょうか。2012年には4,480億円の負債を抱え、会社更生法を申請するという結末でした。そして米国の半導体メーカー「マイクロン」が買収することになっています。

まず誰もが感じると思うのですが、オリンパスとシャープでは抱えている事業も、事業を取り巻く市場の状況も、そこでのポジションも、将来性もまったく違います。

オリンパスの内視鏡事業は、世界シェアで75%を占める押しも押されぬ世界のトップブランドです。当然、高い収益力を持っています。それだけでもピカピカの事業です。しかも、オリンパスは内視鏡という「機器」を売っているだけではありません。医療機関や医療現場に深く入り込み、情報提供や技術指導などを行い、現場のドクターとの密接な関係が築いてきたから、「機器」も売れるのです。だからオリンパスのシェアを切り崩すことが難しいのです。ブランドとしても輝いている、また資産ともいえる医療現場とのネットワークを築いている、さらに医療機器分野は、将来性が高いのです。名乗りを上げたそれぞれの企業がオリンパスを手に入れたいと思うのは当然のことです。宝石のような事業だからです。

かたやシャープはどうでしょう。液晶事業は国内ではまだシェアが高いとしても、世界市場ではどんどんシェアを落としてきており、今では7%を切った第四位のブランドにまでなってしまっています。しかも、液晶テレビは、もはや技術が成熟してしまい、激しい価格下落にみまわれています。そして利益を出せるのは、世界シェア26%でトップを走っているサムスンだけです。

そのサムスンの液晶事業も万全ではありません。激しい価格競争にさらされています。北米で突然現れた、鴻海(ホンハイ)の資本の入っているVIZIOにトップの座を奪われてしまいました。また今年から中国の液晶メーカーからの大攻勢が始まります。つまり市場が伸びている中国やインドではサムスンと言えども脅威になってきます。この秋からIKEAで売り出されるスマートテレビも中国メーカーのもので、リモコンを振るだけでチャンネルも変わるという技術で登場してきます。

さらに、シャープは太陽電池も事業の柱です。しかし、太陽電池の世界も価格競争が激しい市場です。強かったドイツのメーカーも、中国の安い太陽電池に負け、国内需要も奪われる状態です。大手のQセルズも経営危機に見舞われ、4月に法的整理を申請し、つい最近、韓国の財閥、ハンファグループに買収されることが正式発表されています。韓国のハンファ、独太陽電池メーカーのQセルズを買収へ | ビジネスニュース | Reuters :そんな企業を救える国内企業があるのでしょうか。みんなでよってたかって救済すれば、それだけ経営のリーダーシップも取りづらく、よけいに体質の悪化を招きかねません。

今のところ救済できる、あるいは救済してメリットがある企業、もっといえば買収する動機を持っている企業といえば鴻海(ホンハイ)しかないということでしょう。鴻海(ホンハイ)は製造受託企業です。製造受託企業であるかぎり、得られる利益率には限界があります。

ブランドが欲しい、自社開発したい、開発する技術力が欲しいという思い、経営の意志はきっと強いと思います。しかも郭(コウ)会長は、サムスンを抜きたいという強い気持ちを持っています。鴻海(ホンハイ)にとっては、シャープは絶好の企業なのです。

場合によってはPCのレノボが、価格の安いレノボブランドと、比較的価格の高いThinkPadを並用しているように、市場成長が期待できる途上国の富裕層向けのシャープ「アクオス」と、人口の多い低所得者層向けの液晶テレビでサムスンをサンドイッチしてしまうことも可能になってきます。

またそれ以外でも、事業でさまざまな役割の分担や組み合わせが想定でき、また相乗効果を求めることも可能になってくると思われます。

液晶テレビの先行きを考えずに、イケイケどんどんの経営をやってしまったことは、残念ながら経営力に問題があるといわざるをえません。郭(コウ)会長が「シャープへの経営関与が必要」だと語ったことを台湾紙が報道していたようですが、その通りでしょう。これだけ傷んだ企業を立て直すにはそうとう強いリーダーシップが必要だということは日産で見たとおりです。

情緒だけで、みんなで救おうという発想は、そういった経営のリーダーシップを生みません。むしろ体質も改善されず、変わらないという最悪の結果が待っています。ビジネスはやってみなければわからない世界なので、鴻海(ホンハイ)と組んで、あるいは傘下にはいってうまくいく保障はないにしても、最初から失敗する道は歩むべきではありません。

もっと逞しく、また前向きにグローバル経済の時代をとらえてみてはいかがでしょうか。

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