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全米抗議デモで「極左勢力」の関与を疑う産経社説の"らしさ"

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「軍を派遣する」と煽るトランプ氏の大言壮語

アメリカの中部ミネソタ州ミネアポリスで5月25日、黒人男性ジョージ・フロイドさん(46)が白人警察官に首を押さえ付けられ死亡する事件が起きた。黒人に対する弾圧である。この事件をきっかけに全米で抗議デモが相次ぎ、一部で暴動や略奪、放火が起きている。

大半の抗議デモは平和的なもので、少なくとも140都市にまで広がった。しかし、過激化しているものもあり、4400人以上が逮捕され、首都ワシントン、ニューヨーク、サンフランシスコ、シカゴなど40都市以上で夜間外出禁止令が出された。現時点で収束は見通せていない。

米中西部ミネソタ州ミネアポリスの事件現場で、思いを語る死亡した黒人男性ジョージ・フロイドさんの弟テレンスさん(アメリカ・ミネアポリス)
米中西部ミネソタ州ミネアポリスの事件現場で、思いを語る死亡した黒人男性ジョージ・フロイドさんの弟テレンスさん(アメリカ・ミネアポリス)=2020年6月1日 - 写真=EPA/時事通信フォト

トランプ氏はツイッターなどで「国内でのテロだ」と批判し、「必要があれば軍を派遣する」と軍事力での制圧を示唆した。ワシントン・ポストなど米有力紙は、連邦軍の憲兵隊や工兵部隊が治安維持に備えてすでにワシントン近郊に待機していると報じている。

トランプ氏の言動は混乱を沈静化させるどころか、反発を煽るものだ。あきれた言動である。これでは今年5月の全人代で国家安全法を成立させ、香港の民主化運動を弾圧しようとする中国の習近平(シー・チンピン)政権と同じだ。トランプ氏はアメリカという国の根本にある民主主義をどこまで理解しているのだろうか。

「選挙での投票行動に変えよう」と訴えるアメリカらしさ

フロイドさんの事件は痛ましいが、抗議デモには「さすがアメリカだ」と感心させられる場面もあった。

6月1日、フロイドさんの弟がミネアポリスの事件現場を訪れ、拡声器を使って「みんな何をやっているんだ。そんなことで兄は戻ってこない」と厳しく批判し、「暴動や略奪は兄を思った行動ではない。別の方法で実行しよう。だれに投票するのか。それが大事だ」と選挙での投票や平和的なデモを呼びかけた。

黒人初の大統領だったバラク・オバマ氏もインスタグラムに「暴力行為ではなく選挙を通じて制度改革を実現すべきだ」との一文を投稿し、こう訴えた。

「抗議デモは数10年間にわたって改革に失敗してきた、警察の慣習とアメリカの刑事司法制度へのいらだちを表したものだ」
「しかし暴力行為を許したり、正当化したり、ましてや参加するべきではない。高い倫理意識に基づいて刑事司法制度や社会を動かしていくには、私たち自身がその倫理規範を形づくらなければなない。改革のために動いてくれる候補者に投票しよう」
「デモは正当な怒りだ。平和的かつ持続的、効果的運動につなげられれば、アメリカが高い理想に見合うよう歩んできた長い道のりの、真の転換期になるはず」

「改革を目指す候補者に投票しよう」。これは11月の大統領選挙を見据えた言葉だろう。フロイドさんの弟の言葉と同じく、選挙での投票行動に変えようと訴えているところは、アメリカの民主主義の本質が表れていると思う。

黒人に対する白人警察官の暴行事件が後を絶たない

アメリカでは、黒人に対する白人警察官の暴行事件が後を絶たない。そして、そうした事件が起きる度に抗議デモが繰り返されている。

たとえば、1991年、カリフォルニア州のロサンゼルスで白人警察官4人が黒人を暴行する様子がテレビで放映されて大きな問題となったにもかかわらず、翌年、警察官らは無罪となった。これに黒人たちが反発して「ロサンゼルス暴動」と呼ばれる大規模な抗議デモが起きた。

2012年には、フロリダ州で黒人の高校生が自警団の男に銃で撃たれて死亡する事件があった。警察は「正当防衛だ」とみなしてこの男を逮捕しなかった。これに「人種差別だ」との抗議の声が上がり、結局、男は40日後に逮捕された。

その後も同種の事件は後を絶たたない。もともとアメリカには暗黒大陸と呼ばれたアフリカから黒人を奴隷として無理やり連れてきた歴史がある。かつては日本でも「ルーツ(ROOTS)」(1977年制作)というアメリカのテレビドラマが大ヒットした。黒人奴隷制度をテーマにしたアレックス・ヘイリーの小説が原作で、黒人差別の負の歴史を如実に物語るドラマだった。

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