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「学校に行きたくない」から考える

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 中学校に入った娘が「学校に行きたくない」と行って泣いて休んだ、というぼくのツイートが(ぼくにしては)バズっていた。

 まず、素朴に思ったのは、

  • ある程度知ってはいたが、あらためて「学校が嫌だ」「行かなくていい」「私もそうだった」という気持ちの人がこんなにもいるんだな、と思った。
  • “学校に行きたくない! って素直に言えてよかったですね”という趣旨のレスの人がちらほらいて、子どもが自分の言いにくい気持ちを親に言えるというコミュニケーションのルートが開通していること自体が貴重なんだなと思った。

ということだった。

 娘は1日休んで「休んだから大丈夫」と言って、次の日はけろっとして学校に行った。

 ところがその日のうち「疲れた…」と行って帰ってきて、夜は「ああ…学校行きたくないなあ」とまた言い出し、翌日朝も相当葛藤の上、「行くかあ」「まだ木曜かよ」とため息をついて登校してった。

 金曜日である本日、「行きたくないなあ」とやはり朝食中に一度だけつぶやいたが、もう一週間が終わるということを楽しみに、わりとスムーズに登校していった。

何が嫌なのか?

 彼女に何が嫌なのかをインタビューする。それは聞くたびに変わるし、とらえどころがない。悟性的に原因を突き止めようとすると、煙をつかむような感じになる。以下、彼女が挙げた「理由」を列挙してみよう。

  1. 担任の先生がいやだ。合わない。
  2. なんでノートを埋めないといけないの?
  3. 学校の行き帰り、特に「行き」は友達とも帰れないのでなんの楽しいこともない。そして(8kgに及ぶ)あのクソ重いカバンをどうして背負って1.8kmも歩いて通わないといけないんだ?(先生によれば「使わない教科書は置いて帰ってもいい」とのことだが、家庭学習で一定のものは使うように言われているので「最小限」のものだけ持って帰っても「めちゃめちゃ重い」と娘は述べる)
  4. 体育で半ズボンでやるのが嫌だ。毛深いから足の毛を剃らないといけない……。でも剃ると剃刀負けするし…。体育だけでも休めないのか?(休みたいって言えば?)うう、でも目立つし。
  5. 体育で今日ラジオ体操やるのも意味がわからん。なぜ? 学校教育でわざわざ1時間使ってラジオ体操だって?
  6. 給食がまずい。小学校の給食は美味しかったのに、なぜこんなにまずくなるのか。カレーでさえまずい。そんなものを食べるために長い時間残るのはうんざりだ。その分帰りたい。それは他の子もそう言っている。
  7. 黙って前を向いて給食を食べさせるのも耐えられん。
  8. まだ5時間(5コマ・5時制、午前中に5つの授業をこなして給食を食べ、帰る)なら耐えられるが、これで7時間になるとか、無理!
  9. 月曜から金曜まで死ぬ思いで登校しているのに、これで土曜日まで授業されたら耐えきれない。

 と、ひいふうみい…9つの「原因」がとりあえず並んだ。

 先ほども述べたとおり、「それはどうなの」と思うものもあるが、まあ、複合的なんだろ。本人もよくわかっていないし、ムカつくことが泡のように浮かんでは消え*1、それが楽しいことで打ち消されずに残ってしまうような感じなのではないか。

「もっと埋めてね」

 娘は学校の勉強もそれほど好きな方ではない。

 中学校に入り生活日誌と一体になった学習ノートを渡され、1日1ページ「埋める」ように言われている。しかし、まだろくすっぽ授業も始まっていない。授業の様子を聞いてもオリエンテーション的なものがほとんどだ。たまに中身があっても例えば理科では顕微鏡の各部名称などを教えられている。

 そんなもの、ノートを埋めようがないだろ? と思う。

 ましてや予習の仕方など教えてもらってもいない。左翼組織で、市内の学校の先生たちと広く懇談をした時、市教委がコロナ下で各家庭の学習用に作成したプリントが「新学期の予習」的な中身になっていて、集まった左派系の先生たちは「小学生に予習前提でプリントさせたりするのは無理ですね」と言っていた。

 つい最近まで小学生だった娘も同断であろう。

 4月です、あなたたちは中学生です、もう小学生じゃありません、計画的に学習しましょう、ノートをさあ埋めなさい、と言っても埋まるものではない。

 ツイッターにも書いたが、娘は市教委の配信している動画を見ながら、「歴史」「裸子植物・被子植物」についてノートを書いた。


 あなたは「最古の人類」を言えるだろうか? ぼくは堂々と「アウストラロピテクス」と述べたが、全く「不正解」だった。現在では「サヘラントロプス・チャデンシス」が最新知識になっている。これは市教委の動画配信でも冒頭で紹介し、教科書にも確かに出てくるのである。娘に学ばされた1つである。*2

 しかもノートには、「二足歩行ができるようになって人類に何が起きたか?」を娘なりに予想して書いた。「動画」ではその「答え」を述べているのだが、娘の「予想」とは外れていた。しかし、そういう論理こそ歴史である、そこに踏み出したことは歴史を学ぶ上でとても重要なことだ。

 しかし、担任の先生は、その中身については一切触れず、ノート欄のついてのコメントはただ一言。

「もっとすき間を埋めようね

だけであった。これが2日連続した。

 すき間を埋めるのがこの先生にとっての至上の価値なのである。

 40年前の元・優等生のぼくとしてはわからないでもない。まず「書く」という形で学習をし、それを量をこなすことによって質に転化するのだと。その訓練としてこのような生活日誌があり、すき間を埋めさせようとするのだろう。

 だが、動画も参考書もこれだけ発達した現代に、この方法は引き続き有効なのか。本人がわかるように図を書いて理解してもいいではないか。

 百歩譲って、すでに授業もかなり行われ、学習の方式を体得している生徒ならそういうコメントもわかる。しかし、コロナが終わっていきなりの宿題ノートにこれはないだろ。

 どうしてもすき間を埋めさせたいなら、何か知的刺激を与えてはどうなのか。

 「昔の人類は死んだ肉を食べていたとかいうらしいよ」とか。

 「裸子植物って恐竜時代には栄えていたけど、被子植物に負けたらしいね。果実があったほうがなんか有利なのかね」とか。

 そんな工夫は一言もなく、ただ「すき間を埋めろ」って頭がおかしいのでは。黒く塗れば満足なのだろうか。低レベルのAIかよ。

 娘は果敢にも「すき間ってどれくらいですか?」とノートに書いたらしいが「とにかく出来るだけ埋めてください」と臆面もなく返事が返ってきた。すごいな。

 わざわざ学習を無味乾燥にさせる天才ではないかと思う。知的好奇心を必死で切断しているとしか思えない。

 友達はいないのか?

 友だちはいないのかと言えば、6年生のとき、同じクラスの6〜7人の男女のグループを作ってよく遊んでおり、今でもラインで毎日つながっている。5・6年生の時は担任・友だち関係に恵まれ、本にも「早く学校に行きたい」「楽しい」「リア充すぎるwww」とか言っていたのだが、中学校でクラスは解体してしまった。このグループメンバーはクラスに1人だけいる(男子)。

 校門のところで帰りは一緒に帰るのだが、もう昔の共同体ではないのである。

 これは志村貴子『娘の家出』(集英社)の5巻で、高校時代に自分の中学時代のことを登場人物の2人が振り返るシーンで出てくる事情に似ている。下に示した右ページの3コマ目にあたるシーンのモブ的な描き方と、4コマ目の本当に親友たちとの違いがそれを表しているし、左のページのコマで登場人物が相手の語ることをしみじみと的確だと思う表情が実に良い。

[画像をブログで見る]

 友だちとの関係がクラスとの雰囲気などと「込み」で感じられ、クラスという土壌を離れてしまうと、友だちとの関係自体が変化してしまう、というか、一体で価値を持っていたものが失われてしまうのである。

学校に楽しいことがまだない

 「勉強」ができることでアイデンティティの大きな部分を獲得していた、元・優等生のぼくとつれあいに対して、娘は、「勉強」を楽しいとは思っていないようである。かなり苦痛な作業のように捉えている。それでも彼女が学校に行くのは「学校が楽しい」からである。それは小学校では友だちであったり、担任の先生であったりした。

 友だちについては修学旅行を始め、何度も何度も楽しいことを口にする。

 5年生の時の先生が、クラスメート全員を一斉に動かせてプールで巨大な波を起こさせた経験などは異様に楽しかったらしく、何度も娘から自然に「楽しかった思い出」として語られる逸話である。

 だから、ぼくら夫婦は一時不登校気味(小学3・4年生)であった娘に対して「もう安心」と思っていたのである。

 しかし、新たに中学生になって、学校に楽しみがない今、学校は緊張と嫌なことだけが、小さく、個別に浮かび上がってくる場でしかないのだ。

 どうにも先が見えない。

共産党の提言を読む

 そんな折に、共産党が出した学校再開についての提言を読んだ。

www.jcp.or.jp

 政党の政策提言をこれほど自分にとって心に染み入るように読んだ経験はあまりない。それほどの体験であった。

 提言は、子どもたちの課題を「学習の遅れと格差の拡大」と「心身のストレス」という2つに設定している。これはまさに娘に起きている問題である。

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